我々は結局いくらの家を買えるのか?

お久しぶりです。りっくんです。

Xのマンションクラスタ(住まいクラスタ)の間でも住宅購入の予算をどう決めるか?についてはたびたび話題になっている中で、先日質問箱に予算に関する質問をいただきました。
せっかくですから今回はnoteを回答代わりとすることで、質問箱にとどまらず、様々な方に広く役立てていただければと思い筆をとりました。
皆さんの参考になれば幸いです。
(といっても、内容の大半は住まいクラスタの方が論じられているようなことかと思います)
なお、本稿は住宅購入にあたり住宅ローンを組むことを前提とします。
また、住宅ローンは銀行がいくら貸してくれるか、も重要なファクターになりますが、これについては個人差も大きいですので、今回は考えない(借りたいだけ借りられると仮定する)こととします。
さらに今回は主に実需でのマンション購入を対象とし、投資用マンションについては考えません。
戸建ての場合については戸建てを購入された方にお任せしたいと思います。(投げやり)

では、まず最初に結論から書きます。

結論:

  1. 「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの借入最大額」+手元資金の額までが問題なく買えるマンションの予算MAX。

  2. 「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの借入最大額」は「向こう5年は確実に返せる住宅ローンの返済最大額」から借入金利をもとに住宅ローンシミュレータを用いて求められる。

  3. 「向こう5年は確実に返せる住宅ローンの返済最大額」は{(向こう5年間の予想最低手取り年収)-(向こう5年間の予想最大年間生活費)}×(返済年数)という式で求められ、住宅購入にあたってまずこれを求める必要がある。

  4. 実際は将来的な利上げに備え、突発的な出費に備えた貯金とは別に、年間返済額の25%分の貯金or運用資産を毎年作れるとよい。

以降、このことについて詳しく(長ったらしく)書いていきます。
まとめたら半分くらいの長さになる気もしますが、不親切にならないようにあえてそうしています。
適宜読み飛ばしてください。

①確実に返せる住宅ローンの借入最大額

まず「確実に返せる住宅ローンの借入最大額」(以降借入最大額)の理論値を考えます。
ここで返済にあたり保有資産には一切手をつけないと仮定すれば、求めたい値は以下の手順で求められるかと思います。

  1. {(返済年間の予想最低手取り年収)-(返済年間の予想最大年間生活費)}×(返済年数)から確実に返せる住宅ローンの返済最大額(以降返済最大額)を求める。

  2. 返済年間の金利を仮定して、巷に溢れる住宅ローンシミュレータで総返済額が上記で求めた返済最大額になるような住宅ローン借入額を求める。

つまり、住宅購入にあたって何より、まずは返済最大額を求める必要があります。
なお、ここで返済と借入を分けるのは金利があるからです。

例えば35年ローンを組むとして、35年間の予想最低手取り年収が600万円、予想最大年間生活費が450万円の場合、
返済最大額:(600-450)(万円)×35(年)=5250万円
借入最大額:35年間の金利を0.5%と仮定すると約4800万円
となります。
なお、当然ながらここでは住宅取得後を考えますので生活費に家賃は含めません。
また、あくまでも最大額ですので、貯金や投資に回す分についてはいったん考えません。

ここで出てくるのは、
向こう35年間の予想最低手取り年収、予想最大年間生活費なんてわかるはずがない!
向こう35年間金利が変わらないわけがない!

という問題だと思います。
仰る通りです。私もわかりません。
FPさんにお願いすれば計算はしてもらえます。
しかしこれはあくまでも計算です
結局のところ、これから先がどうなるかなんて誰にもわからないのです。
ではどうすればいいのか?をこれから考えていきます。

②そもそも生活費とは何か

まず、そもそも生活費とは何かについて考えます。
「向こう35年の予想最大年間生活費」という変数がある以上、これは避けて通れない議論です。
生活費を「各家庭が現代社会で社会生活を営む上でかかるコスト」と定義して構成要素に分解すると、だいたい以下のようなメンツになると思います。
・食費
・日用品費
・水道、光熱通信費
・(お子様を考えるorいらっしゃる場合)保育料
・(お子様を考えるorいらっしゃる場合)教育費
・医療費
・保険代
・(マンションを購入するなら)管理費、修繕積立金
・固定資産税、都市計画税
・帰省費
・交際費
・レジャー費
・夫婦のお小遣い
・(車が必須なら)車の維持費
・その他の突発的な出費(家電買い替え、入院代etc)
住宅ローンを組むにあたっては、これら生活費が今いくらかかっていて、今後どう変動していくのか?を考えることが必要になります。
ちなみに、突発的な出費については定常的に続くものではないですし、貯金でカバーするのが一般的かと思います。

