見出し画像

ふるさとの話

 男性は悩んでいた。
 どうすれば街の活性化につながるかと。

 男性は市役所の地域活性推進課に所属していた。この部署では主に地域活性化のためにイベントを企画したり、そのための稟議書制作をしたりなどを行っていた。
 生まれてからずっと地元にいた男性は、街の移り変わりをよく分かっていた。10年ほど前には活気が溢れていた中心街も今はシャッター通りになっていた。
 何か特産品を使ってPRできればと思ったが、いかんせんパンチに欠けていた。
 なぜなら名産品は「ひきわり納豆」だからである。この街はいい大豆を育てるのに適した土地で、県内外からこの納豆を買う人もいるという。
 もちろんふるさと納税の返礼品としてもあるのだが、まだまだパンチが足りない。
 何かいい方法はないだろうか。
 SNSを見つつハッシュタグを辿りながら、男性は悶々としていた。
「ひきわり納豆製作ツアー」
 これだけでは何か足りない。
 「美容にいい?! ●●市のひきわり納豆」
 科学的根拠にかけるのでボツ。
 「B級グルメ イカのひきわり納豆和え」
 大人のおつまみにはいいが子供はどうだろうか。そもそもターゲット層は若者だ。この企画で若者の心を掴むことは出来ない。
 うーんと、天井を見上げる。実を言うと、男性はあまり納豆が好きではないのである。まして、ひきわり納豆など苦手なのである。
 「匂いと食感がなあ…」
 男性はポツリとつぶやいた。 
 そこで男性は閃いた。

 男性が提案したある企画がSNSでバズり、とあるセンセーションを起こすことになるのは、またあとの話。


No.5685ひきわり納豆
No.4065B級グルメ
No.4898センセーション



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?