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台湾行き

台湾に行ってきた。
理由は、東京が寒いから。あと暇だから。
何が見たいわけでも、何が食べたいわけでもなかったけど、行ったら何かする気が起きるかもしれないと思って、ほとんど何も準備せずに予約した。
旅行、と言うにはあまりにも期待感が無かった。だからこれは台湾旅行じゃなく、「台湾行き」。
朝食さえついていれば窓はなくてもいい、安くて清潔そうなホテルを予約して、パスポートと着替えとゲーム機を持った。
案外、目的がなくても飛行機には乗れるものだった。


空港から電車に乗る。悠遊カードというICカードが便利らしいので発行する。
多分僕と同じく旅行者だろう、大きな荷物を抱えた人たちが車内から少しずつ居なくなっていく。意外なことに電車の中は静かで、みんなスマホをいじっていて日本と変わらない。
違う点といえば、日本では電車の優先席は車両の連結部分にあり、1車両につき2ブロックあるが、台湾の桃園空港MRTは少なくとも、電車のドア付近の左右2席くらいが優先席だった。優先席を利用したい人を車両連結部分に集めて、それ以外のドア付近の流動性を確保している日本と、優先席を使いたい人がとにかく使える台湾、という感じか。


ホテルの最寄り駅から出ると、大通りに沿って北上する。車道が右側だ。
説明が難しいのだけど歩道は基本的に片側に2レーンあった。路面店のように店舗がストンと垂直に存在するのではなく、何軒も続く建物の軒下が全部つながっていて、そこを歩けるうえに、車道との間に別途歩道も存在する。東南アジアは台風や雨が多いからこその工夫かな…などと異国の建築に感心した雰囲気を醸し出したが、よくよく考えたら日本も台風や雨は多く、渋谷西武百貨店とか全然同じ感じだった。ただし台北は軒下に人間サイズの老廃物の塊が落ちてたりした。安心した。


何も調べずに来たものの、父から「夜市」と表記される屋台が集まるストリートで食事をするのが定番と叩き込まれていたので、それに倣いホテル近くの遼寧夜市へ行ってみる。
皆さんは、上野アメ横や池袋北口に中華系の飲食店や食材店があるのを見たことがあるだろうか。お世辞にも店構えは綺麗とは言い難いあの感じを。200~300mの道の両側に、あれよりもっと年季の入った飲食店がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。どう考えてもメニュー表にある料理には使わないであろう、何かしらの肉をひたすらさばいていたり、見たことのない形状の果実らしきものをドサッと陳列している屋台があって、どこから漂ってくるのか想像もしたくないが、時折食事中の皆さんごめんなさい的なにおいがする。
僕も別に几帳面だとか潔癖症というわけではないと思うんだけど、その中で必死にマシなお店を探した。お母さんと娘といった感じの二人が仕切っている店舗を見つけ、話しかけると娘さんが英語で対応してくれた。読めるけど読めないメニューの中からルーローハンを頼むと、「スープはどうする?」と聞かれた。せっかくなので頼んでみるとルーローハンの2倍の値段がしたが、ミートボールと香菜が入ったスープは以外にも甘い味付けで、ルーローハンより断然旨かった。


2日目はよく移動した。29℃。まず、ホテルの朝食を胃に流し込むと、NIJISANJI ENのエリーラ・ペンドラの3Dお披露目配信を観た。そのあと、故宮博物院へ行くためバス停に向かう。
実はホテルの道の向かいにちょうどバス停があり、そこから銘伝大学という私大の前のバス停へ行けるはずだったのだが、グーグルマップの想定する徒歩移動に間に合わず、乗り逃がす。すぐさま調べなおして今度は大通りを渡ったところから5分後に出るバスがあり、大股で移動する。
台北での移動は大体こんな感じで、街中いたるところにバス停があり、どこも何本もの路線バスが停車するため、予定のリカバリーが容易だった。

銘伝大学では10分ほどの乗り継ぎの待ち時間に外観を見ることができただけだったのだけど、高台にある正門に向かって階段が伸びており、毎日登校するときにこれ登るのか…と少し思った。バス停に戻って待っていたが、ちょうど予定時刻にきたバスが2台あり、適当に乗ったら違う方面へ向かってしまった。

