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「人身事故」は事故と表現すべきではない

寒気が染みる季節になりましたね。朝は一層寒いのですが、電車内の暖気を考えると完全防寒に踏み切るのも躊躇してしまいます。ここは思案のしどころだと思います。

さて、……。

通勤時にどこかの路線で発生する人身事故。しかし、よく考えると事故という表現は不適切だということに気付いた。

事故という言葉は「思いがけず発生」した「悪いできごと」という2つの要素を含むと認識している。では、事故で生命身体に害を受けた方から見て、発生した「事故」が思いがけないものだったのかを考えて欲しい。

確かに、例えばホームを歩行中に何かに蹴つまずいて転倒、或いは人とぶつかって歩く方向が変わり、それが運悪く線路側に向かう。結果的に転落したところへタイミング悪く電車が進入…なら事故だと思う。

しかし、大抵はそうではない。事故で生命身体に害を受けた方は、多くの場合自らの意思で動き自ら望んだ結果を招いたのである。だから、この方に関わり事故という表現は不適切ではないかと私は考える。

但し、その結果として列車が運行を見合わせることとなり、その電車に乗るつもりだったのに乗れず、目的地への到着が遅れた場合、これはその人にとって事故だと言い得るかも知れない。

また、安全運転と定時運行に努めている鉄道会社にとっても、このような人によって発生した状況は、やはり事故だと言える。しかし、これらは厳密には事故「のようなもの」である。真正の事故とはやはりレベルが違う。

以上の考察により人身事故という表現は正しくなく、よって不適切という結論になる。

もっとも、昨今はよくないことについて柔らかく伝える傾向が強い。そのため、強姦という言葉があるのに性的暴行と言い換えるのは典型的だし、暴行・恐喝等なのにイジメと言い換えられてしまう。

それが時として、実際にあった重い事実が大したことではないかのように伝わることにつながり、情報の受け手が軽く考えてしまうことを危惧する。

自殺という言葉を、警察の判断が出る前には使えないのは理解する。しかしながら、列車に身を投げたことまでは事実として言ってよいのではないか。

正しい言葉で表現することで、残された私たちが問題を認識する覚悟を持てると考えており、ここは流してはいけないし踏みとどまるべき点である。少なくとも私はそう思う。

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