見出し画像

入籍した。

入籍した。付き合って9ヶ月。うまくいくときって、とんとん拍子。全てがスムーズに進んでいった。夢で知らないおじいさんの声に「本当にその人でいいの?」と聞かれたけど。なんでそんなこと聞くんだろうと思っている間に目が覚めて、隣を見るといつもと変わらず口角を上げて眠る人がいた。彼は寝るときいつも口角が上がっていて良いなと思う。

名字が変わって気づいた。無事におばあちゃんになれたら、新しい苗字で過ごす時間の方が長くなる。25歳で入籍したから、50歳になったら、それぞれの名字で過ごした時間は半分ずつになる。名前で運勢とかって変わるんだろうか。

婚姻届の内容はあまり素敵なものではなかった。性別ごとに別れて、妻とか夫とか書いていて。なんだか古の公文書って感じがした。これすらも懐かしいと思う時が来る。でもなんだか、もっと自由なものができたら良いな。ハンコが不要なのは良かった。文字を書き終わって、最後にハンコを押すときの失敗しないかという不安が苦手。そんな小さな不安が苦手で大丈夫なんだろうか。

お香を焚いた。だいたい朝と夜。ほんとうは蚊取り線香でもお線香でもいい。ああいうものに火がついていて煙が上がって、なんらかの香りがするだけで、懐かしい気持ちに落ち着く。その匂いの中で自分より体の大きい人に抱きしめられると、子供に帰ったみたいに安心できる。中学生の頃に読んでいた心理学の本に、恋愛の始まりは母親の体から離れてしまった寂しさを他者で埋めようとするところから始まるって書いてあったのを思い出した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?