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森逸崎さん家。

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7人兄弟(女女女男女女女)や家族の日常と人間模様に関してのエッセイ。一番上は40歳、一番下は26歳、私は6番目
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#夏の思い出

人見るもよし 人見ざるもよし 我は咲くなり

どんなに辛いことがあったとしても、祖母の前では決して、それを見せてはいけないと思っていた。 #我慢に代わる私の選択肢 意識された日常 誰に言われた訳でもないのに、祖母がいる食事の席で私は、いかに毎日楽しくて充実しているのかという話を聞かせることに徹していた。 それは嘘を吐くとか話を盛るとかそういうことではなく、例えば小学生のころ、友達とどんぐりでやじろべえ作っただとか、家庭科で作った炊き込みご飯が美味しかっただとか、そういう「私の世界の日常」を語るのだった。 今思え

かわいい、は誰?

私の姪孫の話である。 先日この子の親、つまり私の甥夫婦が流行り病にかかり、その間私の家で預かっていたことがあった。 (姪孫についてはこちらを参照) 姪孫は今2歳。言葉を少しずつ覚え始め、意思表示もしっかり行う。果物を頬張り、野菜に嫌な顔をして吐き出し、お菓子の袋を見つけるとすかさず指をさして「ちょうだい」と言い、あげないでいると泣きやがる。 それなのにむかつくどころか愛嬌たっぷりで憎めない。 ◇ 中でも一番微笑ましかったのは彼女のナルシスト具合だった。なにしろ鏡を見る

無言の帷子《かたびら》

この時期になると思い出すことのひとつに、8歳の頃の兄がいる。 絶望 「いやだ!きものきせてくれるって、いったじゃん!」 私が4歳の時の話だ。 近所でやっていた夏祭りにどうしても浴衣を着て行きたくて、私は母の前で泣き喚いていた。 着物と浴衣の区別もついていない、ただ姉たちが楽しそうに着飾る姿を見て「私も」とせがんでいた年齢である。 もともと母が「海にも着せてあげるからね」と約束してくれていたのだけど、二つ上の姉の着付けを終えたタイミングで祖母から連絡が入り、急遽母だけ出か