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山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第五十九回 和モノレアグルーヴ特集


はいどうも。良い子の諸君、レアグルーヴはお好きですかな?

『レアグルーヴって何? コロコロコミックの新連載?』とか言うやつは置いていきます。一切の説明を省かせていただきます。

て言うかコロコロコミックの新連載で『爆転! レアグルーヴ』ってあったらめっちゃいいな。主人公がレコード・ディガーでさ、ライバルたちとレコ屋行ってひたすらレコード掘りまくるの。『いっけえええええ!!!!』とか叫んでローリング・ストーンズを45回転でかけてニューヨーク・ドールズにしちゃったりしてね。楽しそうだな、それ(笑)。

まあまあレアグルーヴっていうのはすっげー簡単に言うと、80年代後半に起こったムーヴメントですよ。当時のDJとかラッパーが同時代のアーティストの音源掘るのに限界感じて、誰も知らないような昔のレコードとか、もしくはみんな聴き逃してたシングルのB面曲とかをね、片っ端から掘り始めたんですよ。

で、『何コレ今聴いたらすげえ格好良いじゃん』みたいなのを見っけて、DJでプレイしたり、サンプリング・ネタとして使ったりするのがクール。ってことになったの。それがレアグルーヴの勃興です。レア、つまり見つけ難いグルーヴってことですね。

で、まあ、和モノレアグルーヴっていうのは国産のレアグルーヴってことです。『和モノ』とかよく略されたりしますけどね。私の体感だと和モノレアグルーヴの株価って恐らくここ二十年で現在が最も低いと思うんですけどね。サブスクとYouTubeの普及によって。別にそんなこともないのかな? MUROさんが最近、シティ・ポップ中心のミックスCD出されたりしてますし。まぁいいや。いいのかよ。

とにかくそういうワケで山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第五十九回は“和モノレアグルーヴ特集”と題して、私の独断と偏見で選んだ和モノレアグルーヴの名曲を皆さんと共に耳を傾けていきたいと思います。みんな、ついてきてね!!



一曲めはRCサクセションで『ステップ!』。

五人編成のロック・バンドになり、当時人気急上昇中だったRCサクセションが2年8ヶ月ぶりにリリースしたシングルです。

当時結婚したばかりで、『とにかく売れたかったから色々研究した』という忌野清志郎がついに到達したネクスト・ステージ。

それまでのひねくれた内省的な歌詞から一転、享楽的なパーティー・ソングに趣向を切り替え、当時大流行していたディスコを意識したテイストは清志郎全キャリアの中でも屈指のダンス・ナンバーと言えるでしょう。

しかし“セルアウト”したとはいえ、清志郎の歌詞の文学性の高さ、メロディと言葉を結びつける才能はまったく損なわれていません。松本大洋の名作ボクシング漫画『ZERO』でも引用されてましたが、そのリズム感と色鮮やかな描写たるや本当に素晴らしいです。

『心臓が止まっても もうダンスは止まらない

夜の底で着飾って 絡まる足に笑われ』

なんて一節、ほとんど現代詩に近い。吉本隆明氏が清志郎の歌詞をメディアで絶賛し始めたのもこの頃だと思いますが、さすがの慧眼ですね。

キティ・レコードの制作担当がRCの演奏力を信用していなかったため、清志郎のヴォーカルを除く全ての演奏はスタジオ・ミュージシャンのものに差し替えられ、編曲はのちに山下達郎のバック・ギタリストとして知られることとなる椎名和夫が担当。

歌謡曲めいた仕上がりには内心不服だったそうですけども、清志郎は『やっと決まったレコーディングだし仕方ねえか』と割り切ったそうです。でもこのヴァージョン僕かなり好きです。

上手すぎるギター・カッティングとか、グルーヴィーなベース・ラインとか、豪華なストリングスとか、清志郎のキャリアの中でもかなり異質なサウンド・メイキングはむしろ新鮮。キラキラしてて多幸感に満ちてる。

『ラプソディー・ネイキッド』などのライヴ盤で聴けるラフで剥き出しな感じの演奏もカッコいいけど、和モノレアグルーヴ的な面白さでいうと断然コッチですね。

ちなみに清志郎はこのシングルでドラム叩いてる上原裕(村八分〜シュガー・ベイブ〜山下達郎〜沢田研二という異色のキャリアを歩んできた日本ロック界の生き字引的ドラマー)と後年、ラフィー・タフィーというバンドを組んで活動することとなるので、いやはや人生ってわかんないもんっすね。



二曲めは内海利勝&ザ・シマロンズで『鏡の中の俺』。

キャロルのリード・ギタリスト、内海利勝がキャロル解散から半年後、英国のレゲエバンド、ザ・シマロンズを招集して制作された盤です。

1975年の日本でこういう音楽をやっていたってものすごい先進性ですね。

エリック・クラプトンボブ・マーリー『アイ・ショット・ザ・シェリフ』をカヴァーしてレゲエを世界中に知らしめたのが1974年ですから、たったその翌年の出来事ですよ。しかも全部自作曲で。

