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レディーファースト 第27話

○ : 先輩って…

           “遠藤家の裏切り者だったんですか?”

遥 : え…今なんて…

思いがけない一言に頭が真っ白になってしまった

○ : それとも..僕が必要なかっただけですか?

遥 : それは違う!!

この状況が整理出来ない遥香だったが
その一言だけは違う…
遥香は怒鳴るように力強く否定した

○ : さっき突然ですけど茉央ちゃんが
       遊びに来て…

————————-

皆んなが帰ってから数分すると
ドアからコンコンとノックが鳴り開けてみると…

○ : 茉央ちゃん?

茉 : やっほ♪
       遊びにきたよ

○ : まぁ、汚いところだけど
       ゆっくりしてって

茉 : ありがとう〜

玄関に入るなりすぐにリビングへと向かう

そして部屋の片隅にある写真縦に手を取る

茉 : ○○君…

○ : ん?

茉 : 今日はね..ちょっと伝えたい事があってきたの…

○ : 伝えたいこと?
       どうしたの?

茉 : この写真さ…○○君と△△さんと…
       3人の女性が写ってるよね?

○ : うん..それがどうしたの?

茉 : この3人さ…遠藤君のお姉さんだよ

○ : え?僕にお姉さんなんていたんだ…

茉 : 知らないのも無理ないよ

茉 : 私もさ..△△さんから聞いたからね

○○は茉央が言ってる事が本当かわからず
半信半疑で聞いていた

○ : おじいちゃんが…

茉 : でね…ここからが本題なんだけどさ…

○ : うん…

茉 : この3人のお姉さんはね…

茉 : 今..乃木坂高校の2年生にいる
       トップの遠藤3姉妹だよ

○ : え?

○○は茉央が言ってる事が理解できなかった

○ : いや..そんなわけない…
       冗談ですよねハハハ

茉 : 冗談じゃないよ

真剣に話す茉央の表情に○○は恐怖心を抱く

茉 : ○○君も薄々気づいてたんじゃないの?
       
茉 : 私はお金持ちでそれなりの身分があるの
       わかるよね?

茉 : 五百城って苗字..今まで見たことある?

○ : ないです…

茉 : 身分が高い人の苗字はね
       同等か私より高い人しか持ってないの

茉 : つまり..何が言いたいかって言うとね

茉 : 遠藤って苗字…
      あの3人しか見たことないでしょ?

○ : うん…でも僕は貧乏で…

茉 : ○○君さ…高校に入ってあの3人と
       どっかで出会ったりしてない?

茉央の言葉に思い当たる節がいくつかあった…

○ : 会ったことあるよ…
     
茉 : どこで?

○ : おじいちゃんのお墓で…

茉 : もうこれでわかったでしょ?

茉 : おじいちゃんの名前…遠藤△△
       遠藤○○…遠藤遥香..遠藤さくら..遠藤あやめ…

○ : じゃあ何で僕は貧乏なんだよ!!
       あの先輩達と姉妹なら…僕は今こんな所に!!

すると…茉央は涙を流し始める

○○は泣いてる理由がわからず
呆然としていた

茉 : ○○君はね..捨てられたの…

       
○ : すて..られ..た?

茉 : レディーファーストであるこの世界に
       男性の需要はほぼないの…

茉 : それを小さい頃から知っていた遥香先輩達は
       需要のない君を捨てたんだよ

突然明かされた信憑性のない情報

けれど…苗字が同じ、おじいちゃんのお墓参りで
会ったこと

そのお墓で話していた一言
おじいちゃんに用があると言ってたこと

過去の記憶を掘り返せば、掘り返すほど
茉央の言っている事があってる気がした

もうどこから理解すればいいかわからなかった…

茉 : そして、捨てた君をおじいちゃんは助けたの

茉 : 男1人で○○君を育てたの…

衝撃の事実に戸惑いや怒りの感情が混じり
どうすればいいかわからない…

○ : これから…僕はどうしたらいいの?

茉 : 大丈夫だよ…

○ : え?

茉 : 私が君のそばにいるからニコッ

○ : こんな自分といてメリットなんかないよ

茉 : ○○君はとっても良い人だよ
       料理も家事もできてカッコいいし

茉 : それに…誰とでも優しく接してくれて
       誰にでも大切に思いやれる気持ち

茉 : こんな良い人はいないよ…

茉 : そんな○○君を私は大好きなの
       だから…私と付き合お

茉央は○○の元に歩み寄りそっと手を握る

茉 : 大丈夫…何があっても私が○○君を守る
       私は身分が高い…

私なら君を周りの”ゴミ”から守れる

○○は黙ったまま俯いていた

茉 : 悩む必要なんかないよ
       私と付き合って一緒に住めば幸せ安泰

茉 : お金にも生活にも困らない

茉 : ○○君…君が断る理由は…どこにもないはず

茉 : (△△さん…これでやっと○○君を守れます
        絶対に幸せに…)

しかし○○が返した答えは…

○ : 僕は…茉央ちゃんの事
       とっても良い人だと思う

茉 : ありがとニコッ

○ : けど..今返事することはできないよ…

茉 : !?