ですので本気で住宅購入を考えるなら、何よりまずやるべきことは
1.今の生活費はいくらなのか?どこが削れてどこが今後増えそうなのか?将来の生活費がどれだけ必要なのか?について向かい合ってみること
2.突発的な出費に耐えうる最低限の貯金(少なくとも数百万円単位)を作っておくこと
なのかなと思います。
ちなみに2.については、マンション購入をする場合必ず手付金を支払う必要がありますので、そもそも数百万の貯金が手元にない時点で購入はかなり無謀ではあります。

さて、ここでまた頭に浮かぶのは
向こう35年の生活費なんて、今考えたところでわかるはずがない!
という問題だと思います。
これらについて次項で考えます。

③もう少し短いスパン:5年で考えてみる

これまで書いてきた通り、向こう35年のことなんて誰にもわからないというのが現実です。
もしかしたら核戦争で世界が滅びて、運良く生き残れても原始人みたいな暮らしをしているかもしれません。
なんなら向こう10年のことすらよくわかりません。
ですが…
向こう5年と言われれば、ちょっとわかりそうな気がしませんか?

まず年収に関して、向こう5年であれば離職の可能性の有無もある程度判断がつくと思います。
また、アラサー〜アラフォー世代のサラリーマンなら、5年後に基本給が数万円単位で減っているということはなかなかないでしょうし、お勤め先によっては定期的に昇給していくこともありえるはずです。
生活費についても、5年後に食費や光熱費が倍増ということはまあ考えにくいです。(ハイパーインフレが起きたらありえますが、その場合そもそも住宅ローンどころではないと思います)
保育料や教育費についてもある程度の予測は立つのではないでしょうか。

もちろん勤め先が突然経営再建に入ったら?とか、事故に遭ったり突然両親の介護が降ってきて働けなくなったら?とか、夫婦ならどちらかが不倫して離婚沙汰になったら?とか、病気をして医療費がかかるようになったら?など、向こう5年間にも様々なリスクが潜んではいるのですが、それらを全部回避しようとすると、そもそも住宅ローンなんて組まない方がいいという結論になってしまいます。
住宅ローンを組む以前に、生きていくことはリスクテイクの連続である、ということは念頭に置くべきでしょう。
もちろん何かあったときのために団信には入っておくべきだとは思います。(団信については省略)
また、すぐ売却する事情ができたが、なかなか売却できなかったときのために、半年〜1年分の住宅ローン支払い程度の貯金は先程お話したものとは別に作っておくと安心かと思います。

ちなみに、5年という期間は以下の理由からも都合が良いです。・年間2%ほど住宅の価値が落ちるとして、~1%程度の金利で35年の住宅ローンを返済した場合、だいたい5年ほど住めばほぼ残債割れ(住居の現在評価額が住宅ローン残債を下回ること)が起きないと考えられる(詳細は省略)
・住宅ローンには一般に変動金利で借りる場合5年ルールがあり、金利変動にかかわらず5年ごとにしか返済額は変わらない(一部例外があるので注意。また、金利が上がれば返済スピードは落ちます)ため、返済最大額⇒借入最大額の計算では金利を現在の値で固定して考えられる。

こうして見ていくと、「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの返済最大額」を返済最大額とし、何よりまずその値を求め、そこから借入最大額を算出して予算を設定することには、ある程度合理性と有用性があると言えそうです。
ここまでの議論の結果より、
「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの借入最大額」+手元資金の額
を、問題なく買えるマンションの予算MAXとして考えることにします。
なお、ここで予算には以下を含みます。
・諸税
・(中古の場合)仲介手数料
・ローン手数料
・その他諸費用

④貯蓄や投資をどう考えるか

ここまで貯蓄や投資を考えずにきましたが、実際はそれらに回したいお金もあるはずです。
ここでポイントになるのは「一般的には予算を上げて価値の落ちづらい物件を購入すれば、差額を下手な投資や貯金に回すよりは効果的にお金が増える」ということだと思います。
これをもう少し詳しく、埼玉を例にして「今後の市況ベースで」見ていきます。
例えば8000万円で浦和や大宮のファミリーマンションを金利0.5%の35年ローンで購入した場合、金利が変わらない前提だと毎年210万円くらいは元本が減っていくので、5年住むと残債は6900万円程度になります。
ここでもし5年後にも8000万円で売れる(価値が下がらない)ような物件を買っていたとすれば(浦和や大宮なら可能な気がします)、売買の手数料と税金を考えても700万円程度は手元に残りますので、毎月12万円程度貯金していたのと同じことになります。
一方、6000万円の物件を金利0.5%の35年ローンで購入した場合、金利が変わらない前提だと毎年160万円くらいは元本が減っていくので、5年住むと残債は5200万円程度になります。
6000万円の物件ということはなんとか浦和や大宮+1、東上線沿線あたりのまずまずのファミリーマンションだと思われますので、5年も住めば相当うまく選んでも5480万円くらいにはなっている可能性が高い(ちなみにこのとき、年間では1.8%ずつ価値が下がっている)でしょう。
よって売買の手数料を考えると手元に残るのは100万円程度と思われます。

