手紙
ボカロPとして一世を風靡したdorikoさんの「文学者の恋文」という曲が大好きだった。
だった、というのはもう手紙を書く相手がいないからだ。
誰もしたことのないような私だけの恋愛をしよう、と常に頭をフル回転させていたその昔、遠距離恋愛を乗り切るために私が思いついた連絡手段。
「手紙」
82円切手を貼るだけで郵便配達員さんが私の思いを届けてくれるなんて、なんてロマンチック!!
私天才かな?と思った。
別れるまでに一体何通の手紙を書いただろうか。
何十通、いや下手したら100通近く書いたのではないだろうか。(さすがに言いすぎか)
別れるほんの数週間前までの約2年間、私は日常的な内容の手紙を書き続けた。
愛の言葉というより、本当に普通の日常的なお話を書いていた。
遠距離で手紙を書いている人はそこそこにいるかもしれないが、人一倍の想いと時間をかけたと自負している。
近距離になっても変わらず。
まぁなんとも労力のかかる手段だったけど、やっぱり書いて良かった!!
だってこうしてルンルン気分で当時のロマンチックな私に酔い痴れることが出来るのだもの。
そして私は「書く」ということの楽しさに目覚めた。
私は単純な人間なので面白いほどそのときの感情に流される。
そのため、今書いている文章は今しか書けない内容になる。
失恋したとき、誰かに恋をしているとき、研究に疲れたとき、仕事でストレスを抱えたとき、ダイエットをしているとき、検定に合格したとき…
そのときの気分が色濃く文章に表れる。
だから私は文章を書くことも読むことも好きだ。
その人だけの、飾らない一つ一つの言葉を噛みしめながら文章を眺めているとき、誰かの心の中を少しだけ覗いてしまったような不思議な気持ちになる。
誰かの心に残るような生き方がしたい。
そして、平凡な日常の中でほっこりとするような温かい気持ちを届けられるような人になりたい。
そう思えるようになったきっかけが、「手紙を書くこと」だった。
次はどんなことをしようかな。
私史に何を刻もう。
考えるだけでもわくわくする。