茉 : どうして!?

○ : 頭が整理出来てなくて、正直パニックなんだ

○ : だから…一旦落ち着いてから返事をしたい

茉 : …
      (なんで…○○君にメリットしかないのに…)

茉 : 確かに…正直ショックだよね…

茉 : わかったよ..返事はまた今度でいいから
       いつでも待ってる

○ : ありがとう…

茉 : うん!
       気持ちが固まったら何時でも連絡してねニコッ


○ : うん…今日はありがとう…

茉 : またね…大好きだよニコッ
       バイバイ

満面の笑みで○○に返事をし
出ていった

🚪ガチャ

人の気配がして階段の方をみると…

茉 : 川崎桜…

ちょうど買い物を済ませた後だったのだろう
片手には袋いっぱいの食材が入っていた

桜 : ○○と何してたの?

茉 : 知らなーい
       
一言吐いて、そのまま階段を降りていった…

———————

物心つく前から○○はおじいちゃんと二人で暮らしていた

別に生活にも困っていなかった
お金もおじいちゃんがいる時は余裕があった
今も何とかやれている

けど..幼稚園から何か違和感があった

何で自分に両親がいないのに
周りのみんなはいるんだろう

どうして帰ってからも一人で
過ごす事が多かったんだろう

おじいちゃんは仕事で忙しかったんだと
幼い自分に言い聞かせてた

これが普通なんだと思ってた

だから、○○は少し寂しかったけど
ずっと我慢していた

幼稚園を卒園すると
小学校の入学式も卒業式も中学校の入学式も
おじいちゃんが祝ってくれた

だから寂しくなかった…

けど、中学を卒業した時
僕の周りには…誰もいなかった…

この時、感じた寂しさは今になっても
拭われなかった

高校もどうせ一人で過ごすだろう…

そう思ってた矢先
僕の周りには可愛い友達もできて
面倒を見てくれる先輩もできた

幼稚園から友達と言える人はいなかったから
高校に入って、新しい刺激が僕の学校生活を毎日楽しくしてくれた

けど..それも自分を利用するためだったのかな…

茉央ちゃんが言ってくれて改めてわかった事がある

僕は男だ。

ここはレディーファースト
男に人権なんかほぼない

親に捨てられた…男だから

だから…だから…これも結局
適当に利用して好きなタイミングで捨てるんだろうか…

遠藤家だからなんだ…
男性である以上、結局根本的な問題は何も解決してないじゃないか…

女性の方が身分が高いから
苗字が良くても、捨てられた自分は
そこら辺に転がっている男と何ら変わりはない


咲月ちゃんも…和ちゃんも…美空ちゃんも…彩ちゃんも…2年の先輩も..3年の先輩も…遠藤家の3人..いや..

”お姉ちゃん”と言える存在も

結局みんな適当に利用して…
あとは捨てるだけなのかもしれない

そう思ってしまい…

頭の中に詰まっている白黒だった
自分を染めてくれた思い出が…
全部真っ黒に塗りつぶされていく感じがした

茉央が帰った後…
1人になった○○は誰もいない虚しさと
“本当に1人ぼっちになった寂しさ”が押し寄せ
理性が吹き飛ぶほど号泣した

よっぽど泣き声が大きかったのか…

ガチャン!と扉が開いて

慌てて桜が○○の元へ駆け寄った

———————-

和 : 酷い…酷すぎる…

美 : ○○君は一人じゃないよ
       今は私たちが…

“黙れ”

美 : え?

○ : もうわかったんだよ

○ : 遠藤家の裏切り者だろうが 
       裏切り者じゃなくてもいい

○ : もうそんなことはどうでもいい

遥 : 違う..違う…違う!!!
       それは全て五百城さんが作った作り話だよ!!

○ : そっか…作り話なんだ…
       けど..それも嘘か本当かも分からないし

                       “もうどうでもいい”

軽いパニック状態に陥っていた○○は
自分を制御できていなかった

遥香達から見ても一目瞭然だった
誰にでも優しく、大切に想いやれる気持ち

いや..これが本当の○○なのかもしれない
男だから..猫を被って、良い人を演じてたのかもしれない

そう疑ってしまう程に、今の○○は別人だった

○ : ここは貧乏人が住むところだ
       身分の高い皆様は出ていってくれ…

和 : 身分なんか関係ない!

美 : そ..そうだよ…

桜 : 私達は○○の味方d…

○ : 出ていけ…

桜 : え..○○…

                                                     To  be continued 



 





       




       






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