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地獄のサバ番I-LANDから見るアイドルの行動要因

みなさん、I-LANDってご存じですか?そうです。2020年夏に放送されていたサバイバルオーディション番組(以下、サバ番)です。
「I-LANDは闇」「地獄のサバ番」等と言われているのは知ってたんですけど、まあ結果と照らしあわせて見れば大丈夫でしょう、といまさら軽い気持ちで手を出したんですけど。
マジでガチで地獄だった…なんなんだあの番組……。

一方で、大変面白いコンテンツでもあり(人間って汚いね、、、)、自らに「人間やめますか、I-LANDやめますか」と問いかけながら鑑賞を続け、寝ても覚めてもI-LAND、、みたいな毎日をしばらく送ってしまったので、気持ちの整理のために、I-LANDって、サバ番って何なんだろう、アイドルに求められる素質って何なんだろうと考えたことを残しておきたいと思います。

1.I-LANDとは?


上記と一部重なりますがまずはざくっとI-LANDの説明!
I-LANDは、BTSやTXTの所属するBigHitと韓国の音楽系放送局Mnetを傘下に持つCJが共催したサバ番です。MnetはProduce101やらGirls Planet999やらこれまでにたくさんサバ番を放送してきた放送局ですね。
目的は、BTSを発掘したパンPDのプロデュースするグローバルボーイズグループをつくること。参加者は23名、デビューメンバーは7名。つまり16名を落とす過程がI-LANDです。そしてこの番組で生まれたのが今をときめくモンスタールーキーENHYPENですね!

I-LANDのWiki、たぶん私みたいにI-LANDに狂ってしまった人が書いたんだろうなって感じで事細かにまとまっているので貼っておきますね。。ちなみにAbema TVで見れます。3話までは無料。4話以降は会員じゃないと見れないけどAbema TVは初回二週間無料(回し者?)


2.I-LANDの特徴


今はめちゃくちゃサバ番の多い時代ですが、サバ番ってだけでまあまあ地獄なのになんでI-LANDが「地獄のサバ番」と呼ばれるのかですが、I-LANDにはいくつか特徴があります。

①厳選された参加者


I-LANDの参加者は23名。例えばProduce101が名前の通り101名からスタートすることを考えると、相当少ないです。
人数が少ないとシンプルに番組に映る時間が長いので感情移入しやすいということもあるんだけど、やっぱり「番組に出演できている」時点である程度、PDに選ばれたメンバーだということが大きな特徴かと思います。

I-LAND参加メンバーはどこかしらの事務所で練習生をしてきた(あるいは自国のダンスチームで活動してきた)子ばかりで、たまたま受かったシンデレラボーイ!みたいな子はいないんですよね、、。だからみんなある程度歌えるし踊れる。PDが求めるものも多いし、本人たちにアイドルとしての自我(思い描く姿や自分の長所・短所の把握)がある。

②トレーナー不在


I-LAND、評価者はいるけどトレーナーはいません。番組冒頭で「ここではすべて君たちが決めます。決まっているのは時間と人数だけです」的なことが言われますが、参加者たちは、課題曲と期日だけを渡されて自分たちで練習をする。
誰が音頭を取るかとか、どのくらい練習するかとかは全部本人たちに委ねられます。
たぶんこれって①に書いたようにそれなりにみんな実力があるから可能&アイドルとしての自我を見たいんだろうな、、と思いました。また、先日BigHitがオーディション生を募集してた時の動画で、TXTのメンバーが「練習生の自主性に委ねられる事務所。やりたいことがあればサポートしてくれるし、練習も強制されない。自分でスケジュールを立てる」って話をしていたのを思い出して、ビッヒの育成方針ブレないな、、と思ったな。


