「BOY・MEETS・PEOPLE」3話
近々合同で中学の交流会があるらしく、みんなも浮かれ気味だ。
相手校の生徒会長と副会長が来るらしい。
下見は人込みを避けるために、椿と上の階で野次馬たちを眺めることにした。
生徒会長はすらりとした黒髪のイケメンで、男女ともなく目を引いてしまう。
隣の副会長もそれに負けず美人で、下ろした髪に手前だけ三つ編みをしている。
「来たのは二人みたいですね」
「椿…先輩?!」
隣の椿が涙を流していたのだ。
「あれは、但馬守殿」
「但馬守殿って……」
かつて、椿姫が生きていた時代に恋人だった男。そして、裏切られたと思い自分を殺そうとしてきた男。
「姿形が変わろうとも、私にはわかるの」
生まれ変われて良かったと相手を思いやって呟く椿姫に、どうにかして生徒会長に椿姫のことを伝えたい下見。
交流会準備中にやっとのことで下見が生徒会長の藤村に近づくと、彼には想い人らしい人物がいることを知ってしまう。
「いいの」と幸せそうに笑う椿姫。
「でも……」
「見てみて。あんなに但馬守殿は楽しそうじゃない。私はお姿が見られるだけで十分」
交流会が終わった後、一人抜け出して椿姫の木の近くにやってきた下見。
そこには先客の藤井がいて、下見は姿を隠そうとするも見つかってしまう。
「時々夢に見るんだ」と、語りだす藤井。
彼の夢の中に、自分に愛を囁く着物の女性が出できて結婚を誓い合うものの、いつも自分が死なせてしまうという。
「何故だか本当のことだった気がしてね。おかしいよね、こんなこと言うなんて」すかさず否定する下見。
「夢の中の彼女を、僕は愛していた。ずっと愛していたんだ。君は優しいんだね。こんな嘘みたいな話に泣いてくれるなんて」
首を振りながら涙を流す下見の目には、藤井の胸に涙を流して抱き着く椿姫の姿があった。
藤井が立ち去った後、泣き崩れる椿に寄る下見。
「私は愛されていた」
「はい」
「愛されて、いたのだな……っ」
下見は、椿姫の背をさすり続けた。
ここ最近何やらこそこそとしている河合達に、再び疎外感を味わう下見。
久しく感じる孤独に、下見は体調を崩し保健室に行くことに。
目を覚ますと、心配そうに河合が覗き込んでいた。
「僕は、いつも一人なんだ……」
弱々しく心情を吐露する下見。
「一人って、怖いよな」
河合が語りだしたのは、彼が幼少期に味わった悲しみ。
下見は、自分だけがつらい思いをしているのだはないのだと気づく。
「俺はお前の事、友達だと思ってる。お前は違う?」という河合に、下見はこんなにも自分を大切にしてくれる友がいたことに涙を流す。
クラスに戻ると、一斉に鳴り響くクラッカー。
「お誕生日おめでとう、下見!」
みんながよそよそしくしていたのは、下見の誕生日を祝うためのサプライズを計画していたからなのだ。
ここにいたい。
そんな矢先に舞い込んでいたのは、父親が転勤するという知らせだった……。
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