このバスはどこへ向かうのだろう。グーグルマップを見る限りは、この道は山脈に続いている。終点まで行っても、大きい街につきそうにないのであれば、今このへんで降りたほうがいい。バス車内の電光掲示板には繫体字とローマ字の2種類の表記で行き先が表示されている中、なんちゃらPolice Stationというバス停で降りることにした。警察署があるのならば、人口がそこそこありそうだという推測だ。
幸いなことに全然街の体をなしていたので、時間もちょうどいいし昼食をとることにした。適当な中華料理屋に入り、牛肉炒飯をたのんで、テレビを見ながら食べた。僕が到着したちょうどその日、台北ではM4.9の地震があり、それにより倒壊した地域の救助活動を伝えるニュースだった。ファミマで悠遊カードにチャージをし、気を取り直して故宮博物院へ向かうバスに乗り、故宮博物院の一つ先のバス停で降りた。(降りるのに失敗した)


中華民国の故宮博物院には、国民党のリーダー蒋介石が持ち込んだ国宝が展示されていることで有名だが、そこへ向かう途中に「順益原住民博物館」を見つけた。中華民国の成立の歴史については知っているが、もともと住んでいた原住民については全く知らないなと思ったので入館してみた。
展示の中で面白かったのは、台湾原住民の一部族の踊りを体験するコーナー。デジタルサイネージにタッチして、何人でPlayするかを選ぶと、天井のプロジェクターから床に足跡の図柄が投影され、それに従って足を動かすと踊れるよ、という感じだ。これ、2分くらい同じ動きを繰り返す踊りになっているんだけど、終わった後に得点がひょうじされたうえで、画像ダウンロード用のQRコードが発行される。2分踊って得られるのが静止画1枚か、と思いきや、ゲーム開始時に撮影していた自分の顔写真に、原住民の民族衣装がコラージュされていた。踊っている自分の姿はそこには一切ない。踊る前の顔とコラ素材である。じゃあ踊らなくていいじゃんかよ。


一応そのあと故宮博物院へも行った。小6のときに家族で台湾に来た時に見たはずの翠玉白菜をもう一度見ようと思って。そしたら別の展示に出していて存在しなかった。ナンテコッタイ。
日本語の音声ガイドを借りたので収蔵品について説明してくれるんだけど、「清の時代に、暇を持て余した帝が集めた○○です」みたいな言い方をするから、どんなものなんだろうと思って見ると、頭おかしくなるくらい精緻な加工や装飾が施されていて、帝が暇だと職人が大変な思いをするんだなと思った。





台湾では人気のレジャーとして、エビ釣りというものがあるらしい。父のつてで現地の人がそう教えてくれた。釣り堀があり、時間単位で餌と竿を借りて、釣れただけ調理して食べることができるらしい。結構山あいに来たためか、英語でごり押しが通用しない。むこうも台湾華語でごり押してくる。こうなるともう言葉を発するよりジェスチャーのほうが伝わる。餌と竿を持って空いている席に座ったら、おじいさんが何やら言ってきた。わからないので聞き返すと、指で3を示して、苦笑いしてどこかへ去っていった。「ここは1時間で3匹しか釣れない席だぞ」的なことだったのか?
濁って水の底が見えないので、最初は本当にエビなんかいるのか?と思う。のんびり待って15分ほどで反応があったが、針がうまくかからず逃してしまった。居ることはわかったので同じ場所に垂らし、1匹ゲット。針を取るのが面倒で適当に引きちぎったら、エビは動かなくなった。また15分くらいで2匹目をゲットして、その後3回くらい反応があったけど、逃げられて終了。
おじいさんに負けた。



