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韓国といえば李博士(イ・パクサ)!ポンチャックディスコを探して

※この記事は2016年2月に渡韓した際のものです。たびのて( https://tabinote.jp/mailmag/ )というサイトのメールマガジンに寄稿したもので、当該のポンチャック・ディスコは閉店してしまっていることが確認済です。ただ、そういう店が2016年にはあった、といことを残したくてアップしました。

最も手軽に行ける海外といえば、なんといっても、お隣の国、韓国。羽田からソウルまでは約二時間半。食べ物もお酒も美味しいし、買い物だってたくさん出来る。夜遊びだって……と言いたいところですが、若者の集う最先端のクラブは 、昭和生まれのアラフォーには正直ちょっとつらい。なので、毎回、屋台でチヂミをツマミに朝までソジュ(焼酎)を飲んだくれるのが定番です。

しかし、渡韓も通算13回目となればいい加減、なにか新しい刺激も欲しいところ。女四人での旅行となる今回、もっと夜を楽しんで過ごす方法はないのか。そう思っていた矢先、以前、済州や仁川で乗った遊覧船の中で観たポンチャックパーティーのことを思い出しました。

こちらは、仁川国際空港のある永宗島と月尾島の間の海域を周遊する遊覧船。16000ウォン(約1500円)※2016年2月現在

通常、遊覧船といえば、景色を楽しむものだと思うのですが、済州や仁川の遊覧船はちょっと違います。船内では、出航する前から歌謡曲とテクノを混ぜたような、ポンチャックと呼ばれる韓国の大衆音楽が大音量でかかり、中高年の観光客たちが、踊り狂っているのです。

済州の遊覧船の中の様子。ペアルックスで決めた韓国のアジュンマ(オバサン)たちが楽しそうに盛り上がってます。
こっちは仁川の遊覧船。カーテンをすべて閉め切り、外の風景など、皆さま、まるで興味がない。

ポン・ジュノ監督作品の映画『母なる証明』にも、主人公の母が中年女性たちとともに、観光バスの中で踊り狂うシーンもあるように、韓国の中高年者はとにかくポンチャックで踊るのが大好き(ちなみに韓国人の友人に聞いたところ、観光バスの中で踊るのは危険だということで、現在では法律で禁止されているそうです)。
 
これだけポンチャックで踊る文化が根付いているのならば、船やバスの中だけではなく街中にもポンチャックで踊れる店があるはず! というわけで、今回の旅の目的のひとつは、「ポンチャックの流れる中高年向けナイトクラブを探す」ということになりました。
 
そうと決まったら、さっそくリサーチを。事前に韓国に住む友人(20代女子)にポンチャックナイトクラブがどこにあるのか知らないかを尋ねてみたところ、「ナイトクラブの早い時間には流れていそうだけど、具体的にどこって言われるとわからない。だって興味ないし」と心許ない返事が。まぁ、「今度、日本に行くんだけど、歌声喫茶ってどこにあるの?」と尋ねられてるのと同じことだと考えれば当然ですよね。

仕方なく独力でリサーチを重ねたところ、ポンチャックの第一人者でもあるイ・パクサが清凉里駅のシデコリアというナイトクラブで過去ライブを行っていたことを発見。このシデコリアは、きっとポンチャックの流れるナイトクラブに違いない!というわけで、“清凉里駅のシデコリア”という情報のみで、韓国へと向かうこととなりました。
 
ソウル到着初日。今回のホテルは梨泰院(イテウォン)です。米軍基地の近くに栄えた街なので、シャレたカフェやヒップなクラブなどがあることで有名ですが、意外と隠れてポンチャックナイトクラブがあったりしないものか。こういう時にはやっぱり地元の人に尋ねるのが一番だということで、裏路地にある食堂に入って聞いてみることに。

