人間

昔から初めてのお店に入り座る時は自分の知らない世界に入り込んだ恐怖心でもっとも安全そうな場所と定員さんから見て怖がっていると思われない距離の取れた席に座っていた。どちらかというと安全な場所よりだが。
最近行きつけになってきた喫茶店に来た。いつものようにお互いの距離が取れた席に当たり前のように座る予定だったが先客がいた。どこに座るか迷った。すると定員さんが「どこにします?テーブルにします?カウンターにします?」と自分のことを覚えてくれている感じの言い方で言われた気がした。勝手に親近感が湧いて嬉しくなった。その嬉しさのまま調子に乗って定員さんと1番近いカウンターの席に座ってしまった。座り掛けの時に少し戸惑ったが嬉しさが先行していて気持ちがあたふたしながらも座った。しかしその嬉しさも時間と共に慣れていき定員さんとの距離が近い緊張感や恐怖感だけが後から残った。コーヒーを頼んで本を読むのだけれどもこの状況に対しての意識が強く離れなくて本なんて読めなかった。コーヒーだけ飲んでさっさと帰るのもおかしいし、かと言って本を読めるかと言ったら文字は読めても全ての言葉が単独にしか入ってこなくて何を言っているのか全く理解できなかった。
定員さんと何か喋るわけでもなく読めもしない本を開き全く無意味な時間が過ぎていった。

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