③特殊なシステム


I-LANDが地獄たる理由のシステムですね、、。
普通のサバ番は、大体PDによる評価のみのもの(Nizi Project等)と視聴者投票による評価のもの(Produce101等)に分けられると思います。Nizi ProjectでJYPさんが「良しあしでなくコンセプトに合っているかどうかで評価する」って言ってた通り、PD評価の番組は最初からある程度グループの色が決まっている感じがするし、視聴者投票であれば必ずしも上手い子が選ばれるとは限らずどんなコンセプトになるかわからないのが魅力なのかなあ、と思います。

で、I-LANDですが、脱落の評価はPD評価と視聴者投票のミックス。その前段の評価は参加者投票で行われます。
I-LANDはPart1とPart2に分かれているのですが、前半のPart1では脱落者は出ません。ただし、「降格者」は出ます。そしてその降格者を決めるのは参加者投票。
I-LAND Part1は12名のI-Lander(要するに上手い人)と残り11名のGrounder(要するに降格者)に分かれていくつかのテストを行います。パフォーマンスに対してPDがつけるI-Landerの個人点の平均によって降格者の人数が決まり、それを誰にするかはI-Landerの投票で決めるシステム。だから、全体の点数=より良いチームにするために残さないといけないのは誰か、という観点で投票が行われます。何度も言うようにI-LANDにはトレーナーがいないので、ダンスの指導とかができる子、リーダーシップを取れる子とかは残りやすかったりする。一方でたぶん自分の脅威になる(キャラが被るとか)のは誰かみたいな視点も絶対入ってくる。これがI-LAND名物参加者投票、、、。

残酷で過激な方が面白いからみたいな話をいったん置いといて、なんでこんなことすんの?っていうのをあえて好意的にとらえるなら、ビッヒは徹底して、アイドルとしての自我と自主性を見たいんだな、と思いました。どんなチーム構成を頭に描いているか、受け身じゃなくて考えて行動しなさいよ、的な、、。いま見ているGirls Planetでも思いますが、やっぱりメインボーカルできる子がいないとだよね、とか、センター格の子だらけでもうまくいかないよね、とか、その辺のバランスをとるってことを意識させたいのかな~って。

でも、この参加者投票、よくも悪くも「脱落」はさせられないんですよね。Part1の最後に23人→12人に絞られますが、それも参加者投票(とPD評価)でGrounderへ脱落させられたメンバーへの視聴者投票で決まるし、Part2での脱落者はPDによる選択と視聴者投票で決まる。
だからこそ参加者投票が過激になっていくな~とも思いましたが、、。残ったメンバーが「絶対帰って来いよ」と泣きながら降格者見送った後に、Groundからの昇格者を笑顔で迎えて「脱落者出さないようにしような!」っていうの、仕方ないけど恐怖だったもん(脱落者がでなければ降格者は帰ってこれないので)、、。BTSくんが「練習生時代は宿舎の人が入れ替わりすぎて最初は泣いて見送ってたけどだんだん何も感じなくなった」と言ってたのとか思い出したな、、。人は環境に順応してしまう生き物、、。

3.アイドルのステークホルダー

そんな(?)地獄のサバ番、I-LANDですが、アイドルたちが気にすべきステークホルダーたちとの関係がよく表れたよくできた仕組みだな、、とも思いました。

①PD(事務所)


まずはPD、あるいは事務所。I-LANDでも脱落者2人を直接的にPDが選んだり、最終デビューメンバーの最後の1枠はPDピックだったりしましたが、結局アイドルの生死を一番握っているのってPDだよねっていう。
どんなにファンがついていても、PDに気に入られなかったり、コンセプトに合わないと判断されたらアイドルとしての活動はできないのだな、、ということを改めて感じるなどしました。

②メンバー


言うまでもなく参加者投票から感じたこと。どんなに実力があって、PDからもファンからも好かれていても、身近なメンバーからの信頼がなければ活動は立ち行かない、、。信頼の理由が実力があることとかファンが多いことだったりすることみたいなことはあるだろうけど、周りに嫌われてはいけないわけですね、。周りをよく見て、自分が求められていることをして、また自分を求めてくれるメンバーを選んでいかないといけないってワケ、、。
同時に、メンバーは「アイドルの生死」までは握っていない(参加者投票で脱落者はでない)ところまでリアルに作っているな~I-LAND、、と思いました、、。事務所に言われたから仲悪いけど一緒に活動するってたぶん全然あり得るじゃん?そんなグループが売れるかどうかは置いといて、、、。

