![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113122267/rectangle_large_type_2_0334474f76e7b3a00aebfdb24e163ed0.jpeg?width=800)
レディーファースト 第27話
○ : 先輩って…
“遠藤家の裏切り者だったんですか?”
遥 : え…今なんて…
思いがけない一言に頭が真っ白になってしまった
○ : それとも..僕が必要なかっただけですか?
遥 : それは違う!!
この状況が整理出来ない遥香だったが
その一言だけは違う…
遥香は怒鳴るように力強く否定した
○ : さっき突然ですけど茉央ちゃんが
遊びに来て…
————————-
皆んなが帰ってから数分すると
ドアからコンコンとノックが鳴り開けてみると…
○ : 茉央ちゃん?
茉 : やっほ♪
遊びにきたよ
○ : まぁ、汚いところだけど
ゆっくりしてって
茉 : ありがとう〜
玄関に入るなりすぐにリビングへと向かう
そして部屋の片隅にある写真縦に手を取る
茉 : ○○君…
○ : ん?
茉 : 今日はね..ちょっと伝えたい事があってきたの…
○ : 伝えたいこと?
どうしたの?
茉 : この写真さ…○○君と△△さんと…
3人の女性が写ってるよね?
○ : うん..それがどうしたの?
茉 : この3人さ…遠藤君のお姉さんだよ
○ : え?僕にお姉さんなんていたんだ…
茉 : 知らないのも無理ないよ
茉 : 私もさ..△△さんから聞いたからね
○○は茉央が言ってる事が本当かわからず
半信半疑で聞いていた
○ : おじいちゃんが…
茉 : でね…ここからが本題なんだけどさ…
○ : うん…
茉 : この3人のお姉さんはね…
茉 : 今..乃木坂高校の2年生にいる
トップの遠藤3姉妹だよ
○ : え?
○○は茉央が言ってる事が理解できなかった
○ : いや..そんなわけない…
冗談ですよねハハハ
茉 : 冗談じゃないよ
真剣に話す茉央の表情に○○は恐怖心を抱く
茉 : ○○君も薄々気づいてたんじゃないの?
茉 : 私はお金持ちでそれなりの身分があるの
わかるよね?
茉 : 五百城って苗字..今まで見たことある?
○ : ないです…
茉 : 身分が高い人の苗字はね
同等か私より高い人しか持ってないの
茉 : つまり..何が言いたいかって言うとね
茉 : 遠藤って苗字…
あの3人しか見たことないでしょ?
○ : うん…でも僕は貧乏で…
茉 : ○○君さ…高校に入ってあの3人と
どっかで出会ったりしてない?
茉央の言葉に思い当たる節がいくつかあった…
○ : 会ったことあるよ…
茉 : どこで?
○ : おじいちゃんのお墓で…
茉 : もうこれでわかったでしょ?
茉 : おじいちゃんの名前…遠藤△△
遠藤○○…遠藤遥香..遠藤さくら..遠藤あやめ…
○ : じゃあ何で僕は貧乏なんだよ!!
あの先輩達と姉妹なら…僕は今こんな所に!!
すると…茉央は涙を流し始める
○○は泣いてる理由がわからず
呆然としていた
茉 : ○○君はね..捨てられたの…
○ : すて..られ..た?
茉 : レディーファーストであるこの世界に
男性の需要はほぼないの…
茉 : それを小さい頃から知っていた遥香先輩達は
需要のない君を捨てたんだよ
突然明かされた信憑性のない情報
けれど…苗字が同じ、おじいちゃんのお墓参りで
会ったこと
そのお墓で話していた一言
おじいちゃんに用があると言ってたこと
過去の記憶を掘り返せば、掘り返すほど
茉央の言っている事があってる気がした
もうどこから理解すればいいかわからなかった…
茉 : そして、捨てた君をおじいちゃんは助けたの
茉 : 男1人で○○君を育てたの…
衝撃の事実に戸惑いや怒りの感情が混じり
どうすればいいかわからない…
○ : これから…僕はどうしたらいいの?
茉 : 大丈夫だよ…
○ : え?
茉 : 私が君のそばにいるからニコッ
○ : こんな自分といてメリットなんかないよ
茉 : ○○君はとっても良い人だよ
料理も家事もできてカッコいいし
茉 : それに…誰とでも優しく接してくれて
誰にでも大切に思いやれる気持ち
茉 : こんな良い人はいないよ…
茉 : そんな○○君を私は大好きなの
だから…私と付き合お
茉央は○○の元に歩み寄りそっと手を握る
茉 : 大丈夫…何があっても私が○○君を守る
私は身分が高い…
私なら君を周りの”ゴミ”から守れる
○○は黙ったまま俯いていた
茉 : 悩む必要なんかないよ
私と付き合って一緒に住めば幸せ安泰
茉 : お金にも生活にも困らない
茉 : ○○君…君が断る理由は…どこにもないはず
茉 : (△△さん…これでやっと○○君を守れます
絶対に幸せに…)
しかし○○が返した答えは…
○ : 僕は…茉央ちゃんの事
とっても良い人だと思う
茉 : ありがとニコッ
○ : けど..今返事することはできないよ…
茉 : !?