エビ洗い用の水道があり、そこにハサミと塩があるので、うまいこと整えてグリルで焼けということらしい。焼けるのを待つ間にリンゴサイダーを飲んだ。だんだん暗くなっていって、それに従って客は増えていった。釣り堀としてだけでなく、純粋に料理を提供するレストランでもあるようだった。焼けたエビは身がはじけんばかりに大きく膨らみ、ふわふわとした食感が楽しめた。
バスに揺られて街に戻り、夜市で「牡蠣のオムレツ」と日本語で書いてある店を見つけたので食べた。もう、ちょっと荒々しい店構えでも大丈夫になってきた。オイスターソースのかかったオムレツは美味しい。ちょっとジャリっとしたけど。これだけだと足りないので主食として、搾菜肉絲麺を食べた。細長めの牛肉とザーサイが乗った麺で、スープや麺がラーメンと違って薄味な分、ザーサイの塩気がちょうどよかった。



3日目、12℃、僕の台湾行きとしては最後の行動日なので、ホテルで配布していた観光マップから廸化街に行った。




漢方とか干物のお店が多く、それこそアメ横っぽいんだけど、その上台湾では1/15で既に旧正月祝いが始まっていたらしく、1kmないくらいの道がえぐすぎる人口密度になっていた。大宮氷川神社の冬のお祭り、大湯祭に匹敵する混み具合。


ゆっくりゆっくり進んでいたらまたしても昼になっていたので、屋台で6つ+1個おまけの100元のシュウマイを購入した。色とりどりで味もそれぞれ違ったんだけど、肉と海鮮の風味で美味しい、ということ以外何もわからなかった。
このシュウマイを買った屋台の並びに、テーブルと椅子がたくさん広げられていてみんなそこで食事をしている感じだったから、自由に使っていいんかな~と思って食べてたら、店員らしき女性に声を掛けられ、目と目で通じ合った。ここはイートインスペースじゃない。近くの飲食店のテーブルだ。シュウマイをしまい、近くの公園に移動して食べた。どこで食べても味は同じなら、変な交流ができた分プラスというものだ。


飛行機は4日目、16日の午前2時半出発なので、僕はできれば夜遅くまでどこかで遊び、0時付近に桃園空港に行きたかった。暇だった。かといってマッサージや温泉に興味もない。インターネットの助言を得て、僕は九份へ行くことにした。セントチヒロの神隠しで有名なところ、ですよね?
ググると台北の一つとなりの北門駅から、バス40分で着くみたいだ。台北の観光地はこんな感じで、結構バスに乗っちゃえば簡単に行けてしまう。そんでこの北門駅から九份までの965号線のバスがすごい。車内WiFiとコンセントが無料で使えて、観光地まで40分で着いて100元くらい。約500円。東京駅から横浜中華街までと考えたら結構安くない?

九份についたら雨。すごい雨。風に吹かれた雨が視認できるくらいの雨。
ずぶ濡れの状態でファミマに逃げ込んで、日本のを粗悪にした感じのビニール傘をゲット。適当に道路をどんどん登っていくと、九份老街というアーケードに入る。来ようと思ったことがないから、何が千と千尋っぽいのかがわからなかったんだけど、たぶん両親が豚になるシーンとかなのかな?それっぽいところはあった。



雨に濡れてて寒いから、目にとまったカフェで休憩。チョコレートラテとチョコワッフルにしたけど、どっちかチョコ以外にすればよかった。
九份といえば!というスポットを調べて向かったら、海も見えるし有名な建物も見れる茶坊で、寒かったのでと食べた焼きそばが超美味かった。日が暮れてきたころに写真を撮って出た。


飛行機の時間にはあまりにも早いんだけど、ここで自分の中で興味と集中力が切れたのを感じたから、空港へ向かった。


こうして起きた出来事を書き連ねてみると、出発前に思っていたよりも全然異国を楽しめていたと思う。一文字一文字の意味はわかるのに読み方がわからない文字、こちらの言葉がカタコトであること、助けてくれる人は誰もいないことと、異世界転生小説の序盤のようなシチュエーションなんだけど、スマホと中学生レベルの英語でどうにか意思疎通を図れた。そういう会話一つ一つの成功体験が、夜寝る前に思い出すほど楽しかった。
事前に全く調べない旅、昨年末から挑戦してみてるんだけど、交通網のおかげで屈指の充実感を得られた回でもあった。
結局トータル8万円くらいで済んだのかな?海外にしては安い気がする。絶妙にいいポジションだった。

またこうして軽率にどこかへ行こうという気になりました。

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