朝井リョウ『生殖記』
待ってました、3年半ぶりの新刊長編小説!!!
『何者』に衝撃を受けて(えぐられて)からというもの、日々の引っかかりを大胆に暴き出す朝井リョウさんの作品にぐんぐん傾倒していったこの私。
なんせ3年半ぶり!「やっときたか!」と時間の重みも相まって大いなる期待をもって作品を読み始めました。(以下ネタバレ含みます!)
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いやぁ〜、流石の朝井節!世界観の作り方がほんと独特なんだよなぁ。僕の中ではまさに「唯一無二」。
まず語り手が「生殖本能」ってところが混乱と魅惑を引き出してますね〜。
生殖本能が同性愛者である主人の「尚成」を中心に登場人物の思考・言動を観察して分析していく、「なにこれ論文ですか?」と言いたくなる文章なのに、不思議と文章の硬さにやられない。むしろ入り込む。
前作の『正欲』と類似した「性」を一つのテーマとした今作ですが、私が思う朝井さんの一つの特徴でもある「観察者視点」が、特に今回は物語のイメージ構築にとても役に立って読みやすい読みやすい。
共同体を絶え間なく拡大・発展・成長させていこうとする、異性愛者を軸とした共同体的社会(この拡大・発展・成長など、印象的なフレーズが絶えず繰り返されている点もかなり印象的)。「生きるか死ぬか」といった「今ここ」に没入する段階を遥か昔に駆け上がった人類は、この営みを後退させることができず、常に今の意味・価値を探して進化を求める。
そんな社会から追いやられ、今の意味・価値を求めることを諦め放棄した尚成。「成長」に辟易した態度をもつ尚成の態度には、現代社会に生きる者として無視できない、えぐられるような印象を終始与えられました。
拡大・発展・成長が是なのか。そこに疑問はないのか。空間的に一緒にいても、感覚的に全く別の世界を生きる人々が想像以上に多いことに意識を向けているか。
毎度の如く、ハッとさせられ、我が振りを直し、我が社会を振り返る。
3年半の空白を、期待以上の価値で埋め合わせた朝井先生!ありがとう!!!
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