見出し画像

夫との馴れ初め 2

続・女子のいない忘年会

Yちゃんは先述した通り
非常に美人だったので、男性社員から
人気だったのだと思います。

『みんな先輩たち、一緒に来ていいって
言ってくれてるし行く?
嫌ならいいけど、タダでご飯食べれるんちゃうかな笑』

実習でバイトの時間も取れなかった当時の私は
超多忙と同時に超貧乏も極めていたので
”タダ飯”
というパワーワードに釣られ行くことにしたのでした。

会社ビルのすぐ近くの居酒屋にすでに集まっているとのことで
Yちゃんの案内で向かいました。
地下にあった居酒屋の扉を開ける直前に
Yちゃんはおもむろに振り向き私の肩を掴み言いました。

『合流する先輩たちの中に、気になってる人がいるねん。。。
誰かは教えないけど私が挙動不審でも気にしないで!
ううん、なんならフォローしてなっ!!!』

飲んだわけでもないのにちょっと赤くなった
Yちゃんがあまりにも乙女で、可愛くて
私は無言でYちゃんをハグしました。
居酒屋の前で女同士で抱き合う謎の光景。
酔ってもいないのに。

えっと・・・
並んではります?

と遠慮がちに後ろの男性二人に聞かれて
変な声を出してしまったのは、ちょっと恥ずかしい思い出です。

店内に入ると年末の店はたくさんの
サラリーマンでぎゅうぎゅう詰め。
座敷席の4人組がYちゃんに向かって
手を挙げました。

見た感じ
20代×2
30代、40代各1くらいでしょうか
私は軽く挨拶をしました。
どうせもう会うことのない人たちです、
特に印象を良くしようとかは何も考えませんでした。

Yちゃんと先輩たちは会社の話をしていて
私は当然話に入れません。
することもなく、ポケ〜っとしていました。
でも、つまらなかったのではありません。
私にはこの
”何もしない時間”が
めちゃくちゃ貴重だったのです。
ポケ〜を楽しんですらいました。

しかし、そうは見えなかったのか
4人のうちのひとりが私に声をかけてきました。

つまらんよな!
大丈夫?
好きなもの頼んで飲み食いしてくださいね!

「ありがとうございます!!では遠慮なく」

宣言通り遠慮なく頼んで一人で普通に食事を
している私を見てその人は笑いました。
おもろい子やね、と。
(ちょっとは遠慮せーよ、と今なら思いますが
当時は若かったのと単純にお腹が空いていました)

4人のうちの30代に見える人でした。


その日は22時ごろにお開きに。
Yちゃんの言っていた通りに
男性たちはYちゃんが注文した可愛いドリンクも
私が注文したアジフライ定食も全てご馳走してくれました。

Yちゃんは年の最後に好きな人の顔を見られて満足げに
ガーリーなシフォンスカートのワンピースの裾を
ふわふわさせながらルンルンと
駅までをスキップのようなステップで歩いていました。

ああ、恋する乙女だなぁ
いいなぁ

ぼんやりと思いつつ私は
Yちゃんの後ろ姿を見ていました。
その時、私も好きな人がいたのですが
思ったようにうまく行っていなかったんです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?