まな板の上の魚

見切り品だった鰯の濁った目がまな板からこちらを見つめてくる。食べ物のつもりでしかなかったそれらが、突如生き物だった成れの果てに見えてきた。とどめを差し直すように頭を落とし、どろりとした内臓を掻き出して処理する一連の工程は、まるで自分自身に「これは食べ物なんだ」と言い聞かせる儀式のようだった。

鰯はおいしい梅煮になった。明日食べる。

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