③ファン


言うまでもなく、アイドルくんが活動するにはファンも必要、それが表れていたのが視聴者投票ですね。
最終デビューメンバーのほとんどは視聴者投票だったり、Part2進出者を決めるのも視聴者投票だったり、ファンの声に重きをおいた作り、、と見せかけて、、、という話は後述しますが、結局ファンは「アイドルの生死」を直接的には握れない気がする、、。I-LANDにもPDによって脱落した人がいる(視聴者投票では救えなかったメンバーがいる)のが象徴的かなあ。

④世間の目(好感度)


ファンと似て非なると思うのが、ファンまでいかないけど(ここで言えば投票までしないけど)という世間の目。サバ番では練習風景等も映るので、自分勝手な行動とかをすると好感度が下がる(逆もまた然り)。世間の目を気にした行動がメンバー評価やファンの評価にもつながるし、Part1時点では参加者投票のみで降格者を決めていました(視聴者投票はない)が、Part2やデビュー後の展開まで見据えて居れば、この「世間からどう見えるか」というのも参加者たちの大きな行動要因になっていたんじゃない?と思う。

ザクっと書いたけど、①~④の目を気にしつつ参加者たちは行動していて、かつそれぞれの要因同士も影響し合って(PDからの評価が高いからメンバーから求められる、とかね)なんだかぎすぎすしているのがI-LANDくんが地獄だった理由かなあ。
何度も言うように、I-LANDで決まっているのは基本的に「練習時間」のみ。そして、グループの点は個人点の平均、つまりベースは個人戦。自分の練習だけに時間を割けば、実力が向上してPDの評価やパフォーマンスから得られる視聴者票は取れるかもしれないけど、あまり自分勝手な行動をしているとメンバーからの信頼度や好感度が下がって票に響く。このバランスがめちゃくちゃ難しい~~!
例えば、FAKE LOVEやFlickerを披露したグループが顕著だったと思うけど、実力者が集まるとみんな個性が強いのでモメがちで案外実力は劣るグループ(I NEED UとかPart1のGroundとか)の方が雰囲気は良いように見えるんだけど、でも雰囲気の良さは決してPDからの点数には比例しない、、。ああ、リアルだ、、、とうめきながら見ていた。色んな目を気にしなきゃいけないのは確かだけどそれをしすぎて個人の練習時間が減るときっちり点数に反映されてしまう、、。

ここまで可視化・仕組み化されていなくても、活動しているアイドルくんや練習生たちも多かれ少なかれこういったステークホルダーの目線を気にしながら生きているんだなあと思ったな。大変だあ、、。改めてアイドルヨロブンありがとう、、、。

4.BigHitが求めるアイドルの素質


で、ビッヒ(ENHYPHENの所属は厳密にいえばビッヒじゃないけど面倒だからビッヒって書くね)がアイドルに求めているものって何?というのを考えました。
私が思ったのは主に二つ。「アイドルとしてのビジョンが明確で、それに行動・責任が伴っているか」「PDが描くコンセプトを消化できるか」

