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訥々と#1 フロリジナル


『フロリジナル』


💐

この曲、かなり異彩を放っている。

『Soranji』『私は最強』という、まさに最強な曲達と共に、Soranjiシングルに収録されたフロリジナル。

ミセスには珍しく、分かりやすい1対1の恋愛ソングになっている。
僕が1番好きな曲は「ProPose」だが、上記の点や特徴的なピアノが似通っている。
何が良いのか、どこが好きなのかは言葉にはできないが、どこか惹き付けられる曲。
(どちらも花💐の印象がある。香りは花を連想させるし、ProPoseはroose≒ローズ🥀※ミセスは曲名の小文字に意味を持たせる事が多い)

フロリジナルはフローラル×オリジナルの造語であり、言葉としては一般には通じないが、今や配信から約1年弱(2022.11.7配信)。ミセスが世間に知れ渡った今、この曲の認知度はどれくらいなのか気になる所である。

有機質と無機質

フロリジナルは香りのプロジェクトから生まれた楽曲だけに、爽やかな自然を想起させる。
さらにはこのプロジェクトの実験的な側面に合わせ、曲中にいくつかの本来楽曲には使われない音が織り交ぜられていることで、無機質で数学的なサウンドに仕上がっている。

公式YouTubeに上がっている「Documentary -- Episode 2 “Soranji”」
にて、ゴミ箱を叩いたり、ホチキスの音を鳴らしたり、セロテープを伸ばしてみたり、さらには香水を開ける音などが収録される様子が映っている。

実際に使われた道具たち
※画像内リンク付


曲の所々で普段聞かない音が「カチャカチャ」と流れたりするのは聴いていてとても面白い。1度では全ての音を聞き分けるのは難しくて、水滴の音とかかなり分からない。

それでも、全ての音がハーモニーを奏でているように聴き馴染みが良いのが不思議。

それに対し歌詞はとても内省的で、ミセスの根幹の1つである人間愛というテーマに帰着することは無く、1対1の感情を深く掘り下げた、
とても熱を帯びた有機質なものになっている。

慣れって怖いもので、既に聴いている人達は「はいはいフロリジナルね」となるだろうが、改めて歌詞を読み解いていくとやはりこの曲は異彩を放っている(2回目)。

ミセスを知っていてもフロリジナルを聴いたことが無い人は、是非今すぐ聴いてきて欲しい。勿論聴いたことある人も。(?)

貴方がどんな反応をするか、何を感じ取るか、また1つ世の中へミセスの音楽が伝わる、「壮大な景色を」想像するだけで気持ちが高ぶる。
半分限界ファン。


愛してる なんか、○○

香りと音楽のコラボプロジェクト、
「PARFA TUNE」において、セルフプロデュースの香水と共に生まれた本曲 フロリジナル。

楽曲制作にあたって、恋愛・友情・青春・別れ・原始的な人間愛と書きやすいテーマはいくつかあるが、「香り」となるとかなり難航しそうだ。
さらに本作においては「香階」という手法を用いているので、使える音でさえ限られる。

