捨てられる焚火台を使うという選択
【文字数:約2,000文字】
お題 : #キャンプの楽しみ方
ヘッダー画像にした写真は成型された炭の一種、豆炭に火を付けているところです。
炭は不完全燃焼による炎が出ないので、鍋などの調理器具がススで汚れにくく、見るための焚火は生木の薪で行い、調理には炭やガスを使うという方もいるそうで。
ある程度まで温度が上がると炎が出るので、次の写真のように燃える様子を楽しむこともできます。
写真を見て気づくかと思いますが、使用しているのは焚火台ではなく金属の容器で、たしか海苔の空き缶だったと思います。
空気を通すための穴を底に開けていますが、廃材の再利用なので出費はゼロです。使い終わったら小さく折りたたんで捨てられますし、キャンプの度に新品を使えます。
ちゃんとした焚火台を欲しいと考えた時期もありますが、仮に買ったとしても年に何回それを使うかと考えた結果、このような現状に落ち着きました。
厳冬期のキャンプは命の危険がありますから、過ごしやすい5~10月あたりの6ヵ月のうち、月1回で行くのがせいぜいでしょう。
もちろん耐久力のある焚火台は大切に扱えば数年、数十年を共に過ごせる良き相棒ですけれど、それだけの期間キャンプを趣味とするかも疑問です。
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私にとってキャンプは父の影響もあって、それほど特別なアウトドア趣味ではありません。
それでも現地で購入した薪や、秋冬だと枯れ枝を使った焚火は特別なものですし、眺めているだけで楽しいものです。
例の感染症を避けられると注目されたことにより、キャンプを楽しむ人々が増えたのは喜ばしく、これを機会に自然への想いを育んでくれればと1人のキャンパーは願っています。
しかし現実はキャンプ場のゴミ放置問題が叫ばれ、利用者の焚火が元で火事にまで発展したという話も聞きました。
キャンプを楽しもうと意気込んで訪れるのはいいとして、ゴミ放置は次に来た利用者の満足度を下げるだけでなく、野生動物を呼び寄せる危険が高くなります。
火事に到っては論外ですけれど、それらは「楽しまなければならない」と焦りを含んだ動機が裏にあるような気がしています。
あまりにも期待値が高いことで疲れてしまい、帰る段になって片付けが面倒だからとゴミを放置する。誰が犯人かも分からないし、また来るとも限らないから心も痛みにくい。
そうした心理は私の想像ですけれど、訪れたキャンプ場に焚火台や使い残しの炭が放置されていたときは、もはや楽しい気分にすらなりました。
例の感染症が広がる前も1人でのキャンプ、ソロキャンプが流行したこともあり、訪れる人が目に見えて増えました。
ただ、私の知っている限り「2度は来ないだろうな」と思う人が多く、あるグループはキャンプ場に特大のブルーシートを捨てていきました。
はっきり言ってキャンプは雨が降れば大変ですし、濡れたテントを乾かさないとカビが生えて使い物にならなくなります。晴れていれば虫が出て、炊事も自宅と同じというわけにはいきません。
自然と触れあえるだとか良い面、ステキな面ばかりクローズアップされますが、お風呂やトイレの話を忘れていないでしょうか。
なによりテントを張ってシェラフで寝るのは、嫌な表現をするなら野宿と同じです。空気入りのマットを使っても高級ベッドと同じとはいきませんし、体が痛くて眠れない人も多いそうで。
同じキャンプでもホテル寄りのグランピングという選択肢もありますし、アウトドア用品のメーカーが主催するところもあるらしく。
すべて自分たちで用意して完結させなくてはと、やたら張り切るのも良いですが、個人的には難しく考えず気軽に楽しんでみてはと思います。
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焚火台に限らず、販売されている様々な品物を実際に使ってみたいと考えるのは、むしろ当然な心理であるような気がします。
ですが手にいれた品物は購入して終わりではなく、使った後のメンテナンスも含めて楽しむのが、趣味としてのキャンプを深めることではないでしょうか。
もちろん人間なので面倒くさいことは避けたいですし、私にとって「捨てられる焚火台」は楽を求めた結果なのです。
見覚えのある海苔の缶を使っているのは、どことなく終末感が漂うという意見もあるのですが、立ち上がる炎を見ていれば忘れてしまいます。
私は「焚火の炎」を見たいのであって、それを何で行うかは些細な問題です。
浮いた労力を別に振り分け、じっくり丁寧に育てたスキレットで食事を作るも良し、そもそもの食材費に回すのも良いですね。
捨てられる焚火台であれば片付ける手間を考えなくていいですし、ついでに周辺の放置ゴミを拾えば次の利用者も嬉しいです。
そんなことを夢想しながら、1人のキャンパーは使えそうな缶を集めているのでありました。
なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?