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「ら」あり言葉で逃げ切ろう

ノックの音がした。

ここ最近の企画会議は菓子持参だ。
ポッキー、じゃがりこ、ハッピーターンと思い思いの菓子を前にすると、発言も増え、柔軟なアイデアが生まれるような気がするからだ。

扉を見ると、制作部チーフの●●さんが顔をのぞかせていた。

「☓☓さん、いる?」

そのひと言は、全員の動きを一瞬にして変えた。
ポッキーをくわえた誰かは急いで残りを口中に押し込み、
ハッピーターンの袋を開けた誰かはこぼれた粉をノートで隠し、
こうやってダンスする企画はどうですかと腰を振っていた誰かはゆっくりと股を閉じた。


☓☓さん…それは誰もが恐れる強面プロデューサー。眉間のシワに10円玉がはさめるのでは、という噂がある。


●●さんが、もういちど尋ねた。

「☓☓さん、いる?」


しかし、さすが菓子の力は偉大だ。日々おもしろい企画を追い求めているアイデアマンたちはひるまず柔軟である。答えた。


「いらないです」

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