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太極拳は相手に応じて千変万化でありながら、基本技法は八つで構成されます。
それが掤(ほう/ポン)、扌履(り/リー)、擠(せい/ジー)、按(あん/アン)、採(さい/ツァイ)、挒(れつ/リエ)、肘(ちゅう/ジョウ)、靠(こう/カオ)で、太極八法や八門と呼びます。
これを八卦とし、それに加えて歩法の進歩、退歩、右顧、左盼、中定(進、退、顧、盼、定)を五行の金、木、水、火、土とし、合わせて太極十三勢となります。

八法はさらに掤、扌履、擠、按の正手(四正)と、採、挒、肘、靠の隅手(四隅)に分かれます。
楊式太極拳85式の第三式の攬雀尾は掤、扌履、擠、按の四正で構成され、太極拳の技法の基本が詰まったものとも言えます。
初学者はまず攬雀尾の習得に励むと良いと思いますが、この中でも特に掤は多くの起点になるとされ、重点的に意識すると効果的でしょう。

掤の形は、例えば右腕を前方に伸ばし、その肩から指先までの腕を弓のようになだらかな曲線を作りますが、これは腕の力で推し出すものではありません。身体の中心から外へ球状にエネルギーが膨張する、張りをもった力で現れるものであり、円弧で膨れていくイメージと共に、前腕部に伝えていく、という意識が重要になります。

ちなみに、上級者向きの話ですが、四正は方角でいうと正面(東西南北)を指し、四隅はその間(北東や南西など)の隅となる方角を指します。具体的に、掤=南、扌履=西、擠=東、按=北、採=西北、挒=東南、肘=東北、靠=西南と定義されています。
四正は攬雀尾のように勢法(架式)で明確に現れるものですが、四隅はその動作の過程で現れてくるものと言われています。分かりやすいのは肘かもしれません。
例えば陳氏太極拳ですが、動画の1:00から始まる摟膝拗步では肘が明確です。一般的に見る摟膝拗步では肘が消えているのが多い印象ですが、腕が前方に伸びていく過程で肘の動かし方を意識することで、四隅の肘が現れてくる訳です。

まとめると、掤、扌履、擠、按、採、挒、肘、靠の技法の八卦、進、退、顧、盼、定の五行、この組み合わせが太極十三勢で、太極拳の基本です。
ありがちなことですが、基本ほど奥が深いものです。上辺だけで済まさず、軽んじず、じっくりと取り組んでみてはいかがでしょうか。

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