集合と論理(1)――集合とは

数学において「集合」とはなにか,と言うと「数の集まり」のことを指します.ただまぁ,いちおう「数学」ですので,なんか適当に集めてきた数字と言うわけではなく,何らかの数学的に興味関心を示されるものとされることが一般的なわけです.

集合の定義

もう少し厳密にお話をしましょう.数学と言うのは厳密であることが何より重要ですから,いい加減なままではいけません.その辺も数学の融通の利かなさを象徴していますが,そもそも数学はゆるふわでは困るのです.「なーんかこの関数キモいから極限-∞~」とかいう数学,面白いかも知れませんが合意形成が得られませんよね.
と言うことで,数学として「集合」を厳密に「定義」します.「定義する」とは,「◯◯はこういうことだよ」「これに反するものは◯◯じゃないよ」と言うルールを決めるわけです.何しろルールなので,「なんで?」と言う質問は無意味です.なぜなら「そう決めたから」です.単純明快でしょ?

定義1.1(集合) ある条件を満たす,すべての数のまとまりを集合(Set)と呼ぶ.
定義1.2(元) 集合を構成する要素一つのことを元(げん)と呼ぶ.

高校数学では元のことをなぜか「要素」と教えています.まぁ要素と言えば要素なのですが,日本の中等教育内の方言のようなものです.元のほうが簡単で良いと思うんですがね.画数少ないですし.まぁ,学校の先生の中には教科書内容に沿わないことを答案に書くとバツにするような,数学嫌いや学校嫌いを量産する馬鹿先生もいますので,注意してください.私は塾でも普通に元で教えています.
さて,定義1.1と1.2で決められたことから,元は集合に与えられた条件を満たしている数である,と考えることができます.たとえばある集合……まぁ$${A}$$とでもしておきましょうか.この$${A}$$に与えられた条件は「偶数であること」だとします.偶数って覚えてますか? 2で割って余りが出ない数のことですね.と言うことは,2,4,6,……と言った数は$${A}$$に含まれますが,1,3,5,……と言った数,つまり奇数は$${A}$$に含まれませんね.$${A}$$に含まれる数は$${A}$$の「元」ですから,2,4,6,……は$${A}$$の元であり,1,3,5,……は$${A}$$の元ではありません.これを数式の上で$${A}$$を定義しようとすると,

$$
A = \{2,4,6,…\}
$$

のように,構成する元を羅列して書く方法(この場合の … は「この先続いて行くよ!」って意味です)と,

$$
A = \{ x \in \R | x \equiv 0 \pmod 2\}
$$

のように,$${x}$$が元として満たさなければいけない条件を右側に書いて,全部を羅列しない表記法があります.式の意味は今のところ気にしなくて大丈夫ですけど,シンプルに言えば「2で割り切れる実数だけ$${A}$$の元と認める」と言っているだけです.あ,でも$${\in}$$とか$${\R}$$とかは割とすぐ出てくるので,いちおう気にしておいてください.

さて,先に示した「全部を羅列する方法」のことを「外延的表記」と言います.あまり普段使わない言葉なので面食らっちゃうかな? でも「外」に「延びて」行く書き方と考えれば,元を羅列する書き方と見られなくもないですよね.
これに対して,なんか難しそうな数式で書いてあるほうは「内包的表記」と言います.「内」に「包む」ので,ちょうど外延と逆ですね.外延的って言うのが,例えば中華の点心の皮になる部分を,めん棒で外に向かって延ばしたり,内に肉まんや小籠包の餡を入れて包み込む,と考えるとちょうど対称的になるかな?

そもそも偶数なんて無限にあるわけですから,そのすべてを$${x}$$に代表してもらって,$${x}$$が満たすべき条件だけ与えてあげれば,外延的表記と内包的表記は同じ集合を表すことになるのです.

ひとまずこれで集合の基本的な定義と,実際に「集合を定義する」ための表記法について勉強しました.次回はある集合とある集合の関係性について,考えていきたいと思います.まだしばらく,問題は出ませんよ.


いいなと思ったら応援しよう!