戦後を記録し続けた報道写真家。小手鞠るい「アップソング」の力強さに震える
新宿駅西口での反戦集会、あさま山荘事件、三菱重工爆破事件、御巣鷹山日航機墜落事故、ベルリンの壁崩壊、チェチェン戦争、9.11同時多発テロなど、戦後から21世紀にかけて起きた、これらすべての「現場」を記録した日本人女性がいた。
偶然居合わせた場合もあれば、自らの意思で現場へと足を運んだ場合もある。
そのどんな時も、彼女の手には一台のカメラがあった。
報道写真家の最低必要条件は、その場所に、そのタイミングで、いること。
どんなに優れた撮影技術を持っていても、その場にいなければ時代を記録することはできない。
小手鞠るい「アップルソング」は、そんな報道写真家・茉莉江の、戦後から2001年までを追った物語だけど、小説の語り部は別にいる。
語り部である女性は、なぜ茉莉江の過去をたどり、茉莉江の足跡を追うのか。
その理由は、残すところあと20ページという終わり近くでしかわからない。
日本と、世界の戦後史を振り返りながらも、茉莉江のすさまじい人生に導かれぐいぐいと読み進めます。
Netflixのリミテッドシリーズあたりでの映像化希望の傑作です。
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