8000万円と6000万円で住宅ローンの返済額の差額は月額5万円、年額60万円、5年で300万円程度です。
よって5年後に売却するとして手元に残る額を考えると、8000万円の物件を買った方が300万円程度は得をすることになります。
この差を埋めるためには5年で総投資額の倍になるような、相当うまい投資をする必要があります。
よって下手な投資や貯金にお金を回すよりは、同じ額を価値が落ちなくて高価な物件の住宅ローンに回す方が効果的にお金を増やせるので、少なくともマンション購入であれば、あまり投資や貯金に多く回すことは考えず(最低限は必要ですが)、価値の落ちづらい物件を買う選択肢もあると言えるかと思います。
これが住まいクラスタでもよく言われている「コンクリ貯金」「住みながら投資」というやつですね。
もちろん、市況がどう動くかわからない以上手放しでオススメはできませんが、考え方として持っておいて良いと思います。

⑤住宅ローンの借入額を年収倍率で考えて良いのか

一般的によく言われるのが「住宅ローンの理想的な額は年収の〇〇倍」という指標ですが、私はオススメできないと思っています。
これは最大年間生活費が各家庭で全く異なるからです。
例えば同じ年収1000万円でも、仕事上の付き合いが多くて飲んだりゴルフに行ったりが必須の人と、フルリモートでひたすら家にひきこもっていられる人とではお金の使い方が全く異なるでしょう。
あるいはどうしても年に一度は家族でハワイに行きたいとか、趣味があってそこの出費は譲れない、という場合もあるでしょう。
子供は考えていない人と最低3人は欲しいという人でも違ってくるはずです。
あくまでもこれまで書いてきたように「住宅ローンの返済最大額」ベースで考える方が良いと私は思います。

⑥ペアローン/収入合算ローンを組んで良いのか

住まいクラスタのみならず、様々なところでよく起きる議論が「ペアローン/収入合算ローンを組んで良いのか?」というものです。
つまり返済最大額を考える際に用いる年収の値を夫婦合算で出してよいのか、という議論になります。
これに関して個人的見解をまとめますと以下になります。
・大前提として「住宅ローンは働いていないと返せない」。
・ペアローンや収入合算ローンはあくまでも「共働きを継続するために少しでも有利な住宅を購入する」「どちらかの離職リスクに備えて売りやすい物件を買う」ために組むものである。
・少しでも有利、とは具体的には駅が近かったり都心が近かったり通勤の利便性が良かったりすることである。
・よってペアローンや収入合算ローンを組むなら駅の近さや都心の近さ、通勤の利便性に加え、手離れの良さ(これらを総称して資産性と呼ぶことにする)にこだわって住宅選びをした方が良い。
・共働きを継続したいのに単独ローンにこだわって、安いが通勤が不便な住宅を購入してしまうと共働きが難しくなる可能性が高い。
・単独ローンにこだわるのなら、最初から夫婦どちらかがキャリアから距離を置いて家庭に専念し、通勤利便には目をつぶって、生活充実度に振った住宅を購入するという方法もあるのではないか?(特に育児を理由としてペアローンを回避する場合)
・よく言われる離婚リスクについては「離婚しないように努力する」のが正しい姿なのでは?
・DINKsならあまり難しく考える必要はないが、万が一を考えて資産性にはこだわったほうが良いと思われる。
ここまで見ていただくと何となくご理解いただけるとは思いますが、
「ペアローン/収入合算ローンを組んで良いのか?」
という問いは
「今後どういう家庭を築いていきたいのか?」
という問いにも等しいと思います。
これも住宅購入を機にもう一度考え直してみて良いと思います。

⑦最低手取り年収をどう考えるか

そろそろ本題、「我々は結局いくらの家を買えるのか?」という問いに対し答えを出す必要があるかと思います。
そのためにはまず、ずっと話題に出ている返済最大額を確定させる方法、つまり
{(向こう5年間の予想最低手取り年収)-(向こう5年間の予想最大年間生活費)}×(返済年数)
を確定させる方法を考えなければなりません。
最大生活費については②や③で既に述べましたので、ここでは最低手取り年収について考えていきます。

