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少し考える

昨日、地下鉄に乗った。もう冬休みだし、帰省ラッシュだし、当然、混み合っていた。ドアが開いてびっくりしたのは、ドアのあるあの広いスペースの真ん中で、大きなスーツケースに座っている若い男性がいたからだ。イヤホンで何かを聴きながら、スマホをいじっている。彼はまるでスーツケースと上半身が繋がっているようにさえ見えるほど、「座って」いた。くたっとしたぬいぐるみのような感じだった。

迷惑だな、と思った。でも次の瞬間、待てよ、と考えた。本当に迷惑だろうか。彼が占めている面積は、スーツケースの横に立っているよりは少ない。荷物の上に座っているのだから、その分しか床面積を占領しない。スペース的にはオッケーだ。それでもまだ、違和感がある。

口が半開きで、スマホをいじりながら、足をぶらぶらさせているのが不愉快なのか?そんな人は、車内を見回せば、何人もいる。

例えばここにいるのが、ベビーカーだったら?車椅子の人だったら?同じくらい、あるいはもっと場所をとり、こちらを圧迫するかもしれない。けれども、そこに違和感はない。

彼が立てるのに、立ってないことに違和感を覚えるのか。椅子でないところに座っている違和感なのか。そうか。

混み合う電車に、自分の椅子を持ち込んで座っている。そんな感じだ。ここに座っているから動きませんよ、ジャマだったらあなたの方が避けてね、という印象。

でも私の中にあるのは、「いいよね、楽そうで」というジェラシー。「じゃあ、あなたもやったらいいじゃない」と言われても、わたしにはできないな。やっぱり、恥ずかしい。

ムスメには、地下鉄でお化粧なんて、お行儀悪いからやっちゃダメよ、と言うだろう。でも、実際にお化粧している人を電車の中で見ても、やめなさいとは声をかけたりしない。それと同じことかもしれない。

スタート地点は、この若者が正当である理由を探していたはずなのに、結局はマナー違反に着地してしまった。人をジャッジしないようにと思っていても、やはり自分の価値観が捨てられない。

どんどんアタマが硬くなっていく。




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