茉 : どうして!?
○ : 頭が整理出来てなくて、正直パニックなんだ
○ : だから…一旦落ち着いてから返事をしたい
茉 : …
(なんで…○○君にメリットしかないのに…)
茉 : 確かに…正直ショックだよね…
茉 : わかったよ..返事はまた今度でいいから
いつでも待ってる
○ : ありがとう…
茉 : うん!
気持ちが固まったら何時でも連絡してねニコッ
![](https://assets.st-note.com/img/1691828963024-hl4m16Kzx8.png?width=800)
○ : うん…今日はありがとう…
茉 : またね…大好きだよニコッ
バイバイ
満面の笑みで○○に返事をし
出ていった
🚪ガチャ
人の気配がして階段の方をみると…
茉 : 川崎桜…
ちょうど買い物を済ませた後だったのだろう
片手には袋いっぱいの食材が入っていた
桜 : ○○と何してたの?
茉 : 知らなーい
一言吐いて、そのまま階段を降りていった…
———————
物心つく前から○○はおじいちゃんと二人で暮らしていた
別に生活にも困っていなかった
お金もおじいちゃんがいる時は余裕があった
今も何とかやれている
けど..幼稚園から何か違和感があった
何で自分に両親がいないのに
周りのみんなはいるんだろう
どうして帰ってからも一人で
過ごす事が多かったんだろう
おじいちゃんは仕事で忙しかったんだと
幼い自分に言い聞かせてた
これが普通なんだと思ってた
だから、○○は少し寂しかったけど
ずっと我慢していた
幼稚園を卒園すると
小学校の入学式も卒業式も中学校の入学式も
おじいちゃんが祝ってくれた
だから寂しくなかった…
けど、中学を卒業した時
僕の周りには…誰もいなかった…
この時、感じた寂しさは今になっても
拭われなかった
高校もどうせ一人で過ごすだろう…
そう思ってた矢先
僕の周りには可愛い友達もできて
面倒を見てくれる先輩もできた
幼稚園から友達と言える人はいなかったから
高校に入って、新しい刺激が僕の学校生活を毎日楽しくしてくれた
けど..それも自分を利用するためだったのかな…
茉央ちゃんが言ってくれて改めてわかった事がある
僕は男だ。
ここはレディーファースト
男に人権なんかほぼない
親に捨てられた…男だから
だから…だから…これも結局
適当に利用して好きなタイミングで捨てるんだろうか…
遠藤家だからなんだ…
男性である以上、結局根本的な問題は何も解決してないじゃないか…
女性の方が身分が高いから
苗字が良くても、捨てられた自分は
そこら辺に転がっている男と何ら変わりはない
咲月ちゃんも…和ちゃんも…美空ちゃんも…彩ちゃんも…2年の先輩も..3年の先輩も…遠藤家の3人..いや..
”お姉ちゃん”と言える存在も
結局みんな適当に利用して…
あとは捨てるだけなのかもしれない
そう思ってしまい…
頭の中に詰まっている白黒だった
自分を染めてくれた思い出が…
全部真っ黒に塗りつぶされていく感じがした
茉央が帰った後…
1人になった○○は誰もいない虚しさと
“本当に1人ぼっちになった寂しさ”が押し寄せ
理性が吹き飛ぶほど号泣した
よっぽど泣き声が大きかったのか…
ガチャン!と扉が開いて
慌てて桜が○○の元へ駆け寄った
———————-
和 : 酷い…酷すぎる…
美 : ○○君は一人じゃないよ
今は私たちが…
“黙れ”
美 : え?
○ : もうわかったんだよ
○ : 遠藤家の裏切り者だろうが
裏切り者じゃなくてもいい
○ : もうそんなことはどうでもいい
遥 : 違う..違う…違う!!!
それは全て五百城さんが作った作り話だよ!!
○ : そっか…作り話なんだ…
けど..それも嘘か本当かも分からないし
“もうどうでもいい”
軽いパニック状態に陥っていた○○は
自分を制御できていなかった
遥香達から見ても一目瞭然だった
誰にでも優しく、大切に想いやれる気持ち
いや..これが本当の○○なのかもしれない
男だから..猫を被って、良い人を演じてたのかもしれない
そう疑ってしまう程に、今の○○は別人だった
○ : ここは貧乏人が住むところだ
身分の高い皆様は出ていってくれ…
和 : 身分なんか関係ない!
美 : そ..そうだよ…
桜 : 私達は○○の味方d…
○ : 出ていけ…
桜 : え..○○…
To be continued
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?