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余白の匂い

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香りを「聞く」と言い慣わす”香道”の世界に迷い込んで十余年。 日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」
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#みんなの文藝春秋

「永遠へ」 〜 明治神宮、命の森の匂い ~

猛暑に焼けつく8月の週末、久しぶりに明治神宮の森を散策した。庭好きの友人との都内”探庭活…

Ochi-kochi
3年前
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「梅仕事」 ~ 梅雨のおくりもの ~

雨の匂いが近づき店頭に青梅が並んだ週末、今年も「梅シロップ」の仕込みをした。 真夏の外出…

Ochi-kochi
3年前
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「散歩」 ~ 雨の匂いのする街 ~

部屋の観葉植物に水やりをしていたら、思い切り立ち上がった緑の匂いに鼻がびっくりしてしまっ…

Ochi-kochi
4年前
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「梅雨明け」~ 父の残り香 ~

まもなく父の七回忌を迎える。 そのせいか、この頃ふとその人を思う時がある。 父が亡くなっ…

Ochi-kochi
3年前
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「Vinyl」 ~ 12インチ聞香(もんこう) 〜

コロナウィルスの声が聞こえ始めた2月の初め。法事帰り、人気の少ない京都寺町通りを歩きなが…

Ochi-kochi
4年前
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「折詰」 ~ 小さな世界の清なる匂い ~

ネットフリマの商品受け取りで、初めてその駅に降り立った。谷根千あたりの魅力的な匂いの街だ…

Ochi-kochi
4年前
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「無為」 ~ つらつら匂い考 ~

香りは苦手、匂いが好き。 香道のお稽古を十年以上続けておきながら、敢えてそう言ってしまう。 香りは表現、匂いはありよう。 匂いは内から、香りは外へ。 香りは手招きをし、匂いは後ろ髪を引く 「香り」が人や物の“佇まい”に重なったその時、私の中はでえも言われぬ「匂い」に昇華する。 そんな言葉遊びはさておき、隠しおおせぬ本質が滲み出るのは”におい”の領域ではないだろうか。 かぐわしい「匂い」はもちろん、好ましからぬ「臭い」も魅力。それらが重なり合って記憶や物語の余白をそっと

「ラストダンス」 ~ 師走の街に ~

12月はダンスの季節だ。 父が生前ソシアルダンスを長く続けていたことから、この時期あちこち…

Ochi-kochi
4年前
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「移り香」 ~ 顔うずめる時 ~

「自分の枕の匂いっていいよね。ときどき突っぷしてクンクンしたくなる。」 私は「へーえ」と…

Ochi-kochi
4年前
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「慈雨」 〜 Calling you 〜

雨の日が苦手と言う私に、その人は飛び切りチャーミングでパワフルな”おまじない”をくれた。…

Ochi-kochi
4年前
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「香道」 ~ 漂うように 〜

余白の匂い 日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」  前回の記事: …

Ochi-kochi
4年前
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「盆会(ぼんえ)」 ~ いかれたBaby ~

余白の匂い 香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの…

Ochi-kochi
4年前
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「路面」~ 闘場(アレーナ)の香気 ~

余白の匂い 香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの…

Ochi-kochi
4年前
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「水際」 ~ 塩素と陽射しとちょっとハナミズ ~

余白の匂い 香りを「聞く」と言い慣わす世界に迷い込んで十余年。日々漂う匂いの体験と思いの切れ端を綴る「はなで聞くはなし」 土曜の朝のクリニックはすっきりと空いていて、窓の下の見慣れたアーケードも整然と開店の時間を待っている。待合室の棚から手に取ったコミックでは、高校生の帰宅部コンビが川沿いの階段に腰かけてとりとめのない会話で時間を潰している。やんちゃそうな方のモーレツな関西弁がページから溢れ出す。 「…ああそう子供の頃な…夏祭りもクリスマスも昔あんなに楽しかったのに、年々