見出し画像

流産した話①

始めての妊娠で流産をした。
20代後半、結婚式も済んだことだしそろそろ欲しいねって夫婦で話しすぐに出来た赤ちゃんだった。

初めての妊娠だし、流産の可能性は1ミリも考えていなかった。周りがそうであるように、私も当たり前にお腹が大きくなって、健康な赤ちゃんが8ヶ月後には生まれてくるだろうと思っていた。

妊娠に気付いたのは前回の生理が始まった日を基準にして4週と3日目だった。早速定番のアプリをダウンロードして毎日赤ちゃんの成長を楽しみに見ていた。  

妊娠してからずっと体が熱を持っているような感じ、胸の張り、だるさが続いていた。
赤ちゃんがまだ目に見えない大きさのときからこんなに色々な変化が起こるなんて、人間の身体はよくできてる。

ちょうど6週に入った頃、トイレットペーパーに少し茶色がかったものが付いた。別に心配するほどのものでもないような、いつにでもあることだった。

でもその後も、その茶色がかったものやはっきりとした茶色いものが徐々に増えていった。
下着が汚れるのも嫌だし、おりものシートを使うことにした。それでも1日1枚で十分に足りるくらいだった。

妊娠初期の出血はよくあることって言うし、そのうちに治まるだろうと気楽に考えていた。実際に時々止まったりしていた。  

数日後念のためと思って病院に行ったところ、血液検査を勧められた。2日おいて2回検査をして、ホルモンの数値がきちんと上がっているかを見るためだったが、次の診察で結果には問題なかったと伝えられた。

7週4日頃、茶色のものに米粒くらいの鮮血が混ざるようになってきた。生理痛まではいかないけど、軽い腹痛と圧迫感が出てきたので後日夜も開いている病院に仕事の後に旦那と行ってきた。

予約無しだったから1時間くらい待たされ、愛想のない大柄な白人おじさん医師にやる気のなさそうに名前を呼ばれ診察室に入った。
一通り症状を聞かれ、ありきたりの質問に答えた。

医師はふーんとため息をついたあとに一言。

「95%の確率で流産。紹介状書くから今すぐ総合病院に行っておいで。」

予想外の言葉に戸惑った。

出血しただけで95%流産って言っちゃう??初期の出血ってよくあることなんじゃないの?この先生大丈夫??


正直、この程度の出血なら心配ない。なるべく家で安静にしててねって優しい言葉をかけてもらえると思ってた。

「仕方ないよ。君にやれることは何もない。まだ若いからメニーチャンス!ドントウォーリー!」


告げられた内容と先生の明るい口調噛み合わなくて思考がうまく処理できない。

とにかく早く別のお医者さんの診断を聞きたくて、その後すぐに総合病院に向かった。

総合病院にて。

担当してもらったのは若いアジア人女性の先生だった。

「私は超音波のプロフェッショナルじゃないから、今日はとりあえずお腹の上から見てみるね。あなたはまだ妊娠初期だからこの方法だと見えずらいし、結果は鵜呑みにしないで。明日経膣超音波で別の先生に見てもらうから、それまでは安心できないよ。」

どうやらその日経膣エコーできる先生はもう帰ってしまったらしい。

お腹をめくるように言われ、冷たいジェルを塗られて機械を押しあてられた。結構な強い力でぐりぐり圧迫されてるけど赤ちゃん大丈夫?と不安になりながらじっと子宮の中が映る画面を見つめる。

素人にはなんだかよくわからない、けど黒い袋のようなものが見えたとき言われなくてもそれが胎嚢だとわかった。

先生は手こずりながらもなんとか赤ちゃんの影を見つけ、心拍らしきものが何度かチラチラ見えた。

経膣エコーじゃないからはっきりと継続的に見ることができないけど、「今みんな見えたよね」という先生の言葉に、その場にいた助産師と旦那と3人で顔を見合わせて頷いた。

「まだホープはあるよ」

この時の安心しきった旦那の顔は忘れない。
私もまだ安心してはいけないとわかりながらも、嬉しくて涙が出てしまった。


ほらやっぱり95%なんて大げさじゃんって心の中で最初の先生に舌打ちして、翌朝の経膣エコーを楽しみに待った。 

心拍が確認できたら流産の確率はぐっと下がるってネットに書いてあったし、きっと大丈夫だと思っていた。

翌朝、経膣エコーが始まった。機械を入れるとき、先生が「自分で入れる?それとも、私がやってももちろんいいわよ。」と聞かれ、そんな選択肢があること自体全く予想してなかったので戸惑いながらじゃあ先生お願いしますと伝えた。

先生は手際よくいろんな角度から子宮や卵巣を映し計測をしていった。

片手でエコーを操作しながらもう片方で計測結果をタイピングしていたので、やりにくそうだな〜とか、小文字を大文字に変えるだけなのに全部打ち直してるな〜とかどうでもいい事を思いながら時々エコーの映像に目をやって、先生が何か言うのを待っていた。

「これが赤ちゃんだね」って言いながら先生が計測し始めたのは、横に細長い黒い袋の端っこに寄った小さなものだった。

「3mmしかない。5週6日くらいの大きさだよ。」

この時私は8週と0日だった。たしか15mmくらいないといけない大きさだったと思う。2週間分も小さいけど大丈夫なのだろうかと不安になった。

それでもまた赤ちゃんの心拍が見えた。赤ちゃんが小さいのもあってか先生は時間をかけながら何度も心拍数を測っていた。

「今のところは心拍もあるし、しばらく様子を見ましょう。ナプキンが1時間で真っ赤になるくらいの出血があれば、またすぐに来て」と言われ、とりあえずその日はまっすぐ帰宅した。

でも安心したのも束の間、翌々日には鮮血の量が増えていた。血がもう茶色じゃなくなってきている。

まだ先生の言うナプキンが1時間で真っ赤になるほどじゃないけど不安でいてもたってもいられず、日曜の午後だったが病院に向かった。

この時生理1日目くらいの腹痛と強い目眩、頭痛があった。
先生が来てナプキンに付いた血を見せるように言われたので見せた。
その後ベッドに寝かされ内診。出血の様子から先生が

「残念だけどこれは流産だと思う。血液検査で数日前のホルモンの値と比較して順調に下がってきているか確かめましょう。」

確かめましょう…か……
一昨日心拍を見たばかりの私はまだ流産と思いたくなかった。

もしかすると血液検査の結果、ホルモンが増えてるから出血はあるけどまだ赤ちゃん大丈夫だね。っていう展開もあるんじゃないかと期待した。

でも検査結果を伝えに戻ってきた先生の言葉は残念なものだった。

「やっぱりホルモンが大幅に下がっているので流産で確定でしょう。自然排出されるのを待って、1週間後にもう一度エコーしましょう。」

後半に続きます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?