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おひとりさま天国 後編


出発当日

○○は飛行機が離陸する時間よりも
かなり早くチェックアウトし
“あの”ビーチへと向かった

ビーチに着いたが当然…彼女の姿はなかった

○○はお地蔵様の方に行き、少し想い出を振り返ることにした

○ : 初めて会った場所はここだったな…

最初は遥香に翻弄され○○は不思議な体験をしたが

最終的には遥香の事が好きになった

彼女に口付けされた冷たく柔らかい唇の感触も残っていた

あまりにもできすぎた物語に
「小説でも書こうかな」と冗談混じりに呟き
最後に○○はお地蔵様に手を合わせ去ろうとすると…

? : こんにちは…

振り返ると…40代くらいだろうか…黒髪で長髪の女性が片手にはユリのお花..もう片方には透明なポリ袋を持っていた

○ : こ..こんにちは…
        (誰かに似てる気が…)

女 : 先日、このお地蔵様を綺麗にしてくれたのは
       あなたですか?

○ : はい…
       台風の翌日にここで散歩してて

○ : そこでたまたま目に留まって…
       綺麗にしただけですけどね…

女 : いえいえ…たまたまでも嬉しいんです
       ありがとうございます

○○の方へ深々とお辞儀をし、お地蔵様の元へ


女性は透明なポリ袋から
大きな葉と白ご飯にいくつかおかずを取りだした

大きな葉を先にお地蔵様の元に置き
割り箸を割って、丁寧に添えていく

○ : あの..ここで誰か亡くなったんですか…

女 : ええ…丁度 1週間ほど前…
     
女 :  私の娘が台風の中大事なペンダントを無くした
        と言ってこのビーチに探しに行きました

それって…

女 : 私は必死に止めたんですけど…
       娘が言う事を聞かなくて

女 : そのまま飛び出していったまま…
       戻ってはきたのですが…

女 : そのまま帰らぬ人に…

女性は泣きながらも○○に全てを語った

その娘がこの海が大好きでよく親友と遊んでいた事

台風が来る前日、親友の送別会もこのビーチで開き
その翌日、親友の為にプレゼントした大切なストラップを初日に無くしたこと

慌てた娘はビーチにあると確信して暴風雨で波が荒くなってる中、家を飛び出してここに探しにきたこと

それっきり娘が帰らなくて、異変を感じた母親は
消防に通報して、雨足が収まった夜から翌日にかけて大捜索をしたこと

夜が空けて翌日になると遥香は幸いにも
ここら辺の浅瀬に流れついていたらしい

心肺停止の状態で見つかり
病院に運び込まれ集中治療を受けるまでの
10分間 懸命に尽くしたが息を引き取ってしまった

その時に去り際に一言吐いたらしい
それが…

“ペンダント”


○○は今まで謎だった全てのパーツが
頭の中で組み合わさった気がした

その後もペンダントを探したが結局見つからなかった

○○はペンダントを見つけた事を少し懺悔した

しかし
大事な娘を亡くした母親の気持ちは心底悔しく
悲しくて測りしれないものだった...


そして、捜索初日に見つけた小さなお地蔵を女性は
いつかそのペンダントが見つかることを願い続けて
その日から1度も欠かさず毎日お参りに来ている

○ : もし良かったら…下のお名前だけでもお聞き
       したいのですが…

女 : 娘の名前は…”遥香”と言います

○ : (やっぱり…)

俺が見つけなかったらこの母親は遥香と会えたのかと考えたが、それを知る者は誰もいない

○○じゃないと…会えなかったかもしれない

○○は女性の肩にそっと手を添えてこう言った
「きっと遥香さんの元に届いてますよ」

————————-

○○はこの女性のご厚意で車で
空港まで送ってもらった

道中、○○はショルダーバッグからワイヤレスイヤホンを取り出して、もはやお気に入りまでに
定着したあの曲をかける

なんだか 寂しくない
むしろ 最高戻らない

不思議な体験をした1週間だったが
俺はこの思い出を生涯忘れることはないだろう

甘くて切なく決して叶うことのない想いだったが
それもまた○○の怠惰な生活を刺激してくれた

自由で気楽なおひとりさま天国

○○は助手席で隣で運転してくれている
女性に聞こえない小言で歌った

“It’s the single life”

—————————

○ : すいません本当に、ありがとうございました

女 : いえいえ
       私もあなたのお陰で前に進める勇気が
       湧いてきました

女 : こちらこそありがとうございました
       またいらしてください

女 : この島はあなたの事をいつでも歓迎すると
        思います

○ : ありがとうございました
       また来ます

○○は女性に手を振り搭乗口へと向かった

機内に乗り込み、台風の影響で運行できなかった
お詫びの品としてお茶と地元のお菓子を貰った

○○は窓側に座りお茶を飲んでいると…

? : すいません…お隣なんですけど…

○ : どうぞどうぞ

? : ありがとうございますニコッ

両手で覆えるくらいとても顔が小さくて
笑顔が眩しい女性だった…

遥香のように…

女性は隣に座り、荷物から小物を取り出していた
窓から反射された光がチラチラと女性の首元を照らしていた

○○は気になって首元を見ると…

○ : そのペンダント…

? : え?
       あぁ..これですか?

