老人鬱①

老人鬱という言葉がある。

元気はつらつな老人は少ない。生きるエネルギーが枯渇するのは、ある意味で理(ことわり)であり、老人が鬱を患うことは多い。

体が思うように動かない、最近のことはすぐに忘れる、新しいものに興味が持てない、世間の流行についていけない……等が積み重なれば、辛いことが多くなる。この年まで生きてきたけど、自分の人生って何だったんだろう……等と考え出すと、生きる意欲が減退してしまう。

こうなると、福祉では対応仕切れずに医療に委ねられる。ここで医療とは、具体的には精神科のある病院ということになる。

……読者は、精神科の病棟に立ち入ったことがあるだろうか?

私は、見舞いで行ったことがある。なお、これは私の経験であり一つのエピソードであることを、予め申し上げておく。

外来から入院病棟への渡り廊下を通り、病棟の入り口に到達すると鍵が掛かっていた。そこに設置されたインターフォンで面会先を伝えないと解錠されず、先に進めない。

そして、解錠されて病棟に入り目的の病室に近づくと、そこで改めて担当の看護師から部屋の鍵を開けてもらって入ることができた。

病室の鍵は、中から外に出るのはフリーであった。トイレに行く時のことを考えてのものと説明があった。逆に、外からは鍵が掛かって病室に入れないのは、侵入者の防止を考えてのことであった。

忌憚なく申し上げると、室内は糞尿臭が厳しい。5人部屋であり、どの病床もカーテンで仕切られているのだが、臭いはどうしようもない。たまたま巡回の看護師さんが来て、同室の人の容貌も把握できたのだが、3人は老婦人であった……

読んで頂いただけでも十分嬉しいです。サポートまで頂けたなら、それを資料入手等に充て、更に精進致します。今後ともよろしくお願い申し上げます。