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劇想からまわりえっちゃん『チャンバラ茶番!―一生懸命えいえいおーー』の感想メモ


4月25日マチネ、北とぴあ・つつじホールで劇想からまわりえっちゃん『チャンバラ茶番ー一生懸命えいえいおー』を。
なにかとてもよく洗練されたごった煮というか無国籍料理を味わったような気分。これまでも何度か観た団体で、昔は熱量が勝ち滲みの多い舞台だったのが、公演を重ねるごとに洗練され、懐も広がったように思う。今回はそこからまた一段歩み出して、2時間ほどの上演時間をとおして俳優達が醸す推進力を感じたし、舞台を単調にしない様々にてんこ盛りに見せ場があって楽しむことも出来た。
誤解を恐れずにいえば、これまで先人達が培ってきたいろんな表現の力を上手く取り込んで自らの血や肉にしたお芝居だと思う。劇団新感線のようなキャラクターの設定や物語の運びにも思えたり、ワハハ本舗の名優を思い出すようなキャラクター設定があったり、歌舞伎の表現が上手く取り込まれ、ときにその決め事も踏襲されていたり。それらはオリジナルの劣化コピーということではなく、テイストを取り込みつつ、場面に冴え、溶け込むように咀嚼されて、この舞台の血肉となり作り手が表現したい世界として取り込まれていく。歌舞伎から取り込んだものとして隈取りはもちろん集合写真などもどこか新しい形の見栄に思えるし、さすがにツケまではないものの柝もうまく使われ、俳優たちの腰の入り方や切れがしっかりと観る側の目をとらえてくれる。突飛さがすべることも、物語の段取りが手垢にまみれた感じに陥ることもなく、舞台は熱を蓄え次第にグルーブ感を増していく。

細かい粗さや隙がまったくないといえば嘘になるけれど、ここ一番でさらに欲しい洗練や斬新さもあるけど、それも含めて劇団というか作り手の今の舞台の味わいにも思えるし、少なくともそれは観る側を飽きさせない。劇団員の見せ場もあるし、客演陣の力もうまく舞台の膨らみや支えになっていて、なにより滞りも息切れもなく、疾走感を加えながら最後まで観客を連れていく力がちゃんと舞台に生まれていた。

今回は以前の公演に比べても舞台や客席の空間が十分に与えられていて、それが劇団としての表現の伸びしろになっているようにも思えた。たとえ容易ではないにしても更なる進化の期待がある団体っていうのは観ていても楽しい。そりゃね、観ている方はお気楽極楽でそう思ってもやっている方はさらに身を削っての精進なのだろうけれど、あの新感線だって東京に来た頃は新宿トップスで、カオスのような、訳もわからず、でもどこを切ってもおもしろいことを企ててそこから一気に進化していったわけで、同じように彼らのここからの一歩ずつの歩幅も素敵に観る側の期待を超えてくれるかもしれないと思ったりも。
今回のように、様々な良き力も取り込みながら、たとえばコロナの後にどう歩み出すのか。次を観たい気持ちにさせてくれる舞台だった。
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劇想からまわりえっちゃん
『チャンバラ茶番!一生懸命えいえいおー』
2021/04/23 (金) ~ 2021/04/25 (日)
@北とぴあ つつじホール(東京都)
脚本 演出:
青沼リョウスケ
出演:
青沼リョウスケ、福冨宝、岸本武享、
ムトコウヨウ、中村猿人、玉一祐樹美、
林廉、佐野晋平、百々ともこ
(以上、劇想からまわりえっちゃん)
窪田美沙
土屋シオン
石澤希代子
アズサ(SRF)
佐藤新太(第27班)
杉本惠祐(ドキュメンツ)
青木真美
梶川七海
佐々木タケシ
佐藤美輝
平林和樹
南大空
北原葵(露と枕)
小林桃香(露と枕)

荒谷清水(南河内万歳一座

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