しかしさすが大森元貴。
相変わらずとんでもない曲を生み出す。

彼は「貴方」と離れた後の「コドク」と、諦めきれないままに前を向こうとするセンシティブな心持ちの中に「香り」を落とし込んだ。

この曲の歌詞にはどこか、自分に言い聞かせるような、諦めきれない決断のような、とてつもなく淋しい気持ちを心の奥底に抱えている雰囲気が漂っている。

正直難しすぎるので曲を100周して欲しい。


冒頭で呼びかけたので勿論今はフロリジナルを聴いているだろう(👀)が、既に貴方の耳には

「愛してる なんかもう要らないよ」

フロリジナル

の言葉が届いているだろう。
さて、曲の中で聴いた時と言葉として目にした時、かなり印象が違う。

曲中では緑香る森を駆け抜けるような清涼感あるメロディーによって昇華されているが、それが消えた途端あまりに悲しい言葉だけが残る。

愛してるなんか、もう要らない。

愛という想いに振り回されたのか、
強がりのような、嘆きのような、

そんな言葉を吐いても、本当は心の奥底では愛を欲しがっているのに。

実際、この直後には

「今だけただ抱きしめて欲しい」

と本音を零す。

ただそれは、その場を満たして欲しいから。そこに愛が無いことは、今はどうでも良く。

「完璧な思いはこの世に無いと 貴方を嗅ぐ」

100点の純粋な思いなど無いんだと、「貴方」に抱かれながら感じる。
この想いはまるで、

「今日もただ "独りで寂しい"と
君の前で思ってしまう」

They are

この歌詞を彷彿とさせる。
きっと「私」も似た気持ちなのだろうか。

募る寂しさ

「愛してる なんかもう要らない」

この言葉が曲が進むにつれて、さらに悲しく・諦めたものへと変化し、繰り返される。

・「愛してる?」なんてもう聞かないよ

・ 愛してる ならもう聞かないよ

2サビ/ラスサビ

「愛してる?」なんて、もう聞かない。

……悲しい想いを繰り返すくらいなら

愛してるなら もう、聞かないよ。

……「貴方」に余計な期待をして、
また傷つきたくないから

そんな風に聴こえてくる。

メロディーを抜くとトゲのようにここまで深く突き刺さる、こんな言葉たちに「私」の憂いが表れている。

先に進むにつれて「貴方」が居なくなったことを体感させる構成で、そんな中でも「私」は依然として残る「貴方」への想いと「コドク」を増幅させていくような気がしてならない。

1曲を通して「私」の考えは大きく変化することは無く、淋しさを募らせていくだけで、

「貴方」のそばに居られなくなり、
引き返す事も出来ずただ残る「コドク」感が
まっすぐ胸を刺してくる。


そう感じる曲。


🥲


願い

淋しさに焦点を合わせ過ぎると心苦しくなってしまうので、この曲が語る「私」の願いもみていく。
ここまでは悲観的に取れる部分が多かったが、強がったり前向きに歩もうとするところや、
「私」の気持ちが満ちるように感じられる部分もある。

僕らにとっても身近に感じられる歌詞が綴られており、ここに惹かれる人も多いだろう。

・広い世界だし私のこの悩みは
 ちっぽけだと信じてる

・大切な人に大切にされたい

・ずっとコドクでもいつの日か今までの全部
 報われると良いんだけど

・頭では分かってる寂しさの正体
 でも今日もまた信じてる

・目で見てみないと冒険しないと
 ワクワクが腐るから外へ出たい

共感できる部分がそれぞれあるのではないだろうか。さらに、これまでと違って希望的な願いのようにも受け取れる。

そして、この世の真理に気付いているような、
そうあって欲しいと願うような歌詞には
共感だけでなく救われる人も沢山いるはず。

・ひとりがこわいのはみんな一緒

・追われる側になれない僕らは
 欲しがりすぎてる


・壮大な景色を想像してる今日も
 消えちゃいたい夜も私の導火線

最後の歌詞では、未来に心躍らせることや、
夜に独りで思い詰めてしまうことも、
「いつか前を向き 光を放つ 私」の原動力へ繋がっているのではないかと考える。
また、1つ前の「目で見てみないと〜」と合わせることで、次の未来への期待とも取れる。


「嗅ぐ」

完璧な思いはこの世に無いと
貴方を嗅ぐ

触れはしないが、相手に近づきその存在を
確かめ、感じる行為。「嗅ぐ」。
抱きしめて欲しいけど、前述のような思いをしたくないから触れたくない。だから「嗅ぐ」。

曲中では幾度となく「嗅ぐ」という言葉が出てくるが、匂いは記憶と1番結びつきやすい感覚というのは有名なお話。

ゼンジン未到と

パルファチューンの香りを嗅いだ時に思い出されるのは、発売と同時期に開催された
Zepp Tour 2022,
ゼンジン未到とリライアンス ~復誦編~。

ゼンジン未到とリライアンス/CHEERS

熱狂的なロックに衝撃を受け、大好きな曲達の演奏に感動し、またSoranjiの究極的な表現を全身で浴び、まさに救われた。
とても書き切れない素晴らしいLIVE。

会場の雰囲気、目に焼き付けられた非常に熱を帯びた演奏に演出、耳に残るバンドサウンドと透き通る歌声が香りによって思い起こされ、嗅覚があらゆる記憶と繋がっていることを体感する。
間違いなく彼らは輝いていた。