まずお察しかと思いますが、最低手取り年収を求めるにあたってはどの程度残業代、ボーナス分を考慮するか?が重要になります。
が、これに関しては完全に個人の判断になってしまいます。
どの程度のリスクを見込むべきか?は自分にしかわかりません。
例えば会社はもうかっているけど自分のいる事業部はケチンボな会社に売られて給与水準大幅ダウン、なんてリスクが考えられますが、これを万人が織り込むべきかといえば違うでしょう。
また、例えば公務員であればどんなに景気が悪化しても年間4ヶ月程度はボーナスが出るでしょうし、基本給が削られることも考えづらいです。
一方でメーカーにお勤めだったりすると、決済の翌日に大規模不正が発覚して売るものがなくなって、ローン返済を始めた翌月から1年間いきなり残業禁止、ボーナス半分カットなんて話もありえなくはないでしょう。(元メーカー勤めなので妙にリアルでごめんなさい)
一方で転職がきく職種なら年収をさほど下げずに転職できる、という話もあろうかと思います
こればっかりは考え出すともうキリがないです。
結局は生きていくことはリスクテイクの連続である、というところに戻ってきてしまいます。
一番考えやすく、確実性が高いのは今の基本給だけで考えることだとは思います。が、ややディフェンシブすぎるかもしれません。

⑧ところで6年目以降はどうすればいいのか?

先程からずっと向こう5年の話をしていますが、
「じゃあ6年目以降はどうすればいいの?」
という疑問が出てくるかと思います。
最後にこれを場合分けして考えていきます。

まず最初の5年の間に住宅ローン金利が上がっていて支払い額が変わる場合ですが、ここで重要なのは125%ルールの存在です。
これは住宅ローン金利がどんなに上がったとしても、返済額は直近5年間の125%までにしかならないというルールです。(もちろん返済不足分は生じます)
つまり返済額は5年ごとに変更が入り、増えたとしても+25%までということです。
ということは、年間返済額の25%相当額を最低限貯金or運用していれば、年収が大幅に減ったり運用で大損をしない限りは次の5年も返済に窮することはない可能性が高いです。
これを5年ずつ、引っ越すまで繰り返していけばよいと考えられます。
なお、もちろんこの貯金は突発的な出費に備える貯金や運用資産とはまた別です。
ちなみに返済額は変わらなくても返済不足分は当然発生するのですが、こちらの処理については様々な方法が考えられますので、別のところで論じたいと思います。

次に住宅ローン金利が5年間で全くorほとんど変わらなかった場合ですが、こちらはそのまま住み続けるか、もし広い家が欲しくなったり別の街に住みたくなったりしたのであれば、残債割れしないor残債割れ分を返済額増に備えた貯金で埋められるのなら売って、住み替えればOKなことは明らかかと思います。

ここまで見ていくと、6年目以降のこともそこまで極端に恐れる必要はなさそうです。

⑨で、我々は結局いくらの家を買えるのか?

ここまで散々長ったらしく書いてきましたが、結論を再掲します。

  1. 「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの借入最大額」+手元資金の額までが問題なく買えるマンションの予算MAX。

  2. 「向こう5年間は確実に返せる住宅ローンの借入最大額」は「向こう5年は確実に返せる住宅ローンの返済最大額」から借入金利をもとに住宅ローンシミュレータを用いて求められる。

  3. 「向こう5年は確実に返せる住宅ローンの返済最大額」は{(向こう5年間の予想最低手取り年収)-(向こう5年間の予想最大年間生活費)}×(返済年数)という式で求められ、住宅購入にあたってまずこれを求める必要がある。

  4. 実際は将来的な利上げに備え、突発的な出費に備えた貯金とは別に、年間返済額の25%分の貯金or運用資産を毎年作れるとよい。

すごくざっくりまとめると「普段どれだけ金使ってるかはっきりさせてから家は買え」ということですね。
長々と失礼しました。。。

おまけ:で、結局お前は?

ここまで読んでいただいたおまけ、兼投げ銭用に現時点の我が家の住宅ローンシミュレーション(というより健全度チェック)を載せておこうと思います。
ご興味ありましたら
「無謀じゃね?」
「お前、あと倍は稼いで来いよ!」
「食費かけすぎじゃね?」
等ご笑覧ください。。。

ここから先は

1,416字

¥ 300

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?