父、暴走。しきたりをつくる。
とある年のお正月の話。
毎年、お正月に父は着物を着るのが習慣になっていた。
その年もわりと粋に着物を着こなしていた父。
しかし「その年」は少しだけ違った。
前年に結婚した兄嫁が初めて我が家にやって来るお正月だったのだ。
父はなんだが様子が落ち着かない。
どうしたのかと聞くと、少し薄くなった頭が着物に似合わない、どうも気になるというのだ。
母は「今さら何を」と知らんぷりしていたが、一緒におせちを用意する私に、父は「頭が……頭が……おかしくないか?」と家の中をついて回っ