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オーパーツ・ミュージックのすすめ

まずそもそもオーパーツって何やねんと聞かれますれば、『その時代の技術や知見においては製造がきわめて困難、もしくは不可能と思われる一品』のことでありまして、有名なものだと巨大地下都市マチュピチュやナスカの地上絵などがあげられますが、この“オーパーツ”はじつは音楽にも存在します。

『この時代にこんな曲やってたなんてウソだろ!?』

『これ2019年の新曲って言われても信じるわ!』

みたいなやつあるでしょ? あれです。あれを我々は『オーパーツ・ミュージック』と名付け、ディグにディグを重ね、その調査結果をここで発表していくことにしました。イエエ〜イパフパフドンドンドンドンパフパフドンドンドンドン階下の住人『ちょっと!さっきから天井ドンドンドンドンうるさいんですけど!何事!?事と次第によっては荒立てるわよ!事を!(倒置法)』

とまぁ、階下の住人に怒られちゃったからしっとり始まろうと思うんですけれどもね、まず、記念すべき第一枚は、毎日世界のどこかでベスト盤がリリースされているオールディーズ歌手ジョニー・マティスの1959年リリース作『オープン・ファイア・トゥー・ギターズ』から『オープン・ファイア』です。




“50年早かったミニマル・セクシャル・ジャズの名盤”

おそらく地球上に5000以上は存在しているであろう、マック・デマルコやMr.Twin Sisterの流れを汲むベッドルーム・ポップ、ドリーミー・ポップ、インディ・ポップの源流。というか頂点だと思います。1959年に出たアルバムというのが本当に信じられない。ビートルズもモータウンもボサノヴァも出てくるはるか前よ。まだみんなロックンロールでイエーイってやってた頃よ。音色といい、音数といい、そこから浮かび上がる音像といい、軽く50年は先取りしてたね。

なんせ朗々と粘っこくひたすらセクシーかつゼクシィに歌い上げる我らがジョニーのバックが、糞リバービーで超ドリーミーなギター2本と、必要最小限のフレーズを必要最低限の音量で鳴らすウッド・ベースだけなの!ドラムも無え!ホーンも無え!ギターは完全擬似セックス!ボーカルは!いるけれど!楽器に対して興味が無え!

そうなんだよ、ギターの絡みっぷりと来たらもう完全にセックスなんだよ。わかりやすくいうとセックスしてる二人(ギター)の横に、天を仰ぎ見ながらヨダレ垂らして完全にひとりの世界に入ってオナニーしてる男(ジョニー)がいて、その模様を体育座りしてる男(ベース)がボーッと眺めてる、みたいな感じのアルバムよコレ(どんなアルバムだよ)。

話ちょい飛ぶけど、『カラー・オブ・ハート』って映画で(タイラー・ザ・クリエイターのお気に入り映画としても有名です)、オトナたちが子供に『聴いていい音楽はニール・セダカやジョニー・マティスなどの健全なポップスだけだ』って言って、『ジョニー・マティス!?冗談じゃないぜ!』みたいに反感買うシーンがあるんですが、いや全然、全っ然ジョニー・マティスヤバいですよ、超エグエグのオトナ向けですよ。と映画を観ながらポツリつぶやき、ついでにおしっこも漏らしてしまいました。

また、ジョニーさんはゲイなのですが、それをカムアウトされたのが1982年という、現在と比べれば遥かに風当たりの強い時代にそれを宣言したというのは大変な勇気であり、これは先進的とかそういうことでなく、心の底からリスペクトしております。

しかもこの年、ジョニーさんは『ミスティ』と言う、エロール・ガーナー(ネオソウルやニューチャプター・ジャズの話法とはまた違ったエレガントな“ヨレ”でビンビンに弾きまくるピアニストです)のオリジナル曲に歌を吹き込みこれがドカーンと大当たり、

ジョニー・マティスといえばミスティっしょ。ぐらいの代表曲にまでなったワケですが、それと同じ年にこんな先鋭的で冒険心溢れるアルバムにトライしていたと言うのはホントに凄いことですね。

ジャズ・スタンダードと書き下ろし曲が大体半分ずつ入っておりますが、どちらもグレイト、最高としか言いようがありません。ミニマル・セクシャル・ジャズの名盤だと思います。そんなジャンルは無い。じゃあ作った。今。しかしながら、この時代にこれをやろうとしたセンスに脱毛、いや脱帽してしまいます(あえて賞味期限の切れたギャグを使っていくスタイル)。

ちなみにここでソフトでロマンティックな素晴らしいギター・プレイをかましているのは、アル・カイオラさんとトニー・モッテラさんというお二方ですが、アルさんは『ソフト・ギター(そのまんますぎ)』というソロ・アルバムで、トニーさんは『ロマンティック・ギター(そのまんますぎ)』というソロ・アルバムで、このアルバムの意匠を継ぐようなワンダフルな演奏を披露してくださってますんで、そちらも必聴ですぞ薫殿(誰?)。



