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【読書おすすめ】緩和ケア医が、がんになって(大橋洋平)

こちらもアンリミテッド対象。
消化器系の希少ガン「ジスト」の病名は、知人をあっというまに失ったことで、印象強く覚えてました。

大橋氏は自分が発病するまでは、緩和医として、がん患者に「頑張らない、そして諦めないで」とよく話してきたそうです。
すでに厳しい治療などを十分に頑張っているのだから、これ以上もう頑張らなくていい。でもやはり生きることは諦めてほしくないという意味合いで。

でも自らが抗がん剤治療を続けることで、こう考え方が変化したそうです。
「諦める、そして頑張る」

今までの希望を諦めて、これからの希望を頑張る。生きるために生きる。
余命を引き算で考えるではなく、「足し算命」で日々を積み重ねていく。この心境変化に、私は最も感銘を受けました。

大橋氏が罹患したのは、まぎれもなく進行性で、転移しやすいことが数値でもハッキリと表れているガンです。でも彼は、足し算命で余命ではないいのちを積極的に積み上げながら、今日も発信し続けています。

私は正直言って、途中まで「がん患者ではなくても、人間として共有できる思いだな」とか、「がんは死ぬまでに時間の猶予がある、準備ができるっていうしな」などと、ありきたりのことを考えながら読み進めました。
でも、大橋氏が専門家であり、生身のひとりの患者でもある中で、本音で一次情報を語る文章に、どんどん引き込まれていきました。
自分は力強く前向きになんてできない。ただ、立ち向かえなくても、乗り越えられなくても、克服できなくても、泥臭くはってでも、わがままでも超自己中でも、それでも生きていきたい。

私は先日、コロナでしばらく臥せったんですが、そんな一過性の、いわばありきたりの流行り病で、ありきたりの経過をたどったのにもかかわらず、「当事者でないとわからないことがあるものだな」としみじみ感じました。そんな思いのときに出合えて、良かったなあと思えました。

大橋氏のフェイスブック投稿を見てみると、共通の友人の名前を見つけてまた胸が熱くなりました。自分もともに、大切に生きていこう、としみじみ思えた読書でした。


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