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お父さんシリーズ

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我が家で起こった出来事を綴ったエッセイです。 この「お父さんシリーズ」はずーっと前、ほかのところでこっそり書いていたエッセイ。私が脚本を書くようになる前に、ひょんなことから、尊敬…
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#お父さんエッセイ

秘宝館の娘

私は 「秘宝館の娘 」である。 実家が突然、秘宝館になったのだ。 きっかけは父のガンからの生還。 彼は生から性へのさらなる飛躍をしたのである。 それは突然に訪れた。 日に日に家の中に、いわゆる「開かずの間」が増えていったのだ。 「なぜ応接間が立ち入り禁止?」と父に聞いてもニヤニヤとしているだけで決してそのワケを答えようとしない。 母においては、その話題に触れてはいけないという殺気をビンビンに放っている。 ……ということはある程度の予測はつく。 よからぬことに違いな

父、暴走して、母に捨てられる。

父の電話は3回に1回しか出ない。 とにかく、面倒なことが多い上に、くだらないことばかりだからである。 たとえば、天気について永遠と語る… たとえば、今、テレビで面白い番組をやっているからすぐ観なさいと言う。 たとえば、自分が渡した骨董品を返せと言ってくる…などである。 その日、夜10時を過ぎた頃に電話が鳴った。 そんな遅い時刻に父から電話がかかってくることは珍しい。 いつも、早朝か、昼間が多いからである。 何ごとかあったのかと思って、1回で出た。 すると、やけに丁寧な父

父、暴走。踊る好々爺。

「父、暴走。踊る好々爺」 数年前の夏のこと…。 毎年 お盆になると、父は 子どもたちが生まれ育った家に戻ってくるのをとても楽しみにしている。 数日前から 私たちが好きな食べ物をたくさん用意して首を長くして待っていてくれるのだ。 ハチャメチャな父も、家族が集まると好々爺の微笑みを絶やさない。 その夏もそうだった。 冷えたスイカを食べ、海へ行き、故郷ののんびりとした時間にひたっていた。 昼下がりには少し大きくなった甥っ子や姪っ子が居間に集まり、賑やかに走り回っ