「にんげんだもの」の使い方は意外に難しい

つまづいたって
いいじゃないか
にんげんだもの
   みつを

あまりにも有名な相田みつをさんの詩は、人間の弱さを認め、温かく励ましてくれる。くしゃっと縮んだ心を、もう一度延ばす元気を与えてくれる。

「にんげんだもの」は、そういう時に使うべき表現なのであって、その使い方を誤ると別方向にすごい破壊力を生むことには、留意が必要だろう。

1.プロポーズをした太郎君の援護射撃のつもりで

「太郎君だっていいじゃないかにんげんだもの」

こう言われた相手方はどう思うだろう。これでこのプロポーズがうまくいくことは、まずないだろう。むしろ、大いに足を引っ張っていると受け止めて良いのではないか?

2.浮気がバレた言い訳で

つまがいたっていいじゃないかにんげんだもの

あまりにも自分の欲望に忠実でビックリするし、言い訳したくなる気持ちも分かる。確かに、浮気するのも人間の弱さである。

だからと言って、このことばに「そうだねえ、しょうがないねえ」と皆が納得して丸く収まるとは、とても思えない。

3.依存症の人が

やめられなくたっていいじゃないかにんげんだもの

いやぁ、これは本人だけの問題ではなく、家族も周囲も振り回されているケースが多いので、「いいじゃないか」と流すわけにはいかない。しかるべきところで、しっかりケアを受けて頂きたい。

4.詐欺師が

つまづいたほうがわるいんじゃないかにんげんだもの

こうなると、完全に開き直りである。素直にお縄についてもらいたい。

(自分を除く)弱者へのいたわりの気持ちが「にんげんだもの」にこもっていないと、かえって反感を買うことが改めて分かる。多くの共感を得られるのは、大気圏再突入の進入角度並みに範囲が狭いのだ。

この言葉の深みと、それを産んだ相田みつを氏の感性に改めて敬服する。


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