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クリックの話

音楽制作の便利帖 【第4回】

クリック=Click って音楽に携わる人間にとっては
もう当たり前の言葉になっているかと思います。
一応説明するとテンポを一定に保って演奏するための
ガイドになる信号音、もしくはDAWだとそれを出すシステムそのものをクリックとかクリックトラックとか呼んだりもします。
click は英語としても正しくてスタジオでも通用するけれど、普通の辞書にはそういう意味としては載ってないみたいですね。

ところで、ぼくが学生のころくらいはクリックという言い方ではなくてメトロノームって言ってたような。たぶん。
パフォーマーとかのソフトでもクリックじゃなくてメトロノームって言ってたように思います。英語版ではclickでしたが。もちろんmetronomeも正しい英語です。

日本のスタジオでは長らくクリックのことを「ドンカマ」と言ってました。まあ、今でも使うかな。さらにはキューボックスへのアサインの説明を聞くときとかに「カマは何番に返ってるの?」なんていう応用バージョンもあります(笑)。「カマ、ちょっと上げてくれない?」とか。たぶん、プロのスタジオの仕事を始めてから始めて知った言葉の一つだったかと思います。でもなんでドンカマって言うんですか?って聞いてもすでに答えられる人はいなかったような。まあ手当たり次第に聞くというのもなんだし、最初のうち数人に聞いてみた程度ですが。というわけでしばらくはなんだかわからずに使っていた言葉でしたが、仕事を始めて数年たってその正体を知ることになります。たぶん雑誌の記事で。なんとKORGの「ドンカマチック」という商品が語源なのでした。https://www.korg.co.jp/SoundMakeup/Museum/Doncamatic/
1963年発売。そうとう高価だったようです。僕がレコーディングディレクターを始めたのが1991年なので、そろそろ実物を使ったことのある人も減っていて、言葉だけが残っていたのかと。だから僕は「ドンカマチック」がどんな音だったか聞いたことはないわけです。ちなみにこのKORGのサイトによると「ドンカ+マチック」らしく「ドンカマ」という区切りではないと(笑)。

逆に音だけはよく知っているクリックがあります。
海外の録音で必ずといって使われる「プツっ プツっ」という電子音。いまだとDAWに搭載されていたり、ネット上で音をダウンロードすることもできたりします。昔は海外のエンジニアはこの音を自分で持っていてそれをProToolsに貼って使ってました。音源をもらったこともあります。この音はたぶん Urei 964 Digital Metronome という古い機材の音です。一度だけ実物を見たことがあります。LAのスタジオのすみに転がってました。こちらは「ドンカマ」とは逆の現象で、名前はあまり覚えられてないけど、音はみんな(特に海外では)知っているということ。

日本ではクリックにはカウベルみたいなカンカンした音が好まれて使われます。海外ではいまもUrei的な音が多いと思います。とくにオーケストラの録音では。なぜかというと、どうやらヘッドホンもれが少ない音だかららしいです。生楽器を演奏するときにクリックを大きくするとヘッドホンからもれたクリックの音まで録音されてしまうので、外にもれずらい音の方がいいと。とくに人数が多い弦の録音とかだとヘッドホンの数も多いわけで小さい音もれでもそれが合わさるとけっこうな音量になってしまいます。バンドやオケのように複数の人間が一度に演奏する場合は、本当はできるだけクリックは小さく、周りのアンサンブルを聴けたほうがいいのだろうけど、テンポが速くてフレーズがタイトだったりするとクリックが大きくなりがちなのかなあとは思います。例えば海外でもドラマーとかはカウベル的な音がいいようだし、
ネットでも best sound for a click track? 的なことを書いているサイトがあったりします。
ちなみにもちろん「ドンカマ」と言っても海外では通じません^^


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