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SOUR

inktober2021 11日目のお題は「SOUR」である。

子どもの頃、すっぱいのは苦手だった。周りの子どもたちはみんな、マヨネーズとケチャップが大好きだったが、同意しかねた。毎日梅干しを食べる大人たちが不思議だった。「お土産だよ。はい」と差し出された「都こんぶ」は、ありがとうと受け取ったはいいが、なぜこれを子どもが喜ぶと思って買ってきたのか、おばあちゃんよ、と心の中で毒づいた。

そんな幼稚な味覚のわたしが、子どもの頃に最も苦手としたすっぱいやつは、「ダイダイ」である。なんすか、あのすっぱい果汁。なんであれを鍋物のタレ(?)に使うの。

母は「今日の晩ごはんは鍋よ」と言って、どこからともなくダイダイを取り出した。そしてスパンと横半分に切り、レモンとか絞るヤツに体重をかけてグイグイと果汁を絞った。せっかく鶏やお魚でとったスープの味をなんであのすっぱいやつに凌駕されなければならないのか。「まずい」と言ってもよかったくらいだが、わたしは黙っていた。

正月の鏡餅の上に鎮座しているダイダイは、色といい形といい、実に素晴らしいのだが、食べることはできない。子どもの頃は「なんであれってすっぱいのに偉そうに鏡餅の上に乗ってんの?」と思っていた。ダイダイにしてみれば、「俺の縁起の良さを知りもしないでこの小童が!」と思っていただろう。いや、知らんけど。

今でもすっぱいものは得意じゃない。マヨネーズもケチャップも、冷蔵庫になくてもいいとさえ思う。


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