今思えば北海道への初遠征LIVEでもあった。
極寒の地ではその寒さが、ミセスの冬曲の良さを際立たせる。
「私」、「hug」、「soup」、そして勿論「Soranji」も。
※ 正直寒い所で聴くと全て冬曲になってしまう

また、パルファチューンの発売直後ということもあり皆が同じ香水を纏い、会場は少しだけ華やかな香りに包まれていた。

かなり脱線したが、どれも大切な思い出のひとつであり、この「香り」はそこに更なる華を添えてくれた事は間違いないだろう。

僕にとっての「香り」は、間違いなく
良い思い出として遺っている。

遺る記憶

本編に戻って、
「嗅ぐ」を扱った歌詞の中でも、1番大好きなのがこの1節。

「愛してる?」 なんてもう聞かないよ
どうせ居なくなるなら触れないで
私は嗅ぐ ただ断片に。
思い出を美しくしていたいから空を嗅ぐ

2サビ

どうせ居なくなるなら触れないで

その心苦しさがひしひしと伝わり、刺さる。

「貴方」が離れてしまうのなら、
そもそも私の心に触れないで欲しかった。

本当はそんな訳がないのに。たとえ振り向かれなくとも、少しでも「貴方」に触れて居たかった。強がりと重い嘆きを孕む嘘。

思い出を美しくしていたいから空を嗅ぐ

「貴方」との思い出。それが「香り」に遺る。
その全てが大切な物のはずなのに、
思い出しては「コドク」を感じてしまう。
だから、断片だけでも美しいものにしたい。

だから、空を嗅ぐ。
虹を描く空、無限に広がる世界かもしれない。
でも、空を嗅いでいる。

ただ空は、空っぽとも読める。

淋しさ

また、大好きなProPoseにもとても似通った
歌詞がある。

ならばさ なんで
君はなんで
僕の心に触れたりしたの?

ProPose

まるで「私」の想いを包み隠さず告げているようなシンクロぶり。

理由が知りたい訳ではないし、
その疑問符は永遠に消えない。
ただ何よりも「淋しい」と叫んでいる。

説明するのは難しい。
ただ、
この息苦しい想いに心引き裂かれそうになる。

この想いをさらに強く感じられるのが、
大森公式Instagramにある弾き語りVer。


1本の音色により、一層溢れる淋しさ。

清涼感あるメロディーで「私」の心情が包み隠されず、何の装飾もないものへと変わる。

こちらが原曲であるべきだと感じるほどに、
痛いぐらいに「私」の想いが伝わってくる。

是非1度このバージョンを聴きながら自分の中で歌詞を反芻してほしい。

ただここで言っておきたいのが、必ずしも悲しいアレンジではないということ。

彼が僕達に寄り添ってくれるように。
あなたは1人じゃないよと語りかけてくれるようにも、感じることが出来る。

対極的な感情を抱くことが出来るのは、彼のアレンジ力もあるが、この曲自身のポテンシャルを表しているよう。

だからこそ、
この曲は異彩を放っている。(3回目)


おわり

主に歌詞について深く掘り下げた。
いや、大した考察とかしてないので再確認の方が正しいのかな。

本当に良い曲です。聴いてあげて下さい🎧

気付いたら本当に長くなった...読みづらかったかもしれないけど、ここまで読んでくれたなら本当にありがとうございます。
良ければスキ押していってください。


🙇‍♂️

とにかく、これを読んだ貴方がもっとこの曲を好きになってくれたら本望です。幸いです。

この曲について思うこと等あれば是非コメント書いてください。

僕はそれを栄養に生きてます。


💐




どうせ居なくなるなら触れないで

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