若者向けのコジャレた店の多い梨泰院ですが、一本裏手に入れば安いローカル食堂もあります。

店員はすべてアジュンマ、客はアジョシ(オジサン)ばかりで、まさにポンチャック世代ど真ん中。しかし、「この辺りにポンチャックの流れるナイトクラブはないですか?」と尋ねても「この辺にはないね。っていうか、もうそんな店はないんじゃない? 地方だったら残ってるかもしれないけど」とのつれない返事。がっくりとうなだれるわたしたちを慰めようと思ったのか、店にあったラジカセでポンチャックをかけてくれました。優しい。  

マッコリと豚キムチをいただきました。胡麻がアクセントになっていて、美味しかったです。

このまま、『シデコリア』を探しに清凉里駅まで向かうという手もありましたが、実はこの日、我々が乗ったのは、羽田発 6:20のコリアンエアー720便。前日、徹夜な上に飛行機の中から呑み続けていたので、この辺りで撃沈。捜索は翌日に持ち越すことにして、近所にあるチムジルバンでホテルのチェックイン時間まで仮眠を取る事にしました。

イテウォンランドは、東大門などに比べてれば、地元の人が多く来るので、価格帯は安いです。メモを取っていないのでうろ覚えですが、たしか入浴料が6、7000ウォン。垢すりは20000ウォンくらいだったと思います。

睡眠を取って酒を抜いたところで、初日の晩御飯はやっぱり焼肉しかない。というわけで、ソウルに来る度にほぼ定番となっている馬場洞(マジャンドン)畜産物市場にある焼肉横丁で食べることに。

馬場洞畜産物市場は、東大門からタクシーで10分から15分程度。アーケードの商店街のほとんどの店が精肉店です。

ピンク色の照明に照らされた肉塊にファイティングスピッツをかきたてられます。出来ることならお土産に持って帰りたい!!! 


奥が座敷になっていて、あがって食べられるお店も。ついつい入りたくなってしまいますが、目的地はもっと先にあります。

引きずり出したての臓物がそこらにあるので、ナイーブな人が注意が必要。写真はセンマイと白センマイとレバー。

アーケードを抜けたところにようやく発見。こちらが目的地の馬場洞の焼肉横丁です。たくさん店が並んでいますが、どこに入っても、メニューも味も値段もそう変わらない。外から見て混んでいる入れば間違いはありません。※2022年に火事があっていまは横丁は消滅し、ビルになっているそうです。

馬場洞の名物はレバ刺しとセンマイ刺し。しかもお通しなんで、無料なんです。さらにはお替りもし放題。フリーレバー!フリーセンマイ!

写真の肉は盛り合わせ600グラムで60000ウォン。キムチや味噌チゲ、ご飯などはレバ、センマイ刺しと同じく無料でついてきます。

隣の席に座っていた韓国人男性がワイルドにも、肉を焼かずにそのまま食べていたので思わず盗み見していたら「このまま食ってみろ」とばかりにトングで掴んだ生肉(焼く用のヤツです)を渡され、仕方なく生で食べました。それくらい新鮮ってことです。世の中は熟成肉ブームですが、捌きたてのフレッシュな肉もまた違った味わいで美味ですね。

飼い犬。

明日、無事にポンチャックのナイトクラブは見つかるのでしょうか。

ソウル二日目は南大門で、二日酔いにぴったりのサンゲタンとビールやマッコリにぴったりと合うタットリタンの朝食からスタートです。

丸鶏の中にもち米や漢方が入ったサンゲタン。トロトロです。
鶏肉とジャガイモの甘辛い炒め鍋、タットリタン。実母と韓国旅行した際にエスコートしたら韓国で食べたものの中で一番美味しかったという感想をいただきました。

まだ街中リサーチが諦めきれていない我々は、新設洞にあるソウル風物市場へと向かうことに。中高年者メインの市場なので、ポンチャックナイトクラブの情報を持っている人がいるはず!!!

