【書評】データから真実を読み解くスキル:松本健太郎
新型コロナウイルスの世界的な蔓延以降、
日本において一つ明らかになったことがあると思う。
それは、数字を読むスキルが、
人によって本当にバラバラであるということ。
また特定の人達(そして割と多く存在する)が、著しくこの能力が低いということだ。
そしてこのスキルを社会全体で向上させることが、
正しい意思決定や
正しいリソースの投下に非常に重要であるということも、また明確になったと思う。
本書は、2019年6月から著者が日経ビジネス電子版で連載している原稿の中から20本を激選し、一冊にまとめた作品だ。
日経ビジネス電子版での連載タイトルもほぼ同じく「データから"事実"を読み解くスキル」。
つまり新型コロナウイルスの蔓延以前から、数値を読むということに対して注意喚起を促していたことになる。
テレビやWEB記事を制作するメディアの報道に関する姿勢については、
コロナ禍以前から問題視されていたが、
その視聴率・PV至上主義のような方針は2020年1月以降、世の中に対するネガティブな影響が更に大きくなったと自分は感じている。
その重要な要素に、
数値を読み解くスキルが欠けている人々の存在がある。
世の中の外出自粛ムードが高まる中でテレビへの接触が多くなる中、
数を稼ぐために本質的ではない数字や、n=1の事象を誇張して報道する。
そして数値を読む、ということを重要視しない層が、その報道を鵜呑みにし、リテラシーでのレイヤーが深まる。
身内・友人・SNSでのフォロワーなど、
この1年間で起こった事象に対して
どのような意見を持ち、行動しているかが明らかになることで、
それまで持っていた認識が変わってしまうことが多くあった。
本書や、その元になった連載が多くの人に触れることで、
少しでも数値を読むということが、どういうことなのかを認識する人が増えてくれるといいなと思う。
一つ付け加えなくてはいけないことは、
この一冊を読んでも、
スキルが身につくわけでないということだ。(少なくとも自分はそう感じたし、その意味でミスリーディングなタイトルであるなとは思う)
マインドセットや興味を持つきっかけにはなりうると思うが、
これだけで数字から真実を読み解けるようにはならない。とはいえきっかとして、そしてコラムとしてとても面白い作品だった。
なにも国民全員がデータサイエンティストになる必要はない。
ただ少なくとも、ここで言っている事象はnがどのくらいで、どんな母集団の数値から取ってきているのかなど、
ソースを見た上で是非を判断する姿勢は身につけるべきだ。
数字リテラシーの向上を促す意味でも多くの方に読んでもらいたい一冊だと思った。
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