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甦った漆器


今回は、塗師 渡辺嘉久さん(50代 滋賀県在住)のステキをご紹介します。


渡邊さんは、浜仏壇(長浜仏壇)の塗師の家に生まれ、大正11年に創業した「渡邊仏壇店」(現在は「株式会社 渡邊美術工藝」)を引き継ぐ3代目です。

浜仏壇とは、江戸時代中期に、長浜曳山祭りの曳山を模して創案された仏壇で、滋賀県長浜市、米原市、伊香郡高月町で制作されている伝統工芸品です。
七職と呼ばれる、木地師、塗師、宮殿師、彫刻師、金箔押師、蒔絵師、錺金具師たちの工程を経た部位を、接着剤や釘を一切使用せずに組み込んで作りあげます(構架組み立て方式)。
制作に一年以上かかるものもあるとか…。

時代とともに仏壇の需要は減っていき、漆塗りの仕事も減りつつある今、塗師として技術を後進に引き継ぎながら、曳山や神社仏閣の修復も請け負っています。


曳山祭りの曳山


自らを「漆バカ」と称し邁進する渡邊さんは、数年前のある日、探し求めていた「常喜椀(じょうわん)」を、譲り受けることができました。

「常喜椀」は、室町時代から昭和の始めまで、長浜市常喜町で製造されていた漆器です。常喜椀の漆塗りの技術が基になって、曳山や浜仏壇の塗りになったのではないか―。渡邊さんはそう考えています。

手に入れた常喜椀を元に、文献で調べて復刻させて、新たな常喜椀(※じょうわん)が誕生しました。

左:常喜椀(じょうぎわん) 右:渡邊さんの常喜椀(じょうきわん)


漆塗りの職人は減っているものの、芸術大学や専門学校で受講を希望をする人は増えているのだそうです。
渡邊さんのお話は、技術的な内容にとどまらず、岩手県に出向いて漆かきをしたことや、それをきっかけに始めた長浜に漆の木を植える活動等々、自ら行動して得た知識と経験談を交えてのお話なので、講義をしたら人気がでるだろうなぁと思っていたら…



「金継ぎ講座は、やっています」(渡邊さん)

長濱金継ぎ倶楽部 – 渡邊美術工藝


金継ぎとは、割れたり、欠けてしまった陶磁器の破損した部分を、漆で接着して修復する技術です。




漆工房で行う本格的な講座を受けに、わざわざ遠方から通われているそうですよ。


長濱金継ぎ倶楽部 – 大切な器を修復しませんか – 漆塗りのことなら株式会社渡邊美術工藝 (watanabe-urushi.com)

もし、大切な器が割れてしまったとしても、金継ぎで、新たな魅力となって甦るかもしれませんね。


こちらは、人気観光スポット、黒壁スクエアのすぐ近くです。
詳しくはホームページを。


※2022年取材 再編


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