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菅原洋一の「今日でお別れ」

* 菅原洋一、90歳、「今日でお別れ」聴いた。超絶、素晴らしかった。

これは歌謡曲でなく、歌曲だ。

* 菅原洋一、90歳、「今日でお別れ」、偶然聴いた。一つ一つのフレーズを大切に大切に温め、これ以上ないくらい磨きに磨き上げた歌唱に感服し、満足した。若いときの歌は、大賞など貰ってもいわゆる「歌謡曲」だったが、90歳であれからこのように進化し、歌えるとは心底驚いた。

氏の若いときの歌は、どうにも感傷的過ぎて、歌詞もメロディーも自分の趣味に合うものではなかった。
ところが当夜、偶然TVで耳にした歌はまるで違っていた。

氏の近年までの活躍などまったく知らなかったが、いかに何でもありのTV界とはいえ、90歳を舞台の上に立たせて本当に大丈夫か、最後まで歌えるのかと、ハラハラ、ドキドキ感のままにTV画面を見ていたら、我にもなく引き込まれてしまった。

SNS評を見ると、昔とまったく変わらず素晴らしいとか、少しも衰えない美声とか、名曲の証明とか、そんな感じでもちろん大変な高評価ではあった。が、私の感じ方はそうではなくて、大衆的人気を得、その筋の大賞なるものを貰ったあとも、この人は90歳になるまで、とことん自分の歌を究め尽くし、昔と同じように歌うのでなく、極限にまで磨き上げることによって絶えず進化をし続けてきたのだと思った。だからこそ、感傷的に過ぎると、むかし自分が思った歌が、心にしみてあんなに深く聞こえたのだろう。これにはたぶん自分の心の変化もあるのかもしれないが。

何れにせよ、一芸に秀でるというのはどの世界も同じで、人の心とその場の空間とを完全に支配し、たとえ瞬間なりとも、人に時間を忘れさせ、人を夢中にさせる何かの力があるものだ。

歌謡曲であれ、歌曲であれ、本当は、それはどうでもよいことなのかもしれない。(2024-6-25)

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