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科学的に考えるクセは身に付きにくいが、損得も含めて考える努力は必要

世の中には、エセ科学、疑似科学、陰謀論等のトンデモがあふれている。申し訳ないが、先日触れた反ワクチンもこの系統だと私は思っている。

この手の話を聞く度に、私は戦前の物理学者・寺田寅彦の以下の文章を思い出す。この文は、私が高校生の時に初めて触れて、感銘を受けたものでもある。

これは大正13年9月に書かれた。つまり今から97年前……ざっと一世紀も前と言ってよいだろう。この文章の下半分で、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の原因となった風説について触れている。

ネタバレかつ私の誤読が加わる可能性についてご容赦願いつつ、井戸への毒の投げ込みとの風説に対する寺田寅彦の考えを簡単に書いてしまうと、
・地震が起こることをどうやって知ったのか?
・地震が起こるまで井戸に投げ込む毒をどこに確保していたのか?
・投げ込む毒の量をどうやって計算したのか?
・地震の混乱の中、毒を投げ込む人をどうやって集めたのか?
・組織的に毒を投げ込むことがなぜ可能だったのか?
・誰も見ていない隙を狙って毒を投げ込み、かき混ぜるのは難しくないか?
・以上を踏まえると、相当程度自信を持って可能性は低いと言える
ということだと理解している。

この頃の科学の常識は、今から見れば決して高くはなかったと思う。でも、その科学的な省察についての考え方は、今でも立派に通じると考える。

科学的常識というのは、何も、天王星の距離を暗記していたり、ヴィタミンの色々な種類を心得ていたりするだけではないだろうと思う。もう少し手近なところに活きて働くべき、判断の標準になるべきものでなければなるまいと思う。

引用したこの部分の価値は、一世紀を経てもなお全く減じていない。

なお、私はこれに加えて「それって、誰得?」も意識するようにしている。人間誰しも自分が得にならないことはやりたがらないもの。だから、得になるのは誰かを説明できないものは、疑ってかかって良いと思う。

科学的な省察と損得フィルターを通せば、相当の確率でトンデモを排除できると私は考えている。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。