大学を辞めたい大学生がまず読むべき本




 6月ごろになると、新しい環境にもだんだん慣れてきて、そのぶんその場所の欠点が目につきやすくなる時期だと思います。そろそろ「会社辞めたい」と言い出す新入社員や、「大学辞めたい」と言い出す大学1年生が急増します。 

 僕も大学は中退しましたが、ネットでは毎年この時期になると「大学辞めたツイート」とかが話題になったり、場合によってはプチ炎上を巻き起こしている印象です。しかしあの手の不毛な言い争いに参加するくらいならば、その話題について考えつくした専門家の意見を参考にするほうが1000000倍有意義だと思われます。 


学校とか意味なくね?と思いながら通っている大学生、意味ないと思って退学した人、かつて大学に行く意味を見いだせないままとりあえず卒業してしまった元大学生。それらすべての人にお勧めする本を紹介します。 



ゆとり京大生の大学論 

ゆとり京大生の大学論―教員のホンネ、学生のギモン
https://www.amazon.co.jp/dp/4779507774/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_JJ59Cb5C78RZP

「大学って、そもそも何をするところなんだろう」そんな疑問に答えを出すために、京都大学の学生たちが大学OBや現役の教授たちと「大学の役割とは何か」を語りつくす本。現役の大学生たちによる「ほとんどの大学生は何も目標を持たずに来るよね」というあるある論や「目的意識のある人は何が違うのか」という議論。大学教授が語る、自身の学生時代と今の学生の差など、興味深いトピックが収められています。 


読み物としてももちろん面白いのですが、最も注目すべきなのは、彼らがこの本を出版することにより「常識に疑問を持つ」という行為を無駄にしないプロセスがあることを証明したということでしょう。 


疑問をもつ⇒場をセッティングし話し合う⇒世間にアウトプットする、という一連の流れにより、はじめは単なる疑問だったものも「考えるきっかけを与えるアイテム」に変換することができる。だからもっと世間に疑問を持っていいし、それを言語化していい、ということを教えてくれた本でした。すげーよかったです。 


人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学


人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学 https://www.amazon.co.jp/dp/456205638X/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_uK59Cb17BH6CX
人間が自分をだますメカニズムや目的を記した本。かなり読みごたえがあり各トピック非常に興味深いですが、大学を辞めたい大学生にお勧めするのは13章。ずばり、「学校教育の目的は本当に“学習”なのか?」という問いにスポットを当てています? 

 

著者によれば、学校は“学習”のための場所ではなく、“シグナリング”のため、つまり自分の能力や立ち位置を社会に見せびらかすための場所だといいます。 

 

学習そのものより一流大学の学位に価値を感じているのは、それが自身の才能を世間に誇示できるからだ。 

学習内容を忘れても企業がそれを気にしないのは、学校で勉強して学業を終える一般的な能力を示すことに比べれば、知識そのものはあまり重要ではないからだ。 

学位の取得が学年よりも価値が高いのは、雇用者は一度始めたら最後までやり抜く労働者を好むからだ。 


学校の真の目的がシグナリング、つまり信用証明だとすると、理に適っている部分も見えてくる。 

 

学習こそが学校の一番の目的であるならば、休講になれば生徒は悲しむはずだ。しかし実際には、生徒は休講や単位が簡単に取れる授業を歓迎する。 

また、学校が教えていることのほとんどは実際の仕事では役に立ちませんが、これもほとんど問題はありません。企業が求めているのはあくまで一般的なレベルの知能であり、仕事に必要なことは入社してから覚えればよいからです。 



まあ、日本だといわゆる大学名だけで判断することがまかり通っていますガラ当然のように思えますが、学習に対する表向き意識の高いアメリカでもそうなんだな、ということがわかる本でした。 



そんなわけで、大学に行きたくない大学生がとりあえず読んでみたらいい本を2冊ピックアップしてみました。自分自身の思い込みや社会通念を分析すると、今までとは物事の感じ方が変わります。大学を辞めるにせよ辞めないにせよ、その変化は必ず自分をどこか別の場所へ導いてくれるでしょう。 

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