続いて栄えある(ない。NEU!)第二枚目は、ハーヴィー・マンデルで『ベイビー・バター』。



“あらゆる天才たちから『世界初の』という冠詞を奪い取った爆音ブルースマン”

・冒頭にサンプリングが入った全編インスト。

・ストリングスが多用されてる。

・爆音のブルース・ロック。

って切り分けて考えると一見『何が革新的なの?』と問われそうですが、まず冒頭のサンプリングからして相当新しいのね。これハーヴィー・マンデルの娘の声がサンプリングされてるんだけど、71年当時、こんなことしてる人ほっとんどいなかったのよ。スティービー・ワンダーもスライ・ストーンもドワイト・サイクスも忌野清志郎も娘の声サンプリングした曲出してるけど(なんでみんな娘なんだろう)、その誰よりも早いもの。あの天才スライですら74年ですよ。しかもハーヴィーの使い方は、ノイズ混じりのタイトルコールからブレイクビーツになだれ込むっていう、もうなんかちょっとヒップホップ先取ってんじゃねえかって使い方だし。冒頭30秒だけ聴いたら何年の楽曲か誰もわかんないと思う。『2005年頃のミクスチャー・バンド?』とか『割と最近のジャズ・ロックバンド?ノルウェーとかの』みたいな解答が多いんじゃないスかね。

あとストリングスね。ストリングス多用する曲があるバンドなんざ、それこそビートルズにディープパープル、ムーディー・ブルースからイエスときりがないワケですが、爆音ブルース・ロックとここまでマッチングさせた例は僕が知る限りほっとんどないです。ニュー・トロルスが76年にやったヤツぐらいかな? とにかくギターが寄せてってないんですよ。エレピとコンガとブレイクビーツとストリングスと爆音ブルースギターがお互いを食い合わずに鳴らされていて、しかも全く泥臭くないし、アート・ロック的なヒッピイズムにも染まっていない。冒頭に挙げた3点をクリアーしたものを1971年に出したっちゅうのはね、同年のツェッペリンの『Ⅳ』と並ぶぐらいの偉業だと思います。これはもう国宝ですね。ヴァジャイナ共和国の。そんな国はない。この人まだ現役で、70過ぎても未だにギター糞爆音で鳴らし狂ってるみたいなんで一回ライヴ観てみたいですね。



で、三枚めはスティーヴ・エリオットの『トゥルー・イメージ』から『メモリー』です。



“カリフォルニアからやって来た宅録インポテンツファンク”

こんな音楽、一体どういう人間が鳴らすんだろうか。

肋骨全部折ったラッキー・キリマンジャロとか、無人島に流されてヴィンテージシンセ1台だけ渡されたhomeshakeとか、熱が43度ある岡村靖幸とか、色々考えてはみるが答えは出ぬ。きらびやかなシンセにゴスペル風コーラスにしょぼいビート、そこに乗っかる永遠の半勃起状態のファルセット。ちょいと検索をかければこれに似たような音楽は無数に見つかるが、やはりみんなちょいとフレッシュすぎるのだ、キラキラしすぎなのだ。こういう音楽を僕はインポテンツ・ファンク、もしくはEDソウルと呼んでいる。こういうのが好きな坂本慎太郎さんは、『こういうのなんて言うの?』って友人に聞いたら『インナー・ファンク』って返されたそうなんですが、まさに言いえて妙、ですね。インナー・ファンク。

よく聞くとコーラスもなかなか異様だったりするんだが、このひと敬虔なクリスチャンらしいので納得ですばい.com。クレジット見ると他の楽曲ではミュージシャン呼んだりしてるんだけど、この曲だけは完全DIY、つむじから爪先までスティーヴ・エリオットが手がけてるみたいでブットビー。シンセの音がとてもいいですね。


というワケでいかがでしたでしょうか、『オーパーツ・ミュージックのすすめ』、そろそろお別れのお時間となりました。
今後とも世界各国のオーパーツミュージックを皆さまの鼓膜にお運びするべく誠心誠意努力していく所存でございましたが、バイブスの至らぬ点もあり至極残念ながら今回で最終回となります。
なお、次回からは装いも新たに、山塚りきまるの『女の子の口じゃ言えないトコロに思いっきりKISSしてほしいの!』が始まります。
おいしいハーブティーの淹れ方やおすすめの北欧家具などを紹介し、エコでロハスなスローライフを提案するノマド必読のライフスタイル・ネットマガジンとして生まれ変わる予定です。
乞うご期待!
最後に今週の占いです!


かに座のあなたは運命の相手との出会いがあるかも!ラッキーアイテムはへその緒(他人の)!

みずがめ座のあなたは人に振り回されて疲れちゃう一週間になりそう!浜崎あゆみのロゴが入ったアイテムをたくさん身につけてテンションをあげて乗り切って!みーーじかーーいなーーつがーーはーーじまーーってーーゆくーーーーーーーー

それではこれにて拙者はドロンいたします!みなさま、イムーポシ オ ノ エボレ〜〜〜!!!!!(イボ語で“トイレはどこですか?”の意)





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