? : これは…私の親友が作ってくれて
       送別会の時にプレゼントしてれたんです

? : 私の名前にちなんでさくらの形をした星砂を
       ペンダントにしてくれたんですけど…

? : 翌日に台風のせいで亡くなっちゃって…

? : けど、彼女は私の親友に変わりないですし
       これも私の一生の宝物ですニコッ

彼女の笑顔はどこか遥香に似ていて
笑顔が素敵な女性だった

この時点で遥香の親友のさくらさんだと
言うことがわかった


さ : あ..ごめんなさい長々と…

○ : いえいえ..きっとその親友も
       さくらさんの事、大切な親友だと思ってますよ

さ : エヘヘ でもなんで私の名前わかったんですか?

○ : だって今..さくらのペンダントにちなんで
       作ったって聞いてたのでw

さくらはそうだったと頭をポンっと叩いた

○ : 送別会ってことは就職とかですか?

さ : いえ…大学院に進学するために東京に
       行くんです

○ : そうなんですね
       どこの大学ですか?

さ : 乃木坂大学です

○ : え!?一緒!!
       俺も同じ大学院なんだ!

さ : 本当ですか!?

○ : あ..すいません馴れ馴れしい口で話しちゃって…

さ : いえいえ..歳も同じってことがわかったので
       是非タメ口で話しませんか?

○ : さくらさんが良ければ…

さ : 私は全然大丈夫!

さ : やった〜早速友達できちゃった

さ : あ..お名前…教えてほしいな…

○ : △△ ○○です
       よろしくね

さ : ○○さん…良い名前ですねニコッ

やはりさくらさんの笑顔は亡き親友に似ていて
俺の亡き…”特別な人”と似ていた

タメ口で話すと仲が深まるスピードが速くなる

○○は心の中で感謝した
「ありがとう..遥香」

そして2人を乗せた飛行機は空高く
未来へと飛び立った

———————
半年後…お盆休み

さ : 着いたー!!

○ : テンション高いね

さ : 当たり前じゃん
       大好きな地元に大好きな人と来れたからね///


○ : ありがとよw

あれからさくらと一緒にキャンパスライフを
送っていた○○達は気づいたらプライベートも
一緒に過ごしていたのでそのまま付き合った

○ : まずどこに行くの?

さ : “あの”ビーチに行きたい

○ : 俺もそう思ってた

○○達はレンタカーを借りて
それぞれの想い出が詰まったあのビーチに向かった

ビーチに着くと半年前と何ら変わらず
太陽に照らされ透き通った海が広がっていた

さ : ○○が話してくれたお地蔵様ってどこ?

○ : あっちだよ…

○○はさくらの手を取りお地蔵様の元まで向かう

さ : このお地蔵様が○○とかっきーだけじゃなく
       私達を引き合わせたのかな?

○ : それはわかんないけどね

さ : さくはそう思うけどな〜

○○はさくらと付き合った時
さくらと出会う前にここで体験した全てを
彼女に打ち明けた

最初は絶対疑われると思ったが
すぐに信じてくれた

なぜなら…さくら曰くこのペンダントについて
出会ってすぐに知っていたこと

心が汚れてる人はこのペンダントを見つけることができない..らしい

さくらと○○はお地蔵様に正対する

さ : かっきー…元気にしてた?

さ : 私ね向こうで何とかやれてるよ
       それにね…

さくらは○○と握っている手をお地蔵様に自慢するように見せた

さ : ○○とも出会えて今はとっても幸せです
       ありがとう!

さくらの素直な気持ちに○○は内心照れていた

○ : あ..そう言えば…お土産は?

さ : あ…

さ : ごめん..車の中に忘れてきた…

○○達はお地蔵様にお供えするための
お土産を買っていた
      

○ : 俺取りに行こっか?

さ : うぅん!私取ってくる!!
       ここで待ってて〜

○○の手を離し、さくらはお土産を取りに
車の方に戻った

○○はお地蔵様に正対をし問いかける

あの不思議な体験は…

ペンダントを見つけるため
遥香の未練から始まったものか

それともお地蔵様を綺麗にしたので
その恩返しから始まった

“天国から○○へのご褒美だった”

かもしれない…

岩壁に激しく打ち付ける波音が○○の答えに対し返答している気がした

○○は「ありがとう」と返して
しばらくお地蔵様を見つめていた

1人で過ごすのも良いけど..愛する人と2人で過ごす
生活も嫌いじゃない…

だって…

「お待たせ」と声が聞こえ振り返ると


そこにいたのは…

初めて会った時を思い出させる
○○の心を射止めた笑顔が眩しい”彼女”の姿だった


                                                                          FIN



後書き

おひとりさま天国いかがでしたか?

実はこの作品を書くのに丸一日はかかりました笑

夏休み限定で週一で投稿ということで
書いてたんですけど…

正直今まで妄ツイ書いてて1番モチベがありました笑

書いてて不思議な感覚でした

個人的に今まで書いた妄ツイの中で
自分で言うのも何ですが傑作だと思うのですが…
読者の皆様はどう思いましたか?

良かったら感想を引用して
書いてくださると喜びます笑

沢山の人にこの作品を見てもらいたいので…

これからもやんちゃるさくちゃんを
よろしくお願いします🙇‍♀️🙇‍♀️



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