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私と本。好きになるきっかけ

 幼少期から本が好きでした。
 私が通っていた小学校では『図書館の本を読んだ数だけイラスト内の数字に色を塗り、読書記録を付ける』という紙が存在し、私は一面を埋めたくて無我夢中で本を読んだ。
 その紙が規定毎数を超えると表彰して貰え、私はそれが目当てだったのかもしれません。
 読書を始めるきっかけはきっとこれ。沢山読んで沢山記録する、それがとても楽しかったのです。
 こう書くと『読むこと』よりも『記録すること』に重点を置いているように感じますね。
 しかし本を読むことが楽しかったから続けられたんだと思います。
 一枚に何冊分記録できるのか、規定毎数が何枚だったのかはすっかり忘れてしまったけれど、何度か表彰されたことは覚えています。それがとてもとても嬉しかった記憶と、達成感と満足感が私の読書好きを加速させたのかもしれない、と今では思います。
 読書好きになった理由はもう一つあり、母が本がとても好きな人だったことが関係しています。
 書籍にはお金を惜しまなくていい、いくらでも買っていいと言う、或る意味大胆で偏った考えを持っていたのです。その言葉が散財する免罪符にもなっていました。
 玩具を買うのには渋る母が、書籍であれば例え漫画でも文句を言わずに買ってくれたのです。玩具を手に入れるためにはそれなりに交渉が必要だったのに対し、財布の紐を直ぐに緩めてくれる本は強請り易かった。
 読書記録のこともあり、小説は小学校の図書館を利用し、漫画は買って貰って読むという日々を過ごしていました。漫画は勿論少女漫画で、毎月発売日前日には店頭に並ぶ近所の商店――コンビニと言う程大きくはなく、近所のおばちゃんが運営していた小さなお店――に帰宅後に買いに走ったものです。
 その商店は今はもう閉店してしまっています。いつ、どのような理由で閉店したのかは判りません。気が付いたら建築会社になっていました。それも恐らく十数年前の出来事で、その商店に通わなくなったのがいつなのかも覚えていないのだから、私の思い出に対する執着の希薄さには我ながら呆れてしまいます。
 きっと、自転車で遠くに行くことが可能になった中学生時代には既に商店には通っていなかったに違いありません。いや、中学生になってからは少女漫画から少年漫画へ鞍替えしていて、件の商店に買いに走っていたような気もします。しかも少年漫画は週刊誌だったから、通う頻度は明らかに多くなっていた筈です。
 あの頃は近所にコンビニや本屋さんはありませんでした。そうなんです。そもそもコンビニがあんなに沢山増えたのはここ数十年の間の話で、私が小中学生の時分にはまだそんなものはありませんでした。
 私が買っていた『週刊少年ジャンプ』は毎週月曜日発売です。件の商店には土曜日には店頭に並んでいました。そのため世間より少し早く最新話を読むことが出来ていました。
 振り返ってみると、あの商店には随分お世話になっていたんですね。有り難いことです。
 それなのにいつしか通わなくなり、いつ閉店したのかも判らない。結局私の記憶力なんてその程度で、大変お世話になっていた筈の商店に対しての興味も皆無だったと言うことですね。薄情なやつです。
 私はこうして本と触れ合い、本が好きだと公言出来るようになりました。

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