利用する理由って何ですか？

「利用されてる」
そう言われたのは夫です。

私ですか？

夫の対応に、文字通り空いた口が塞がらないというかなんというか。
今まで感じたことのない、言葉にできない感情が押し寄せてきてはスッと消えていった。

ともあれ遡る事3年ほど前。

妊娠が分かってから私は産むつもりでいた。
いや、産みたかった。
私は仕事もしていないクソガキの女子大生だ。
産むつもりでいたところで安定した収入もないのに子ども1人育てていけるわけがない。
それなのに、だ。
一丁前に産むという選択をして、家族を巻き込んだ。
親にとっては飛んで火に入る夏の虫と言うより、飛んでいたら火の中に叩き落とされた虫と言った方が的確だろう。
こんな馬鹿げた事をする、計画性のない子の親の顔が見たい。と思うんじゃないかな。
親が。

妊娠すれば何事もなく出産とはなかなか上手くいかないわけで。
切迫流産だったり流産だったり、切迫早産だったり早産だったり。
決して平坦な道ではないと思う。
だから無事、生きて産まれてきてくれたらいいなと思っていた。
とにかく心配で心配で。
妊娠が分かっても、安定期に入っても、臨月に入っても、片手で数えれるくらいの人にしか言わなかった。
いや、言えなかったと言った方が的確なのかもしれない。
ただただ不安で心配で。

だから大学の同学年の子は数えるほどしか知らない"はず"だった。

"はず"だったのにそれを覆したのは夫だ。
私の知らない間に私が妊娠した事をあれもこれもとペラペラ喋っていたのだ。
聞かれた事全てに。
そうするとこう言われたんだって。
「りんちゃんに利用されてるんじゃないん？」って。
耳を疑った。

ただ、これだけでは済まなかった。
夫の父親に当たる人。
私から見れば義父だ。
その人もこう言ったそうだ。

「お前の子じゃないかもしれへんから検査してもらえ」
と。

で、夫はと言うと何も返さなかったそうだ。
「俺が反論して荒波を立てる必要はない」
要約するとこう私に言ったのだ。
実際はもっとチープな言葉でまとめられていたが。

夫も自分の子どもだとは思っていないのか？

ふとそう思った。
夫は自分の子どもだを他人に否定されても沈黙を貫くなんてことができる人なんだな。
少なくとも私には耐えれない。
自分の子どもを「お前の子どもではない」と言われることに。

それとも夫も心の中では自分の子どもじゃないかもしれないと思っているのでは？

誰が何と言おうと夫以外の子どもはありえない。
これは私が何と言われようと貫き通す。
少なくとも生理が来るはずだった月には夫以外と体の関係は持っていない。
いや、その月以外もなんだけど。
だから誰が何と言おうと夫以外有り得ないのだ。

そして最後に。

口だけしか出さんヤツはいいな。呑気で。

出すのは口だけ。
検査しろとは言うけどその分の費用を出してくれるわけでもない。

まるで俺は妊娠相手が自分の息子以外の可能性があることに賭ける。
自分の子どもが妊娠なんてさせたらたまったもんじゃない。
と言ってるような気さえした。

そんな感情が嵐のように押し寄せてきて、一気に引いていった。

この時の夫と言えば、親に反対されてるからバイトはしない。
遊びに行くお金は親にもらう。
自分の意見すら親に言えない。
と言った感じだった。

正直頼りない。
断然、自分で稼いで、親でも自分の意見を持って対話できる人の方が好きだ。

だから私が夫以外の子どもを妊娠しているなら、その夫以外の人に「妊娠した」と報告するはずだ。
ただ、夫以外と体の関係をもっていないにも関わらず妊娠したと言う事は、紛れもなく夫との子どもだ。
誰が何と言おうと。

そんなこと証明のしようがないんだけど。
でも疑う人はどんだけ証拠出しても疑うでしょ？
だからもういいの。
疑いたければ疑ってればいいの。

「夫を利用している」と言ったことだけはいただけないけど。
許さないと思うほど興味も関心もないが、それと同じくらい夫に対しての何か大切な感情も一緒になくなった。

利用する理由が私にはない。
言ったところで「利用した」と口を揃えて言う人たちの耳には届かないんだろうけど。