ソウル風物市場( http://www.seoulfolkfleamarket.com/ )は、以前は東大門運動場の駐車場の一角にあった東大門風物市場が、2008年4月末に移転したもの。特徴としては中古のリサイクル品や骨董品が数多く売られてること。

大量のカーナビ類。売れるんでしょうか。

広いスペースに所狭しと古着、古本、ビデオ、レコード、骨董品などの店が並んでいます。ちなみにわたしは地獄の黙示録の韓国語版ポスターを10000ウォンでゲットしました。

『チング~愛と友情の絆』のあの服!

また、二階は古いレコードが飾られているスペースがあったり、50年代から70年代の昔の制服が展示されていて、無料で試着して撮影することも出来ます。韓国映画でよく見る、『教練服』と呼ばれる白地に黒で柄の入ったものも着ることも出来ました。

ポンチャックのCDを売っている店も数軒あったので、友人が「こういうのがかかっているディスコはあるか」と尋ねましたが、やはり「知らない」という返事が……。やはり清涼里(チョンニャンニ)に実際に行って探すしかないようです。 

様々なギミックが搭載されているらしき三輪バイク。おそらく非売品。

しかし、清涼里は女性にとっては少し歩きにくい街です。というのも、駅前から歩いて3分もしない辺りから風俗街が広がっている上に、それがいわゆる飾り窓スタイル。ピンク色のライトに照らされたショーウィンドーに並ぶ女性たちの前を通るのは、同じ女として非常に気まずい。しかし我々の持っている手がかりは“清涼里のシネコリア”しかありません。しかし、街中で情報を得られなかったからには、とにもかくにも清涼里まで行ってみることに。

というわけで電車で清涼里へと向かいました。幸いなことにも到着したのが夕方の16時くらいだったせいか、まだ女のコたちが出勤する前のちょんの間街を通り抜け、コンビニでトイレを借りてコーヒ―を買い、たまたま目の前にいた20代後半くらいの男性二人組に「Do you know night club シネコリア?」とあまり期待せずに尋ねてみました。すると、なんと、予想外にも返ってきたのは「そこを曲がって左手にあるよ」という言葉。マジか!!!
まさかこんなに簡単に見つかるとは思っていなかったために若干、拍子抜けしながら言われた通りに向かってみると、発見しました。

まだ16時くらいだというのに、次々にシニアの方々が入っていきます。

ハングルが読めないのでなんとも言えないのですが、ポンチャックの歌手の方々の公演ポスターでしょうか。ちなみに入場料は1000ウォン(約90円※2016年2月現在)。お安いですね。

入口で1000ウォン払って入ろうとしたところ、受付のお兄さんに「君たち、間違ってますよ、ここはクラブじゃない」と注意されました。「ポンチャックを聞きに来た」というと怪訝な顔をされました。アラフォーといえども、周りと比べればかなり若輩者感がハンパない。

フロアはかなり広く、スタンディングスペースだけでも、200人くらいは入りそうです。右手にには4人掛けるのソファ席が20卓ほど。座った場合は三千円(ビール二本と乾きものがついてくるシステム)かかるそうです。ちなみにシステムを説明しに来た黒服にも「君たち、間違ってますよ、ここはクラブじゃない」と注意を受けたので「ポンチャックを聞きに来た」と再度言うと、再び怪訝な顔をされました。

船内のポンチャックパーティーと違い、この店はソシアルダンスの色合いが濃く、基本的に男女がペアになって踊っています。

そのうちライブスタート。曲と曲のつなぎ目がなく、ノンストップで続くのがポンチャックの特徴です。


ソファに座ったお尻に根が生えているようなわたしたちに見かねたのか、優しい殿方がダンスに誘ってくれました。なぜか脳天に手を置かれ、それを中心にしてくるくると回れと指導されました。
 
 
というわけで、たっぷり1時間半ほど踊って飲んで楽しませていただきました。フロアは始終、大盛り上がり。ソファに座らなければたった1000ウォンで楽しめるってすごいですよね。羨ましいです。こういう遊技場が日本にもあれば、年を取るのも怖くないのに! 

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