過去を許す

「取り返しのつかない過去は、どう努力しても変えられない。
 そうであれば、私達にできる事は、
 その過ぎた時間、過ぎた日々に対する許しが必要なんだ。
 全ての瞬間や状況、そしてその時の人々を許して、
 過去の出来事に対する解釈を変えてみよう」

「D-DAY」アルバムの作成は、
僕ならではの「許し」の形だった、と言っていた。


過去を思い出すと辛くなるのは、
他の、もっと最善の方法を選べたんじゃないか、
と、自分を責めてしまうから。

1時間半しか眠れない日々を1ヶ月半続けて、
ある日の朝、突然、手も足も動かせなくなって、
「AMYGDALA」のMVのように、床を這って電話の所まで行き、
「今日、体調不良の為、仕事をお休みします、ごめんなさい」
と連絡を入れ、それっきり、仕事に行けなくなった過去の私。

幼稚園の時から浮気をせずにずっと憧れていた唯一の職業で、
この職業に就く為に、ずっと努力して、常に勉強を頑張って、
自分が背伸びできるギリギリ精一杯の大学へ何とか進学して、
やっと叶えた夢だったのに、たった一ヶ月半で、全て捨てた。


誰も私を責めなかった。

職場の上司に相談した時も、
「辞めたかったら辞めれば?
 あなたの代わりはいくらでもいるんだから」と言われた。

就職してたった一ヶ月半で、全ての仕事を放り投げられて、
すごく少人数で、全員1分1秒単位で働く職場だったから、
私の穴埋めはとても大変だったと思うのに、責めなかった。


でも、その後、十数年経った今も、
私が私を、ずっと許せないでいる。

本当は、もっと頑張れたんじゃない?

手足が動かせなくなった、って思ってたけど、
ただ単に、動きたくなかっただけなんじゃない?

辞める選択じゃなくて、休職すれば良かったのに。

涙が止まらなくなったり、線路に飛び込みたくなったり、
頭がおかしくなってきていた事には気付いていたのに、
どうして完全に動けなくなるまでほったらかしていたの。

あーあ、同級生達はみんな、辛くても頑張っているのに、
これじゃ何の為に今まで頑張って来たのか分からないよ。


「転校生のくせに、
 テストの点数がうちらより高いとか、生意気」

そういう言葉に耐えられたのも、叶えたい夢があったから。

昔、理不尽な悪意で私を孤独にさせた人達を、
私は夢を叶えて幸せに生きる事で、見返してやりたかったのに。

幼い頃の私も、根性なしの私を睨みつける。


私の中の複数の私が、失敗してしまった私を責める。

なりたかった自分になれなかった自分を責める。


・・・もうやめて。もう責めないで。

私が全部悪いって、分かってるから。

私が全部間違ってたって、もう分かっているから。


許すのか・・・。

どうやって?

失敗した自分を許すのかな。

それとも、責めてる自分を許すのかな。


どうやって・・・?