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金木犀、沈丁花、梔子(くちなし)

 今年は、通りを散歩していて気づいたのだが、金木犀の花がかなり早くから咲いて、今また、咲いて、二度いい匂いを嗅ぐことができた。
 多くの子どもは、通学途中にいい匂いのする植物があることに気づくだろう。
 自分はそうだったが、その姿、形、色よりも匂いの方を先に感じたものだった。いい匂いがすると思いながら、ただ黙って通り過ぎた。まだそれらの名前も知らなかったし、植物としてその姿を目に留めてはいなかった。
 匂いを説明するのは難しいが、ただ、いい匂いと思うだけでよかった。幼い心で幸せな気分を季節ごとに通学路で味わっていたのだ。
 春先の沈丁花と初夏の梔子、10月初旬の金木犀。これらが自分にとって子どもの頃からいい匂いのする3つの植物だった。

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