まず一つ目の「アイドルとしてのビジョンが明確で、それに行動・責任が伴っているか」は、トレーナー不在であることと、参加者投票から感じたこと。
何度も同じことを書いていて恐縮ですが、参加者投票は、やっぱり参加者たちのアイドル観、チームビルディングを評価すつ仕組みかと思います。
パフォーマンスに対するパンPDのコメントでとても多かったのが「自分の役割がよくわかっていた」とか「自分の役割が果たせていた」というコメント。どういうチームを作りたいか、作るべきかということをきちんと描いて、自分の役割を理解しそれをきちんと果たすということに重きを置いているのかしら、、と思いました。K-POPはメインボーカルとかメインダンサーみたいな役割が決まったグループがほとんどというのもあるのかも。
この辺、韓国に根付いた儒教の「らしくあることが美徳」というのも関係あるのかなあ、と想像します。(一方で、そこからの解放を説いて人気を博したのがBTSのLove Yourselfの概念では、、矛盾せん、、、?とも思う)
最終回直前に、順位が伸びないと悩むダニエルくんにソヌくんが「最初の投票で僕らは1位2位だったでしょう?なんでか考えた?その理由がわかれば自分がファンに何を見せるべきかわかるよ」と励ましていたのがとても印象的でしたが、やっぱりファンが何を求めているかを理解すべきという視点があってそれを実践できているから、最終発表のPD枠でソヌくんはデビューメンバーに選ばれたんですかね、、ちなみに私の推しはソヌくんですがダニエルくんも大好きでした、、、

また、描いたビジョン、理解した役割に対して行動・責任が伴っているか、ということも求めているからこそ、練習を強制しなかったり、「降格者を選ぶ」「自分の代わりに誰かが脱落する」という経験をさせているのかな、とも思いました。TXTもリーダー(スビンくん)を決める時、全員一週間ずつリーダーをやってみた上でメンバーとスタッフの投票で決めたそうだけど、誰が何をすべきか考えさせて選ばせるのもビッヒのブレない方針なんですね、たぶん。まあ正直番組面白くしたかっただけでしょうけど、、、。

2点目の「PDが描くコンセプトを消化できるか」。最初に、PD評価のサバ番はコンセプトに合うかを見ていて、視聴者投票のサバ番はメンバーに合わせてデビューグループのコンセプトを描く気がする的なことを書きましたが、I-LANDは視聴者投票もしているけどたぶん前者に近い。
そもそも参加者がそれなりに厳選されているということもあるけど、課題曲のコンセプトがあんまり多様じゃない気がした(&なんとなくデビュー後のENHYPENのコンセプトに近い)ことから感じました。

一番思ったのは、FAKE LOVEでキーの高さにタキくんがキーの高さに苦戦していたところ。(声変わりもあり高音がでないのに、すべてのパートのキーが高くて本当にかわいそうだった)
TXTもキーが高くて踊りながら歌うのが厳しい曲が多く、ときどきたたかれているイメージがあるのだけど、ビッヒにはあんまり「アイドルに合わせた曲を作る」という発想がない気がする笑。とにかく良い曲、良いコンセプトを作るのでアイドル側が練習で合わせなさいよ、という態度というか、、。なんか本当にアイドルに対しても顧客に対してもシーズ思考なんだよな、、、(悪口)

だから、たぶん視聴者投票取ってるけどあんまりオタクの声重視していないように感じました、、。編集も結構あからさまに残したい子、落としたい子わかる感じだったし笑、投票タイミングと順位変動を見るとまあそういう取り方したらその結果になるよ!って思ったので、、。サバ番における視聴者投票って程度の差こそあれ結局PDや番組の意図の投影先でしかないよねという思いになってしまったのですね、、。PD評価で落とせるタイミングやデビューメンバーの最後の一人がPD選定なあたりも、どうしても誘導しきれなかった投票結果を調整しているのかなあ、と感じてしまいました笑。

と思うとですよ、私はアイドルに自分の考えとか欲望とか投影してるつもりだったけど、もしかしたら私のアイドルを見ているときの感情の動きとか思いって、むしろPDの思いがアイドルを通してわたしakaオタクの声に投影されているのかもしれないな、、とか思って恐ろしくなりました。わたしの自我ってどこにあるんだろ~~どこまでもビッヒの犬~~パンPD怖~~~。

最後何の話?って感じになりましたが、I-LANDの感想(?)でした。まだ見てない方、マジで地獄なので必ずしもおすすめはしませんが、面白いよI-LAND!


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