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お父さんシリーズ

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我が家で起こった出来事を綴ったエッセイです。 この「お父さんシリーズ」はずーっと前、ほかのところでこっそり書いていたエッセイ。私が脚本を書くようになる前に、ひょんなことから、尊敬…
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#お正月

秘宝館の娘

私は 「秘宝館の娘 」である。 実家が突然、秘宝館になったのだ。 きっかけは父のガンからの生還。 彼は生から性へのさらなる飛躍をしたのである。 それは突然に訪れた。 日に日に家の中に、いわゆる「開かずの間」が増えていったのだ。 「なぜ応接間が立ち入り禁止?」と父に聞いてもニヤニヤとしているだけで決してそのワケを答えようとしない。 母においては、その話題に触れてはいけないという殺気をビンビンに放っている。 ……ということはある程度の予測はつく。 よからぬことに違いな

父、暴走。しきたりをつくる。

とある年のお正月の話。 毎年、お正月に父は着物を着るのが習慣になっていた。 その年もわりと粋に着物を着こなしていた父。 しかし「その年」は少しだけ違った。 前年に結婚した兄嫁が初めて我が家にやって来るお正月だったのだ。 父はなんだが様子が落ち着かない。 どうしたのかと聞くと、少し薄くなった頭が着物に似合わない、どうも気になるというのだ。 母は「今さら何を」と知らんぷりしていたが、一緒におせちを用意する私に、父は「頭が……頭が……おかしくないか?」と家の中をついて回っ