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れんあい

夢の中で、わたしは女優だった。なんのドラマだったか、はっきりとはわからないが、「親のいない子どもたちを守る施設」で、「資金繰り」を任されて四苦八苦する若いリーダー、だったような気がする。場所は、南の方で、海がキレイで緑が豊かな地域だ。

その施設はプロジェクト制で、いろんな団体や企業が運営に関わっている。ある日わたしは一緒に事業を進めるボランティアの男性に恋をする。米津玄師とスガシカオを足して2で割ったような風貌。アコギを弾きながら、子どもたちと歌をうたったり、一緒に遊んだりしている。アーティストっぽく、少し陰のある感じもかっこいい。この人をヨネシカとする。

一方で、わたしに好意を持っているであろう男性もいる。渡辺大知と仲野太賀を足して2で割ったような感じで、無骨な雰囲気だが心は繊細。子どもたちからは、いつも優しい気配りと面倒見の良さで人気がある。彼は運営プロジェクトでお金に関わる仕事をしていた。薄々、好かれているなあとは思っているが、なんとなく垢抜けない雰囲気が苦手だ。この人をダイガとする。

ある日の会議で、ダイガが言った。「子どもたちの作ったおにぎりを松本人志さんに食べてもらいましょうよ」それはどういう意味だろう?「ぼく、テレビでそれを取材してもらっている映像がポコンと頭に浮かんだんですよ。そしたら、全国から注目されて資金集めもやりやすくなるのでは、と思ったんです」なぜ松本人志を?「いや、なんていうかそれは、もう、思いつきなので、説明できません」あ。そうですか。安っぽい企画だな。

わたしはその案に賛成できなかった。有名人にちょっと取材してもらって、子どもたちに「かわいそうな境遇」とか「必死にがんばっている」とかありきたりのレッテルを貼られるのは嫌だった。わたしはダイガと対立した。

一方、会議の席でヨネシカは黙っている。川口春奈似の若い女性がなぜか、ヨネシカの隣に寄り添うように座っている。

会議が終わって、ヨネシカと春菜に呼び止められる。「ほら、早く言いなさいよ」とばかりに春菜からヨネシカはつつかれている。「あのっ、あのー、ええと、その」汗びっしょりだ。どうした。大丈夫?なんか飲む?「あっ。あのー、それじゃ、ミルクティを」と言われて、わたしは自販機にミルクティを買いに行く。お金を入れながら、「ああ、わたしはこれから振られるんだな」と思う。紙コップを2つ持って、ヨネシカの待つテーブルへ行き、2つとも彼に勧めた。ヨネシカはまだ落ち着いてなくて、しかも、ドキドキしている様子がこれから告白でもするかのようにも見え、わたしはちょっと期待をした。「あの、ぼく…」と言い始めたところでダイガが「あの、ちょっといいですか」と声をかけてきた。

ダイガは知っていたのだ。ヨネシカが結婚していたことを。わたしを傷つけまいと、話に割って入って、全く別の話題を展開した。「ごめん、今、ちょっと大事な話があるから」とわたしが遮ると、ヨネシカが「あ、いや、また今度で」と言ってそそくさとその場を離れた。それと同時に、わたしは失恋したのだなと悟った。すごく傷ついて、すごく悲しかった。それはフラれたという実感のないまま「好き」を失ったせいだ。そしてその時から、わたしはパンツを履いていない自分の下半身が気になり始めた。どうしてパンツを履いていないのだ。ワンピースの下は丸出しじゃないか。なんだこの不安定な感じ。風が吹いたら丸見えじゃないか。

数日経って、わたしが森の中を歩いていたら、向こうからダイガがやってきた。薄いブルーの半袖シャツに白の膝丈のパンツを履いている。夏っぽい。ダイガはわたしの顔を見るなり、きびすを返して走り始めた。おい、どうした。わたしは追いかけた。なんだよなんで逃げるんだよ。急な登り坂なのに、息も切らさず走る自分に驚く。わたしはまだパンツを履いていない。なんだか下半身がスカスカする。ダイガはあっという間に坂を登りきり、その先へと下っていった。

わたしも坂を登りきり、眼下の景色に息を飲んだ。コバルトブルーの海と白い砂浜、緑が濃く揺れる森、ああここは沖縄だったか。太陽が澄んだ空に輝いている。その下り坂をダイガが走り抜けて、浜辺へと向かっている。わたしは大きな声で名前を呼んだ。一度振り向いたが、ダイガは水面に飛び込んだ。泳いでまで逃げようというのだ。どこまで嫌われたものか。

スイスイと平泳で進むダイガを坂の上から眺めながら、心地よい風に当たる。すると突風が吹いて、わたしのスカートが捲れ上がった。ヒー。慌てて裾を抑えるも、周りの人にはきっと見られたに違いない。まずい。わたしは逃げる。

施設に戻ってパンツを探していると、ダイガが帰ってきた。スカスカの下半身に気づかれないように、わたしは平静を装う。「あの」と声をかけてきた彼に、何事もなかったかのように「どうした?」と返事をする。「好きなんです」と言って、わたしを指差す。わたしは頭の中でぐるぐる考える。この台本、どうなってるんだっけ?わたしは一体、何歳の設定なんだっけ?若いのか、年上なのか、えーと。セリフはなんだっけ?ここでどうするんだっけ?パンツはまだ履いちゃいけないのかな?

と、ここで目が覚めた。誰だ、こんな台本を書いたのは。

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