見出し画像

親族相盗例と成年後見制度の思想の乖離

ついに今朝からジャケットを着ました。去年より寒くなる度合いが急な気がします。

さて、……

あなたは「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」についてご存知だろうか。これは、刑法で定められたもの。親族間で発生した一部の犯罪行為またはその未遂罪については、その刑を免除する(刑法244条1項)、または親告罪とする(刑法244条2項)とされるものである(処罰はされる)。

具体的には、親族が「配偶者・直系血族・同居の親族」の場合には、刑法244条1項により刑が免除される。その他の親族の場合には、同条2項により親告罪となる。

なぜそう定められているのかについてであるが、主に2つの考え方がなされている。親族相盗例の趣旨については、親族間の行為は違法阻却・責任阻却の対象であって犯罪行為の成立そのものがありえないとする説と、親族間の行為でも犯罪行為は成立するがその特殊な身分関係によって処罰のみが阻却されるという説。刑法学者の多くは後者の説を採るとされている。

この規定が適用されるのは、窃盗罪(235条)・不動産侵奪罪(235条の2)・詐欺罪(246条)・電子計算機使用詐欺罪(246条の2)・背任罪(247条)・準詐欺罪(248条)・恐喝罪(249条)・横領罪(252条)・業務上横領罪(253条)・遺失物等横領罪(254条)とそれらの未遂罪である。

成年後見制度において、家族後見人が減って専門職後見人が増えてきている。このことは、これまでも述べてきた。この理由として、家族による使い込み事例が増えてきていることが上げられている。

しかし、親族相盗例と比較するとどうかについては、率直に疑問が湧いてくる。言うまでももなく、所有者の権利を侵害して勝手に我が物として使うのはよくない行為である。でも、刑法では刑を免除する、或いは訴えがあって初めて裁判に掛けると定めているのである。

直ちに法的処罰に移行しない親族相盗例と比較すると、専門職に偏重した後見制度は行き過ぎ感が漂う。

つまり、刑法では家族間の犯罪に対し若干引いた姿勢を示すのに対し、家族に任せておけないから専門職で対応とする成年後見制度は、対応レベルがそろっていない。法律ごとにレベルやスタンスが異なるのは、法治国家として望ましくない。

基本的に、専門職が前に出て話し合わねばならない状態はそう多くはないはず。従って、どうしてもその対応が必要な時に限局して成年後見制度の適用を見直すべきだと考えている。

このように思っていたら、実際にその方向で動き出したようであり、この点の政府の対応は、素直に賞賛するものである。

お読み頂き、ありがとうございました。

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。