母からの手紙

毎月、母がお世話になっている老人ホームから請求書と先月分の領収書が送られてくる。微妙に母の受け取っている年金の額を上回っているが、差分は父の残した預金で当面は持つという計算の元で、今の生活が組み立てられている。

今月も請求書が送付されてきた。ただ、いつもと異なるのは、母からの手紙が同封されてきたこと。ただ一行、家族の安否を問うものであった。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、面会も禁止となっている。母はスマホを使えない。ガラ携のままだが、身動きができない母に電話しても、出られない。また、逆にかけて来ることもない。もう、使い方を忘れているのかも知れない。

というようなさまざまな要因から、母はレトロな手紙を書いてきたのだと思われる。

字を書くことも年を取ると覚束なくなり、母は字を書くことを嫌っていた。それでも、その感情を乗越えてたどたどしく一筆頂いた以上、こちらもそれに応えなければならない。

家族写真に加え、子どもには一筆箋で手紙を書かせた。今の子は、手紙を書くという習慣がなく、一筆箋を埋めるのにも苦労していた。

昨日投函したので、明日には届くだろう。少しでも、寂しさが紛れることを願っている。


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