中でもこの曲『鏡の中の俺』は屈指の名曲でありまして、ディレイのかかったヴォーカルと多重録音されたギターが酩酊感マシマシで素晴らしいですね。いい意味でライトなリズム隊も聴きやすい。この曲は内海さんご本人も気に入ってらしたのか、セカンド・アルバムでもセルフ・カヴァーなさってますね。

あと何つってもね、内海さんの歌唱が坂本慎太郎氏そっくりですね。歌詞の感じとかも含めて本当に似てる。

坂本慎太郎氏がソロ・デヴューしたときの小西康陽氏との対談で、小西氏が『“鏡の中の俺”みたいだなぁと思いました』つってましたけど、このひとマジで滅茶苦茶レコードディグってんだなぁ。と感動した記憶があります。

しっかし『レゲエ』っていう呼称がハッキリ定まったのっていつ頃のことなんでしょうかね。たぶん74年ぐらいかなぁ、音楽雑誌の加藤和彦氏と細野晴臣氏の対談の中で『今、レギがやりたいんだよね。レギはリズムが面白い』っつう話が出てまして、注釈には『中南米にあるリズム・パターン』って書かれてたんですよね。

あと同じ年のミュージック・マガジンかな? それでは『レガエ徹底研究』っていう特集記事が組まれててね、『“70年代はレガエの年になるだろう”というジョン・レノンの予言が実現しつつある』って書いてあんのね。んで『REGGAEという言葉をどう読むか未だにハッキリしなくて困る』っていう評論家のボヤキがくっついてんの。

一年の間にレギ→レガエ→レゲエ。って呼称が移り変わってるというのはなかなか目まぐるしいものがありますな。

まあまあ、新しい文化が輸入されたばかりのときに生じる混乱というのは、あとあとになって経緯を辿ってみると面白いですよね。内海さんのこのアルバムが『レゲエ』という呼称を決定づけたという歴史も有り得なくはないワケですし。

にしてもザ・シマロンズってどんだけ検索してもこのアルバム以外の情報一切出てこないんですけど、英国でどのぐらい活躍されてたんですかね?




三曲めは芝田洋一で『酒もってこい』。


僕の周囲は揃いも揃ってアルコール依存症患者ばかりなんですけど、彼らには是非この曲を捧げたいですね。

レコード・ジャケットの記載によれば、『山形県で会社員として働くかたわらシンガーソングライターとして活躍。この「酒もってこい」で第18回ポプコン本選会にて優秀曲賞を受賞しました。ジャンルを超えた新しいユニークな音楽作りに燃える24歳の青年。』とあります。

ポプコンっていうのはすっげー簡単に言っちゃうと、ヤマハが主催してた、プロへの登竜門的コンテストですね。

で、ジャンルを超えた新しいユニークな音楽作りに燃えているというだけあって、コレかなり変わってる曲です。ディスコっぽい歌謡ロックなんだけど唐突に三味線が入ってきたり、かなり変です。モンキーマジック吉田兄弟とコラボしたやつがあったけど、完全にあれの先駆ですよね(笑)。

支離滅裂で意味不明かつ男尊女卑丸出しな歌詞は今だったら絶対NGでしょうね。70年代東映ヤクザ映画的な理不尽な暴力性がプンプンします。『人斬り与太 狂犬三兄弟』みたいなね。しかもこれ歌が二人称なんですよ。当時の歌謡曲の水準を考えるとかなり進んでいたというか、屈折してますね。

芝田さん、このシングル一枚っきりでそのあとは音沙汰ないっぽいんですけど、音楽活動自体は続けられているみたいです。すげえ気になる(笑)。



四曲めはアリスで『何も言わずに』。


ブレイクビーツ・マニア垂涎!

アリスのファースト・アルバムに収録されている、アリス史上最もグルーヴィーな必殺ナンバーです。

ベースラインもドラムもめちゃんこ格好良いですね。

つーかアリスマジで演奏クッソ上手いですね。

スリーピースでこれやってたのマジでカッコいいと思います。今でこそアリスってーと『フォークの人だよね?』ぐらいの印象しか持たれてないと思うんですが、このレコードの帯を見ると『独特のパーカッション・サウンドが聴き物!』って書いてあんのね。

discogs(地球上のあらゆるレコードの情報が蒐集されているウェブサイト)見るとこのアルバムのジャンル区分、『ソウル/ファンク』になってますしね。アルバム通して聴くと別にそうでもなくて、基本的には75年水準のフォーク・ロックって感じなんだけど、この曲だけなんか異常に浮いてるんですよね。この一曲が、このファーストをあまりにも異質なものにしている。この路線だけでアルバム作ったら間違いなく伝説のファンク・トリオになっていたと思います。

アリスを懐古主義のジジイババアだけに独占させてはいけない!!!!

レッツ・グルーヴ!!!!!!!!


ちなみに谷村新司さんは世界で初めて商業用DVDをリリースした人らしいです(ちなみにリリースは1996年。早すぎ)。

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というワケでいかがでしたでしょうか、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第五十九回 和モノレアグルーヴ特集、そろそろお別れのお時間となりました。次回はついに第60回ということで、現在人気急上昇中の第注目アイドル『芹沢あさひ』特集を組もうと思います。よろしくお願いします。

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それではまた。


愛してるぜベイベーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!



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