怒りたい人

私の母は、「怒りたい人」だ。

自分の中の「正しさ」に反する行動をする人を、
徹底的に非難する。

そして、周りの人にも賛同を求めて、
賛同して貰えれば、その人は「味方」とみなし、
賛同して貰えないと、その人は「敵」とみなす。

先日、こんな愚痴を聞かされた。

「ねぇ、聞いてー!
 この間、お父さん(私の父)が夕飯食べると思って、
 お父さんの帰りを寝ないで待っててあげたの。
 そしたら、深夜の1時になっても連絡が無いから、
 心配になって、電話を掛けたのよ。
 事故にでも遭っていたらどうしようって心配で。
 そしたら、実は泊まりの出張だったらしくて、
 出張先のホテルで寝ている所を、
 私の電話で起こしてしまったみたいで、
 お父さんったら、私を電話した事を怒るんだよ!
 私はお父さんの事を心配して寝ずに待っていて、
 それで電話しただけなのに、
 『出張って言っただろ!深夜に電話するなよ!』
 って。
 私はご飯も用意して、寝ずに待っていて、
 心配してあげただけなのに、酷くない!?」

もうこうなると、
「お父さんは酷い」という決め付けは、
私がどうなだめようと、決して覆る事は無く、
母の怒りは、父が謝るまで、永遠に続くのだ。

「お父さん、疲れてたんじゃない?」
「出張って言われていたのを忘れていたのは、
 お母さんの方でしょう?」
「起こしちゃってごめーん、で済む話じゃない?」

え?

そうなの。

火に油を注ぐよね?

分かってる。

いつもそれで失敗する。

私は母の、
「私が絶対に正しい!
 私の考えに合わない人はみんな間違ってる!」
っていう考え方が好きじゃなくて、
母の愚痴に対して、母の望む応えを返せずに、
いつも、母に嫌われる。

「あんたって、本当に冷たいよね。
 こっちはこんなに傷付いているのに、
 人の気持ちが全然分からないんだよね。
 そんなんだから、友達がいないのよ。
 あちらの(義理の)ご両親に可愛がられてるって、
 あんた、この間、調子乗ってたけど、
 陰では絶対、嫌われてるよ。
 あんたみたいな人が誰かに好かれる訳が無い」

はいはいはい。

何億回、聞いただろ、その一連の言葉。

とにかく私を屈伏させたくて、
「ごめんなさい、私が悪かったです、
 お母さんが全て正しいです」
って言わせる為に、
考え付く限りの悪口を、ぎゅーぎゅーに詰め込む。

怒る対象が私に変わって、
今度は私の娘達に賛同を求めて、
「ねー、お母さんって冷たいよねー?
 ただ、話を聞いて、
 そうだね、辛かったね、
 って寄り添ってくれるだけで良いのにねー?」
と、味方になって貰おうとする。

母はきっと、誰かに怒っていたい人なんだな。

そして、怒っている自分を認めて貰いたくて、
味方になって欲しい人なんだ。

望み通り、味方になってあげたら良いのにね。

何で、そんな簡単な事ができないのか。

母も、どんどん弱くなって、
母の傍にいて支えないといけない日が、
どうしたって増えていくと思うのに、
こんな、思春期、反抗期を拗らせたまま、
みたいな気持ちが消化できなくて、
一体、私はどうすれば良いんだろ。