見出し画像

【GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた】を読んで

ちょっと話題になっていたGitLabに学ぶ〜の本を読み終えたので、忘れないうちに印象に残ったことなどをここに書き留めておきたい。

書籍としてはGitLabハンドブックを元に、

  • どのような施策を行っているのか

  • どのように取り入れていけるか

という視点でリモート環境下での組織マネジメントについて詳細に書かれている。
リモート組織へ向けたものと思わせるようなタイトルですが、実際はどんな環境下であっても非常に参考になる内容でした。

理想的なリモート組織の実現とは

  • 優秀な人材の採用

    • 居住地の括りがなくなると採用できる人材の幅が広がり、質の面で妥協することがなくなる

  • 高い従業員エンゲージメントを獲得し、パフォーマンスを向上させる

    • 愛社精神がパフォーマンスを向上させる

よくカルチャーマッチで採用している企業がありますが、いまやグローバルスタンダードからは外れていて「カルチャーアド」というものを取り入れているらしい。
これにより新しい価値観や知見を取り入れ、よりよく改善することはできないかという視点を模索することで、カルチャーや強い組織を醸成していくことができる。

最近ではハイブリッドや出社に戻していく企業がとても増えているなと感じる中、書籍の中では真逆の指摘がされておりとても興味深かった。
リモートワークを補完的要素とすると2種類の仕事の進め方が混在することになり、情報格差やトラブルにつながるのだとか。
そうなるとリモートワーカーの孤立や不満などが発生しパフォーマンスも下がってしまう…

また、エンジニアなどには特に当てはまると感じたのが、「他人から見られている時にシンプルな作業は大幅に効率が上がるが、複雑な作業の効率は下がる」ということ。
知的労働の多いエンジニアがリモートワークを好むのは必然なのかもしれない。

逆にリモートワークを前提としていれば、居住地に関係なく優秀な人材を採用できるということにつながっていく。

GitLabハンドブックとは

GitLabではリモート責任者を任命しハンドブックを制定している。

その日本語版のハンドブックがこちら

これこそが世界最大のリモート組織が実践する徹底したドキュメント化であり、情報が一箇所に集約されることで暗黙のルールや例外を認めず、属人性や曖昧性を排除しているとのこと。
こうした誰でも活用できて、自由に学び、疑問を解消することができるシステムをつくっていくことは、とても骨の折れる作業だと思うけれど素晴らしい取り組みだと思う。
新しい人が入社しても、一通り目を通してもらうことで対応できるほか拡張性も高く、柔軟に変更していけるところはとてもメリットだと思う。

またこのハンドブックは誰でもマージリクエストを送り、編集することができる。

テンプレートなどもあるらしいので、実際に導入してみたいという気持ちがあれば最低限から始めることができそう。

リモートワークにおけるコミュニケーション

GitLabにはコミュニケーションガイドラインもあり、これも詳細にまとめられている。

世界最先端のリモート組織では「インフォーマルコミュニケーション」をとても重要な施策と位置付けていて、従業員のパフォーマンスを上げたりメンタルヘルスを避けるための重要な役割を担っている。
お堅い感じに聞こえるけれど、要は業務に関係ない雑談や交流も大事だよねという話が論理的に書かれていた。

また非同期コミュニケーションが前提となるため、チャットだけではなく会議の録画やドキュメントも最大限活用していく。

リモートワークだと何もしなければどうしてもコミュニケーションは希薄になっていくと思うので、意識すること、ルールを定め言語化してまとめておくことがどれほど大切かというのがよくわかる。

個人的に気になったことを抜粋していく

気になったことが多すぎて、このままでは超大作になってしまうので抜粋する形でいくつか紹介します。

  • 粘り強さとは新しいアイディアに対してオープンで貪欲であること
    決してこだわって自分の意見を曲げずに貫くことではなく、新しい視点なども柔軟に取り入れていけること

  • 検証を行い効果的でなかった場合でも「効果的でなかったことが判明する」という意義の学習である
    トーマス・エジソンの「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」という言葉に近しい
    これは多くの時間と労力を無駄にしないために最小単位で学習サイクルを回すことを大切にしている

  • すべての会議はプロポーザルのレビューであるべき
    事前に準備を行い、みんなが目を通し、会議ではレビューを行うように進める

  • すべては制作途中、いったんリリースしよう
    これはマークザッカーバーグの「Done is better than perfect.」という言葉に近しいのかな

  • 透明性はコラボレーションを促進させ、社外からの認知度を高める
    個人的に透明性が高いなと感じる企業には当事者意識を持った人が多いと感じる

  • 帰属バイアスと確証バイアス
    なんでも思い込みから始まるのはよくない

  • ローコンテクストコミュニケーションを意識する
    10歳の子にも正確に伝わるようなコミュニケーション

  • フィードバックではSBIモデルを活用する
    これは応用行動分析に近い気がしていて、ネガティブなフィードバックの前に日常的にポジティブなフィードバックがあることや関係性を構築しておくことが大事

  • マネージャーにはメンバーをつなぎ留める責任がある
    マネージャーがメンバーのパフォーマンスの問題に対処しきれない場合の対応なども書かれている

  • 休みを取らないこと=知的謙虚さに欠ける
    休みを取らないことで属人化の状態が続き組織の弱点となる

おわりに

やはり実際に手に取って読んでみていただきたい内容ばかりなので、気になった方はぜひハンドブックも含め目を通してみてほしい。
リモートだとあらゆるものをドキュメント化するのが大事なんだろうなぁというふわっとした考えはあったものの、ここまで具体例を用いながら解説されているものはとても貴重だと思う。
リモートだからできない、出社しないとできないは本当に言い訳なのかもしれないと感じたし、誰にとっても優しい非同期コミュニケーションを前提としておけば、育児や介護でフルに働けない人、新しく入社した人、長期休暇明けなどあらゆる状況に耐えうる組織にしていけるということなのかなと。

ここにはほとんど書いていないパフォーマンスを上げるための人事制度やマネージャーの役割などの話も出てくるので、誰にとっても現場で即生かせる学びがあるのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?